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「その道に入らんと思う心こそ我が身ながらの師匠なりけり」

「その道に入らんと思う心こそ我が身ながらの師匠なりけり」

(利休百首より)
糸瀬 美保弁護士 糸瀬 美保

子どもの頃に少し習っていたお茶(茶道―裏千家)のお稽古に再び通うようになって3年と少しになります。弁護士としても駆け出しなら、茶道も本当に駆け出しです。茶道とは、・・・なんて語れませんから、以下、茶道ってどんなん?という程度にお読み下さい。

利休によれば、「茶道」の精神は、「茶は服のよきように点て、炭は湯の沸くように置き、花は野にあるように、さて、夏は涼しく冬は暖かに、刻限は早めに、降らずとも傘の用意、相客に心せよ」にあります。

ですから、お茶室の中では、自然体であることや季節感がとても大切にされています。例えば、夏のお茶室には、お客様に五官で涼しさを感じていただけるような演出がされています。まず、お茶室に入って一番に拝見する床には、滝のように流れ落ちる「竹」一文字の掛け軸や花入れに生けられたお茶花の緑が。ちなみに夏のお茶花は、あやめやかきつばた、水引草、笹ゆり、夕顔などです。お席についてお客様に出されるお菓子も、冷たくした菓子器に葛饅頭や青梅などの冷たいお菓子や稚児餅などの季節のお菓子が盛られていたりします。茶道では一月ごとに出されるお菓子が決まっていて、今月はどんなお菓子が食べられるのかもお茶の楽しみの一つだったりします。私が司法修習生だった頃、京都ならではの修習の一つに裏千家今日庵の見学がありました。お家元で出されるお菓子ですから、特別なものをいただけるのではと楽しみしていたところ、出されたお菓子は、「おはぎ」。ちょうど秋分の頃でしたから確かに、だけど・・・・。

気を取り直して、肝心なお茶の話に戻ります。裏千家の夏のお点前に、「葉蓋」というお点前があります。水指(みずさし・釜の湯をおぎなったり、茶筅や茶碗をすすぐ水を入れるもの)の上に、梶の葉や桐、蓮、ずいき、蕗などの葉を置いて蓋代わりにするのです。葉の上にわざと露をため、蓋を取った後は、くるくると畳んで、建水(けんすい・茶筅や茶碗をすすいだお湯や水を捨てる器のようなもの)に捨てます。その時の葉の香りや建水の中に落とす時の水音に涼しさを感じていただくというわけです。お茶碗も、夏茶碗といって、普通のお茶碗よりも口の広い底の浅い平茶碗を使うことがあります。表面積を広くすることで、お抹茶の温度を下げるのです。

お茶を立てる こうして、お客様には、目や耳や舌で少しでも涼しく感じていただけるよう努力するのですが、お茶を点てる方は汗だくだったりします、今年の夏は特に。浴衣や夏の着物(絽や紗)を着ているとはいえ、お湯が沸いている釜の前に小1時間も座っているのですから。

などどいっているうちに秋分も過ぎて、気持ちよくお茶を楽しむことが出来る季節になりました。ぜひお月見のお茶会などに出掛けていただきたいものです。

そこで、基本的なお客様の持ち物とお茶のいただき方について(流派によって違いがありますが、裏千家での作法によっています)。

お客様をするだけであれば、お懐紙(お菓子をとったり器物をぬぐったりするために使います)と菓子切り(フォークのようなもの)があれば十分です。他に、扇子(一般のものより小振り・床の拝見や挨拶のときは自分の前に置き、席に着くときには自分の後に置きます)やふくさ(道具を清めたりするときに使います。亭主やお茶を運ぶ人などの帯につけています)、これらを一緒に入れておくふくさばさみや数寄屋袋といった持ち物があります。

お茶会での服装ですが、私の場合、大好きなお着物を着たり、見たりすることができることもお茶をやっている楽しみの一つです。正式なお茶事(茶会)であれば、お着物(9月であれば、単衣の訪問着、付下げ、色無地など)を着る必要がありますが、通常、それほど気を遣う必要はなく、お洋服の場合は、替えの白靴下だけ用意しましょう(どこかの電器店のCMのようだ)。お茶室の中では、指輪や時計は外しましょう、お茶碗や道具を傷つけないためです。

お茶会に招かれますと、まずお席入をします。基本的には、入り口で正座して扇子をすすめながらにじって入ります。その後は、立ち上がって床のお軸やお花(9月のお茶花は、萩やすすき、石竹、藤袴、桔梗などです)、花入れを拝見し、その後、釜や炉、風炉(湯を沸かすためのもので、5月から10月の期間用いられます)を拝見します。大寄の茶会(大人数の茶会)などでは、席入りや拝見は省略されることも多く、そうではない場合では、前の人の真似をしましょう。次に座る場所ですが、一番先頭を正客、次を次客、三客といい、正客は、亭主と挨拶を交したり、お道具ついて尋ねたりしますから、先頭や最後(末客)を避け、真ん中あたりに座ります。

次にお菓子が出されます。季節の主菓子(9月であれば、初雁、萩の露、月見団子、10月には亥の子餅、小倉山、12月にはこころみの餅、冬籠など)の他に、お薄茶の場合、らくがんやせんべい、金平糖といった数種類の干菓子が盛られる場合もあります。銘々皿で出される場合もありますが、多人数分のお菓子が盛られたお菓子器が出されましたら、「お菓子を頂戴致します」とご挨拶(お辞儀)し、次の方に「お先に」と挨拶をします。そして、お菓子器に手を添え、軽くおしいただき、懐紙のわになっている部分を手前にして置き、お菓子器からお菓子を取ります。干菓子は手で取りますが、主菓子にくろもじ(お菓子をとるための箸のようなもの)が付いている場合には、右手でくろもじを上からとり左手で受けてから持ち直し(お箸の扱い方と同じです)、左手を菓子器に添えながらお菓子を懐紙の上に取ります。くろもじの先を懐紙の端でぬぐい、持ち直して菓子器の上に戻します。そして菓子器を両手で持ち、次のお客様に回します。実は、このお菓子、なかなか食べるのに苦労をするものもあります。例えば、お正月にだけいただく「はなびら餅」。新年になって初めてお釜をかける「お初釜」などで出されます。丸く薄くのばした求肥に包まれた桃色の白味噌がうっすらと透けて見える様子に幸せを感じます。ただ、甘露煮のゴボウが挟まれていて、これがなかなか切れない、かといって一口で食べるわけにもいかず、力を入れすぎるとお菓子を落としてしまいそうで、人知れず苦労しています。何はともあれ、目にも舌にも美味しいお菓子を堪能してみて下さい。

お茶をいただく

そしていよいよ、メインのお茶をいただきます。何人かのお客が一つのお茶碗でいただくお濃茶もありますが(薄茶の2倍近い量を練って点てたもので、いただくのには少しこつが必要です)、お薄茶をいただくことの方が多いでしょう。正客から三客や四客くらいまでは、亭主が点てたお茶をいただきますが、多くの場合、連客は、「お点て出し」といって水屋で点てられたお茶をいただきますので、運んで来られた方にご挨拶して頂きます。本来は、上座の方に「もう一服いかがですか」とか「お相伴いたします」などとご挨拶し、下座の方に「お先に」とご挨拶してから、「お点前頂戴いたします」とご挨拶して、右手でお茶碗を取り、左手にのせて、左に2回まわして正面を避け、頂きます。何口でもかまいませんが、3口ほどで最後まで飲み干したら、飲み口を指で拭い(その指はさりげなく、懐紙で拭っておきます)、お茶碗を右に2回まわして正面を元に戻します。正面にお茶碗を置いて、お辞儀をしてから、両手にとって拝見します。お道具を拝見するときは、常に両肘を膝におき、低い位置で道具を落とすことのないよう注意します。

最後に、お茶碗を左に大きく2回回し、正面を向側にして置き、お茶碗を下げに来られた方に「ごちそうさまでした」のご挨拶をします。後は、亭主のお点前を楽しんで下さい。

茶の湯とはただ湯をわかし茶をたててのむばかりなる事と知るべし」(利休百首より)

茶道は、難しいものでも、窮屈なものでも、苦いものでもありません。楽しくて、甘くて、おいしいものです。そして、お茶室の中には、書(掛け軸)であったり、焼き物や塗り物、蒔絵といったお道具であったり、着物や袋物の織物であったり、お花やお菓子であったり、あるいはお茶室そのものなどの楽しみポイントが一杯です。確かにこれらを極めようと思ったら一生かかっても足りないぐらいですが、機会があれば、いろんな楽しみ方でお茶を味わってみて下さい。