活動紹介
2010年版「給与第一」バージョン0.12 取扱説明書
第0 著作権の表示と免責条項、利用基準
エクセルシート「給与第一」(以下「このソフト」等といいます)の著作権は京都第一事務所の弁護士渡辺輝人に帰属します。このソフトを利用される際は、以下の免責条項、利用基準に同意した上でお使い下さい。
(著作権者の表示)
(免責条項)
このソフトは、労働者の権利を擁護するため無償で頒布しますが、内容について、著作者は使用上のいかなる責任も負担致しかねます。使用される方は、各自の責任においてご使用下さい。
(利用基準)
- このソフトは、残業代等を請求するご本人、労働者を支援する労働組合においては大いに使って頂きたく存じます。
- 当面、実務家による事務処理のための本ソフトを使用は日本労働弁護団または自由法曹団に所属する弁護士に限定させていただきます。労働事件の成果は他の事案にも反映するため、「労働弁護士」としての自覚を持った方に使っていただきたいからです。
- 日本労働弁護団または自由法曹団に所属しない法律家・士業(弁護士、司法書士、行政書士、社会保険労務士)の方、残業代等を請求する当事者・労働組合以外の方が書面作成代理等を含む事務処理のために本ソフトを利用することは固くお断りいたします。個別事案によっては許可する場合もありますので、希望される方は使用したい事案の都度、京都第一法律事務所宛にご連絡を頂きますよう、お願いいたします。
- 日本労働弁護団または自由法曹団に所属しない法律家・士業の方、残業代等を請求するご本人と労働者を支援する労働組合以外の方がこのソフトを無断使用した場合は、損害金を請求することがあります。
- 1項、2項に基づき使用できる方についてはソフトの内容の改変をして頂いても構いませんが、改変の際には、改変点について京都第一法律事務所宛にご連絡を頂きますよう、お願いいたします。今後の利便性の向上のためにも、よろしくお願いいたします。
- 内容を改変したソフトの再頒布は固くお断りいたします。このソフトを改変したソフトが流通した場合は損害賠償を請求いたします。
- 「給与第一」末日締め版(Ver0.12)のダウンロード (自己解凍形式 217KB)
- 「給与第一」20日締め版(Ver0.12)のダウンロード (自己解凍形式 215KB)
給与第一の更新情報
- 2010年 2月 1日 Ver0.1を公開
- 2010年 4月20日 Ver0.11 を公開
- 2010年以降の金額が正しく計算されない不具合を修正しました。
- その他の表示を一部修正しました。
- 2010年 6月25日 Ver0.12 を公開
- セルの保護範囲を縮小し、書式等の変更ができるよう修正しました。
- (20日締め版)当月21日以降末日までの基礎時給額が正しく参照されない不具合を修正しました。
第1 基本的な考え方
1.開発意図
このソフトは、労働基準法(以下単に「法」といいます)に定められた労働者の権利である1日8時間超、週40時間超の超過勤務手当、深夜早朝勤務手当(以下まとめて「残業代等」とします)を計算して請求するためのものです。ネット上を検索すると使用者の立場から給与管理をするためのソフトは存在しますが、労働者の立場から未払残業代等を請求する立場に立ったものは少なく、特に週40時間超の残業代を計算するものはほとんどありません。このソフトは残業代等を正確に算出し、訴訟で請求する遅延損害金や付加金(制裁金)の計算を容易にし、かつ計算結果をそのまま訴訟資料として使えることを目的として開発しました。
2.2つの版の違い
このソフトは毎月の給与締め日の違いによって2バージョン作成されています。20日締め版、末日締め版です。職場によっては給与の締め日が他の日になるところもあると思います。その場合は別途開発する必要があるので、ご要望を頂ければと思います。
3.ソフト内容の概説
このソフトは「各月基礎時給計算書」「時間外・深夜早朝手当計算書」「未払賃金と遅延損害金計算書」「請求の趣旨文例」の4枚のエクセルシートからなっています。作業手順は以下の通りです。
-
2枚目のシートである「各月基礎時給計算書」に各月の給与額等を入力します。具体的な入力方法は第2の1を参照して下さい。
すると、勤務時間1時間当たりの給与額(労働基準法37条1項の「通常の労働時間又は労働日の賃金の計算額」。以下「基礎時給」とします)が算出されます。計算結果は自動的に「時間外・深夜早朝手当計算書」に反映されます。 -
3枚目のシートである「時間外・深夜早朝手当計算書」に各日の出勤時刻、退勤時刻、休憩時間を入力します。具体的な入力方法は第2の2を参照して下さい。
すると、各日の労働時間の内、1日8時間超分(法32条2項、37条1項)、週40時間超分(法32条1項、37条1項。週の起点は日曜日に固定しています。)、深夜・早朝の勤務分(法37条3項)に該当する時間が自動的に算出されます。これらの時間と1の基礎時給と1.25(深夜・早朝勤務については0.25)を掛けることで各日の未払賃金額が自動的に算出されます。さらに月ごとの未払賃金の合計額が自動的に算出され、この結果が「未払賃金と遅延損害金計算書」に反映されます。 -
4枚目のシートである「未払賃金と遅延損害金計算書」に各月の給与支給日、既払金(残業代の一部が支払われている場合等にその額)、遅延損害金計算基準日(すでに退職している場合は最後の給与支給日。在職中なら請求日ないし提訴日)を入力します。具体的な入力方法は第2の3を参照して下さい。
すると、未払賃金について遅延損害金計算基準日までに発生する遅延利息を年利5%(1年366日計算)で算出します(※1)。遅延損害金計算基準日以降の遅延損害金は在職中と退職以後で異なる上(※2)、訴訟上は「~%の利息を支払え」と記載すれば足りるのでこのソフトでは計算しません。※1 被告が会社の場合は年利6%になりますが個人企業の場合にも対応できるようにしました。遅延損害金については閏年だけ調整する機能が複雑なためすべて閏年(若干、請求する側が損する仕組み)という前提で算出しています。 ※2 すでに退職している場合、賃金の支払の確保等に関する法律6条1項により、少なくとも最終給与支給日以降(厳密に言うと退職日前に支給日が到来している分は退職日以降ですが退職日以降に給与支払日が来る方もいるので一律に計算できるようにしました)については年利14.6%の遅延損害金を請求できます。 -
以上の作業をすることで、4枚目のシートである「請求の趣旨文例」に、
未払賃金額
遅延損害金
付加金額
の3つの金額が、退職した場合と退職していない場合にあわせて、訴状の「請求の趣旨」欄に入力する形で、記載されます。完成させた各シートはプリントアウトしてそのまま訴訟資料として使えるようにしてあります。
4.今後の課題
気付いた範囲での課題は以下の通りです。
- 時間表記について勤務中に日付が変わった場合に「25:00」等とそのまま積算していくことの是非。
- 給与計算の締め日の違いをソフト的に認識せず、締め日ごとにシートを作る必要があること。
- 今のところ、1日の間に始業時刻が2回来るような事例(例えば0:00から17:00まで働き、一度帰宅して、再度、23:00から働き始めるような場合)には対応できていないこと。
- 遅延損害金の計算について閏年を考慮した計算式の導入。
- 法定休日の特定。休日出勤になると3割5分増し賃金ですが、週8時間、40時間超の2割5分増は適用されないので、それを含めた解決法。
- 使用者が会社である場合の遅延損害金を年6分に変更するためのシステム。
- 他のよくある計算シートと異なり、請求する各日を特定したシートになっています。これは週40時間超の手当の計算をするためなのですが、この形式だと、毎年シートに手を加えて付け加えなければならない点。
- 深夜早朝勤務手当について0:00~5:00、22:00~29:00(=翌日の5:00)を深夜早朝勤務として認識するが、24時間勤務で終業時刻が44:00(翌日22:00)以降になるような事例には対応していないこと。
第2 具体的な入力方法
1.「各月基礎時給計算書」による「基礎時給」(割増計算の基礎になる賃金の時間単価)の算出
(1)始めに
まず「各月基礎時給計算書」を入力します。原理的には「基礎時給」=月の給与額(分子)÷月所定労働時間(分母)です。 月給制の方は(2)を、時給制の方は(3)を参照して下さい。
(2)月給制の場合
ア 所定労働時間の入力
- (ア)所定労働時間が分かる場合
所定労働時間は基礎時給算出の分母となります。自分の職場の所定労働時間が分かる場合は、D列「事業所所定労働時間<時間>」の欄に入力して下さい。所定労働時間は「(その年の勤務日数×8(時間)-時短出勤日がある場合は短くなる時間)÷12(ヶ月)」で出る場合が多いと思います。 - (イ)所定労働時間が分からない場合
自分の職場の所定労働時間が分からなければ、空欄のままでも計算できます。その場合、月所定労働時間は年平均でならした月173.75時間(173.75=40(時間/週)÷7(日)×365(日)÷12(ヶ月)。閏年は174.25時間。)が適用されます。 - (ウ)所定労働時間が173.75時間を越える場合
法律上はあり得ないことですが、例外事例でもないのに事業所の月所定労働時間が173.75時間より多くなる場合もあります。そのような数字をD列に入力した場合は、自動的に173.75時間(閏年は174.25時間)が適用される仕組みになっています。
↓
イ 給与額の入力
- (ア)原則
次に時間単価算出の分子となる給与額を算出します。F~I列の各月に基本給、諸手当等を入力して下さい。列が足りない場合は一つの列にいくつかの手当の額を合算したものを入力して構いません。 - (イ)入力しない手当(除外賃金)
ただし、家族手当、通勤手当、別居手当、子女教育手当、住宅手当、臨時に支払われた賃金、一箇月を超える期間ごとに支払われる賃金(施行規則21条)については入力しないでください(※)。
使用者が残業代の先払いとして定額の手当を支払っている場合があります。「時間外勤務手当」が毎月固定額の場合、「営業手当」が時間外手当である旨が就業規則に明示されている場合等です。これも入力しません。
ここで入力しなかった手当は逆に3(1)で説明する既払額として残業代等の請求から控除されることになるので、注意が必要です。使用者の言い分を鵜呑みにせず、本当に入力しないのが妥当なのかよく検討してください。
| ※ | さらに詳細には「家族手当」と称していても家族の有無や数に関係なく支給されている場合や住宅手当といいつつローンの額や家賃額に関わりなく定額を支給している場合は除外賃金になりません。この場合は入力してください。 |
|---|
↓
ウ 完成
上記各作業をすると、各月の基礎時給が算出され、かつ、次に説明する「時間外・深夜早朝勤務手当計算書」に反映されます。
(3)時給制の場合
K列「基礎時給」の欄に月々の時給額を入力して下さい。時給額が月の途中で変わっている場合は「時間外・深夜早朝手当計算書」のN列に直接時給額を入力して下さい。

2.「時間外深夜早朝勤務手当計算書」による手当の計算
(1)具体的な入力方法
ア 計算と時間入力のルール
- 1週間の始まりは日曜日としました。労働省の通達に基づきます。
- 時間については24時間法を採りつつ、終業時刻が24時を越えるときは25時、26時とそのまま累積していくようにしました。
- 分については1分単位で計算するようにしました。
- 時間は「5:25」、「24:37」、「29:46」等と入力してください。
- 労働時間については始業する時刻が属する日の労働時間と考えました。例えば、4月1日の「23:30」から4月2日の「29:00(5:00)」まで働いた場合はすべてが4月1日の労働時間として認識されます。
- 今のところ、1日の間に始業時刻が2回来るような事例(例えば0:00から17:00まで働き、一度帰宅して、再度、23:00から働き始めるような場合)には対応できていません。今後の研究課題です。
イ このソフトが計算の対象としないもの
一方、休日出勤の割増手当の計算には今のところ対応していません。理由としては、法定休日(月4日)の自動的な特定がソフト上困難なこと、法定休日の出勤は割と少ないと思われること等があります。とりあえず、休日出勤がある場合の割増賃金は手動で計算すれば足りると考えました。休日出勤手当を計算したい場合は、U列に割増賃金を直接入力する等して調整してください。
ウ 具体的な入力方法
「各月基礎時給計算書」を完成させてから「時間外・深夜早朝勤務手当計算書」を見ると、N列「基礎時給」に当該月の基礎時給がすでに入力された状態になっています。
まず、各日のE列「出勤時刻」に出勤した時刻を入力します。「8:55」「22:00」の例で半角で入力してください。
次にF列「退勤時刻」に退勤した時刻を入力します。
さらにG列「休憩時間(5:00~22:00)」に朝5時から夜22時までの間にとった休憩の時間(「時刻」ではなく幅を持った「時間」です。)を入力してください。出退勤の時刻とは考え方が違うので注意が必要です。
最後にH列「休憩時間(0:00~5:00 or 22:00~29:00)」に朝0時から5時まで、夜22時から29時までの間にとった休憩時間(時刻ではない)を入力してください。
この作業が一番骨の折れる作業だと思いますが、上記が終われば、各月において本来支払われるべき残業代等がすべて自動的に計算されます。

(2)割増の対象となる労働時間の算出に関する考え方
このソフトの理屈の部分は第3で詳しく述べます。結果だけ得たい場合は飛ばして頂いて結構です。
3.「未払賃金と遅延損害金計算書」による未払残業代等、遅延損害金、付加金の算出
(1)C列「既払金」について
第2の1イ(イ)で説明した先払いの残業代等がある場合は各月について入力してください。この金額は既払額として残業代等の請求から控除されることになるので、注意が必要です。会社の言い分を鵜呑みにせず、控除するのが妥当なのかよく検討してください。
入力は例えば既払金が2万5400円ある場合は「25400」と半角で入力してください。
(2)E列「遅延損害金起算日」について
各月の給与支給日を入力してください。通常、支給日が日曜日等の場合は、その前に支払われることになっている場合が多いと思いますが、それを調べるのが面倒な場合は「2010年1月15日」「2010年2月15日」というように本来の支給日を一律に入力して結構です。
入力は例えば2010年1月15日の場合は「2010/1/15」と西暦で数字は半角にして入力してください。
(3)F列「遅延訴外金計算基準日」について
すでに退職されている方は最後の給与支給日を入力してください。まだ在職されている方は提訴日等、区切りとなる日を適当に選んで入力してください。遅延損害金は各月の給与支給日から基準日(例えば提訴日)まで366日計算の年利5%で計算します。366日にしているのは通常年よりも閏年の方が1日あたりの利息が僅かに少ないので、閏年に利息を過分に計算しないためです。裁判所は少なく請求する分には問題にしませんが、過剰請求すると1円単位でも訂正を求めてくるので、内側に引くことにしました。閏年だけ利率を変える機能を誰か開発して頂けると幸いです。
具体的な入力例は(2)と同様です。
また、労働者が退職している場合、使用者は少なくとも最後の給与支給日以降については未払賃金全額について年利14.6%の遅延損害金を負担する義務があります。これについては、このソフトでは計算しません。「請求の趣旨文例」に文章として表記されるだけです。訴訟を提起するのであればこれで十分です。具体的な金額が必要であれば、未払賃金額×未払日数÷365(閏年は366)×14.6%の式で計算してください。
| 賃金の支払の確保等に関する法律第6条1項 事業主は、その事業を退職した労働者に係る賃金(退職手当を除く。以下この条において同じ。)の全部又は一部をその退職の日(退職の日後に支払期日が到来する賃金にあつては、当該支払期日。以下この条において同じ。)までに支払わなかつた場合には、当該労働者に対し、当該退職の日の翌日からその支払をする日までの期間について、その日数に応じ、当該退職の日の経過後まだ支払われていない賃金の額に年十四・六パーセントを超えない範囲内で政令で定める率を乗じて得た金額を遅延利息として支払わなければならない。 |

(4)付加金について
訴訟を提起する場合に賃金不払いの制裁金として請求できる付加金(法114条)については、時効がなく、2年間の出訴期間があります。請求できる範囲は提訴日から2年以内に支払日がある未払賃金のみです。事例により異なるため自動計算が不可能です。訴訟提起日から遡って2年以内に支払日がある未払賃金額を自分で足し算して計算して下さい。
第3 割増の対象となる労働時間の算出に関する考え方
このソフトは以下の時間を特定して算出します。
| ア |
1日8時間を超えた労働時間を算出します(8時間超分)。 計算式は 1日の労働時間-8時間(>0のときのみ) これを図示したものが図1です。桃色の時間のみを算出します。 ![]() <図1:8時間超勤務時間の算出>
|
|---|---|
| イ |
週(日曜日起点)の合計労働時間から1日8時間超分を除いたもののうち40時間を超えた労働時間を算出します(週40時間超分)。 計算式は 週累積労働時間-40時間-8時間超労働時間(>0のときのみ) これを図示したものが図2です。青色の時間のみを算出します。 ![]() <図2:40時間超勤務時間の算出>
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| ウ | ア、イのそれぞれに時間単価と1.25(割増率)を掛けて支払われるべき手当を算出します。 |
| エ | また、22時~29時、0時~5時(その日の0時以降に始まる労働の場合)、24時~29時(前日から続く労働の場合)の間の労働時間を算出します(深夜早朝勤務分)。 |
| オ | エに時間単価と0.25(割増率)を掛けて支払われるべき手当を算出します。 |









