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労災認定(7級相当)勝訴判決/複数の傷病を順次発症した事案

労災認定(7級相当)勝訴判決!!/左足骨折、静脈血栓塞栓症、頚椎化膿性脊椎炎、胸椎化膿性脊椎炎など複数の傷病を順次発症した事案

2016年6月2日
弁護士 寺本 憲治

第1 事案の概要

60代男性のAさんは、京都府内でスーパーを営んでいました。なお、Aさんは、労働者ではなく中小事業主ですが、労災保険への特別加入が認められていました。

平成19年頃、Aさんは店舗内にある冷蔵庫から魚と氷の入った箱を運び出すために箱を両手で抱えて歩き出そうとした際、勾配のある板面の通路上で左足を滑らせて転倒し、①左足関節外果骨折の傷害を負いました(以下、「本件事故」といいます)。

B病院に入院し、治療(手術やギプス固定)を受けましたが、これによって②左下肢深部静脈血栓塞栓症に羅患することとなってしまいました。さらにはその治療の過程で血液中に細菌が侵入したことによって③頚椎化膿性脊椎炎を発症し、最終的には④胸椎化膿性脊椎炎も発症しました。

平成23年頃、Aさんは、京都南労働基準監督署長に対し、障害補償給付の支給を請求したところ、同監督署長は、Aさんには、脊柱(頚椎)の運動障害が認められるとして、障害等級を8級と認定し、これを前提とする障害補償一時金を支給する旨の処分をしました。

Aさんとしては、自分の体に残る全身の痛みやこれに伴って働けない状況からして、少なくとも7級以上に該当するというお気持ちがあり、審査請求や再審査請求にて争いましたが、棄却されてしまいました。

Aさんのお気持ちを踏まえて、何とか7級以上を勝ち取りたいとの思いで、私が代理人となり、平成25年に本件訴訟を提起しました。

上記のとおり①②③④と医学的にかなり複雑な経過をたどっていたため、カルテ等の記録も膨大となっていて審理に長期間を要しましたが、平成28年4月28日に京都地裁にて勝訴判決を勝ち取り、少なくとも7級相当である旨の判決言い渡しがありました。その後、国も控訴することなく判決確定に至りました。

なお、補足すると、8級以下だと一時金の支給(一度支払われたらそれで終了)に留まりますが、7級以上になると毎年一定額の年金の支払いを受けることができます。この点からも、8級に留まるか7級以上を勝ち取れるかは、依頼者の方の今後の生活に大きな影響を与えることになります。

第2 本件訴訟の争点(主に争点2つ)と判決内容

1 Aさんの本件事故による胸椎化膿性脊椎炎の発症の有無

国は、本件の証拠関係に照らすと、Aさんは、本件事故により④胸椎化膿性脊椎炎に羅患したとは認められないと主張し、④胸椎化膿性脊椎炎の発症そのもの及び本件事故との因果関係を争ってきました。国は、この主張を裏付けるため、裁判に医師の意見書を複数提出してきました。

これに対抗すべく、私は、現在Aさんが通院しているC病院のD医師と何度も面談し、本件事故によって④胸椎化膿性脊椎炎を発症した旨の意見書の作成をお願いし、裁判所に提出しました。

全く異なる医師意見書が出揃ったことから、裁判官としても判断がつきかねたようで、裁判官は医師の証人尋問を行いたい旨を述べてきました。

私は、再度、D医師にお願いし、C病院内にてD医師の所在尋問(出張尋問)が行われることとなりました。通常、所在尋問(出張尋問)では左陪席と呼ばれる若手の裁判官のみが出張して来ることが多いですが、今回は、裁判長と右陪席(中堅の裁判官)が、直接、医師の話を聞いてみたいということで、C病院に来ていました。

このD医師の証言を得られたことがポイントとなり、最終的に裁判官は、Aさんが本件事故によって④胸椎化膿性脊椎炎を発症したことを判決にて認定しました。

2 Aさんに残存する障害は障害等級8級を超えるものであると認められるか

この点については、裁判官は、Aさんの体の痛みは、胸椎化膿性脊椎炎に起因するものであって、 少なくとも「通常の労務に服することはできるが、時には強度の疼痛のため、ある程度差し支えがあるもの」に該当することは明らかであるから、「局部にがん固な神経症状を残すもの」(障害等級第12級の12)に該当するものと認めるのが相当であると認定しました。

Aさんが本件事故により頚椎の運動障害(障害等級第8級の2)に係る後遺障害を負ったことと合わせて、併合により、重い方の身体障害の該当する障害等級を1級繰り上げて、本件事故によるAさんの身体障害に係る障害等級7級であると認定すべきと判決にて述べました。

第3 まとめ

上述のとおり、本件事案は、①左足関節外果骨折、②左下肢深部静脈血栓塞栓症、③頚椎化膿性脊椎炎、④胸椎化膿性脊椎炎、と複数の傷病を発症し、治療も複数の病院で長期間にわたったもので、カルテ等の資料が膨大にありました。この膨大な資料に全て目をとおし、勝つためのポイントを見つけ出すのに多大な時間を要しましたが、どんなに複雑な事案でも一つずつ紐解いて整理していけば必ず勝てるという気持ちで戦い続けました。

また、Aさんの地元の市会議員さんが、痛みに苦しんでいるAさんに付き添って打合せに参加する等して協力してくれていました。

この判決は、依頼者の方のみならず、市会議員の方や、担当のお医者さんにも多大なご協力を頂き、一丸となって勝ち取った勝利です。人とのつながりの重要性を感じ、協力して頂ける有り難さを改めて実感できる事件でした。

勝訴判決を獲得しAさんやご家族に喜んで頂き、本当に嬉しかったです。今後も依頼者の方に喜んで頂けるよう、ここから更に研鑽を積み重ね、困っている人々のため全力を尽くして「勝てる」弁護士として成長し続けたいと強く思います。

以上