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ヘイトスピーチは人種差別と初判断! ~京都朝鮮学校差別的街宣事件~

ヘイトスピーチは人種差別と初判断! ~京都朝鮮学校差別的街宣事件~

谷 文彰2013年10月24日
弁護士 谷 文彰

1 日本初の画期的判決を下した京都地裁

2013年10月7日、京都地方裁判所は、ヘイトスピーチに対して日本で初めて違法性と人種差別性を認定し、高額の損害賠償と学校周辺での街宣等の禁止を命ずる判決を下しました。

ヘイトスピーチを抑制し、人種差別を根絶し、何よりも子どもたちが安心して学ぶことのできる環境を護っていくために、今回の判決は大きな意義を有しています。

2 ヘイトスピーチによって深く傷つけられた子どもたち

「ヘイトスピーチ」は、1980年代にアメリカで使われるようになった比較的新しい言葉で、人種・民族・性などの属性を理由として、同属性を有するマイノリティもしくは個人に対し、差別・憎悪・排除・暴力を扇動し、または侮辱する表現行為を指します。近年、日本でもこのヘイトスピーチが大きな社会問題となっていますが、そのきっかけとなったのが、今回の京都朝鮮学校事件です(「在日コリアンに対する差別を許さない~京都朝鮮学校に対する右翼団体の違法行為に毅然とした対応を~」も御覧ください)。

2009年12月4日、子どもらの在学中に「在日特権を許さない市民の会」らが京都朝鮮第一初級学校(当時)に押しかけ、「スパイの子ども」「朝鮮人は人ではない」などと1時間にわたって拡声器を用いるなどして大音量で差別的街宣を行いました。2010年1月と同年3月に同様の行為が繰り返され、各行為は彼ら自身の手によって撮影され、インターネット上にアップロードされ、現在も新たな被害を生み出し続けています。

今回の事件の最大の特徴は、実際に授業が行われており子どもたちが学んでいる平日の学校で行われたという点です。子どもらは極度の恐怖から平静を失い、泣き出し、人格を深く傷つけられ、夜泣きや夜尿をするようになり、あるいは1人で登校することができなくなり、さらには朝鮮学校に通うことを嫌がる子も出ました。幼少期に大人によって刻みつけられた筆舌に尽くし難い心の傷は、今後子どもたちをどれだけ苛み続けるのでしょうか。また、影響は教員や学校自体にも及び、退職を余儀なくされる教員や学校への志望者の減少、地域との関係の悪化など様々なマイナスの影響が発生しています。子どもたちや学校関係者は、単に「ヘイトスピーチ」の一言では表現できないほどの深刻な被害を受けているのです。

3 京都地裁判決の概要

こうした朝鮮学校へのヘイトスピーチに対し、京都地裁判決は、在特会らの言動は業務妨害かつ名誉棄損であると同時に「在日朝鮮人に対する差別意識を世間に訴える意図のもと、在日朝鮮人に対する差別的発言を織り交ぜてされたものであり…全体として人種差別撤廃条約1条1項所定の人種差別に該当するものというほかない」と判示し、表現行為であり許容される旨の在特会らの主張については、そのような言動が「『専ら公益を図る』目的でされたものとは到底認めることはできない」として一蹴しました。

そして、「わが国の裁判所に対し、人種差別撤廃条約2条1項及び6条から、同条約の定めに適合する法の解釈適用が義務付けられる結果、裁判所が行う無形損害の金銭評価についても高額なものとならざるを得ない」として高額の損害賠償を認め、さらには今後も「同様の業務の妨害及び名誉棄損がされる具体的なおそれが認められる」として、大部分の者に対して朝鮮学校周辺での街宣行為等の禁止を命じたのです。

4 今後に向けて

今回の判決は、全てのマスコミによって当然の判断と受け止められ、社説等も含め、常識的な結論であると一様に報じました。学校関係者も「画期的な判決」「涙が出るほど嬉しい」「在日コリアンが日本で学び、生きられるということをはっきりと知らしめてくれた」などと述べてくれています。私としては、今回の判決を機に、深く傷つけられた子どもたちの心が少しでも癒されることを願うばかりです。

しかし、在特会側は京都地裁の判決を不服とし、大阪高裁に控訴を行いました。今後は舞台を控訴審に移し、京都地裁判決の維持と、場合によってはさらなる前進を獲得するための闘いが始まります。ヘイトスピーチを日本社会から根絶し、子どもたちが安心して学ぶことのできる環境を護るため、当事務所も全力を尽くしたいと思います。

最後になりましたが、みなさまのこれまでのご支援・ご協力に感謝申し上げるとともに、より一層のご支援・ご協力を心よりお願いして、報告とさせていただきます。