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再び、カルテのないC型肝炎訴訟にて勝利的和解!!

再び、カルテのないC型肝炎訴訟にて勝利的和解!!

2017年11月6日
弁護士 寺本 憲治

第1 はじめに

2017年(平成29年)11月6日(月)、カルテのないC型肝炎国家賠償請求訴訟について、国と和解が成立しました。同訴訟にて和解が成立したということは、国が原告の主張を全て認めたということなので、全面的な勝利といえます。

第2 本件事案について

2015(平成27)年4月15日、京都地方裁判所に、京都市在住の男性を原告としてC型肝炎国家賠償請求訴訟を提訴しました。

男性は、①1983年(昭和58年)頃にS状結腸癌の切除手術及び治療のため、②1985年(昭和60年)頃に転移癌が見つかった肝右葉切除手術及び治療のため、③1987年(昭和62年)頃に転移癌が見つかった右肺切除手術及び治療のため、3度にわたり京都市立病院に入院しました。

その後、1995年(平成7年)に慢性C型肝炎と診断され、その後も症状が進行し、肝細胞癌を患ってしまったのです。

本件裁判においては、男性が同手術時に特定フィブリノゲン製剤を投与されたかどうかが主な争点となりました。

この点、同手術が行われたのが約30年前のことで、病院に照会をかけて問い合わせたところカルテは残存していませんでした。ただ、手術記録が残っていました。その手術記録を翻訳したところ、特定フィブリノゲン製剤投与についての記載はありませんでしたが、手術記録に記載されていた医師を探し出して、手紙を送って協力を求めました。所在が判明した複数の医師に手紙を送り、結果としては、3人の医師と面談(それぞれ滋賀県、宇治市、京都市の病院に訪問して面談)することができました。

そのうちの一人の医師(③の手術に直接関わった医師)が特に明確に話をきかせてくれました。繰り返し同医師とやり取りをして、当時のことを思い出して貰い、証人尋問にも協力して頂きました。

同医師は、「本件手術③の昭和62年4月の原告の手術があった時期は、空気漏れに対して、ほぼ全例にフィブリン糊(*フィブリノゲン製剤等を配合して糊状にしたもの)を使っていた一種の流行期であり、原告に対しても使っていると思う」「肺癌・肺嚢胞の肺切除面の止血と空気漏れ防止は、フィブリン糊がよく使用されていた場面にあたる」と証言しました。

また、②の手術に関しても、手術記録を精査したうえで、「本件手術②肝右葉切除手術と同じ種類の手術に関わった経験がある」「肝臓癌等の肝切除面の止血は、フィブリン糊がよく使用されていた場面にあたる」「本件手術②肝右葉切除手術の際にフィブリン糊を併用した可能性は非常に高い」旨も証言しました。

この証言が決め手となり、裁判所から、「本件手術②において原告にフィブリノゲン製剤が使用された事実を認めるのが相当である。本件手術③においてもフィブリノゲン製剤が使用されたと、一定程度の蓋然性は認められる」との所見が示されました。

これにより、国は原告の主張を認め、和解が成立する運びとなりました。なお、本件和解によって給付される金額は合計4200万円となります。

第3 救済制度と実際の問題及び被害者救済に向けて

2008年(平成20年)1月16日にC型肝炎救済特別措置法が施行されました。これにより、C型肝炎に感染されている方は、一定の条件を満たした場合に、国から一定の給付金を得ることができるという制度が設けられました。給付金の支給を受けるためには、まず、国を被告として、訴訟を提起することが必要になります。

裁判手続の中で、①出産や手術での大量出血などの際に、「特定フィブリノゲン製剤」や「特定血液凝固第Ⅸ因子製剤」といった製剤が投与された事実、②製剤投与と感染との因果関係、③C型肝炎の症状、の3つについて判断がなされます。これが認められると、病状にあわせて一定の給付金が支給されることになります。

ただ、実際には、製剤が投与されたと思われる時期が何十年も昔のことで、病院のカルテ等の客観的資料が既に廃棄されてしまっている事案が多く見られます。こういった事案では、製剤が投与されたという事実の立証のために、様々な工夫と努力が必要となります。やむをえず訴訟提起を断念せざるをえない方々も数多くいらっしゃるようです。

本件も同様の事案でありますが、被害者本人のため、また、今後同じ被害に苦しむ人たちのためにも、被害救済を求めて尽力し続けた結果、勝利的和解という解決を得ることができました。今後も被害救済のため、全力を尽くしていく所存です。

以上