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おばちゃんはスゴイの巻

おばちゃんはスゴイの巻

大島 麻子
弁護士 大島 麻子

今でこそ立派なおばちゃんとなった私ですが、はじめからおばちゃんだったわけではありません。関東から京都に移り住んだのは30代はじめですが、この頃にはもうおばちゃんになっていたはずです。が、おばちゃんになった感慨よりも、関東から関西へという文化的ギャップの方が強烈すぎました。

なぜこんなに、大小様々な動物柄ファッションのおばちゃんが街にあふれているのか、という素朴な疑問は、ほんの序の口でした。すぐに、その存在感に圧倒されることになりました。例えば、新京極の商店街で遭遇した関西のおばちゃん。とことんまで値切り、限界に達したとみるや、すかさず隣にあった小物をつかんで、「じゃ、これつけて。」とオマケを要求。お目当ての品がバーゲン対象外と分かったとたん、「まからへんの? あんた、儲かってしゃあないやろ。」と一撃。すごすぎる。私は、ここで生きていけるのだろうか、と不安に思ったほどです。

それから10年以上が経過しました。いまだ関西のおばちゃんに同化できたようには思えません。「立ち止まって悩んでたら、ストレスも、家事も溜まるで。」と自分に突っ込みを入れ、忙しい毎日を乗り切る位がせいぜいです。ボチボチでんな、と思っていたら、最近、関西のおばちゃんがもっと進化していることを知りました。それは、「全日本おばちゃん党」です。

「党」といっても政治団体ではなく、フェイスブック上の女性市民団体です。先日、この団体の「代表代行」である谷口真由美さんのお話を聞く機会があったのです。谷口さんの本業は憲法学者なのですが、「カラス、スズメ、ハト」、つまり黒、茶、灰色という男服だらけ、庶民の感覚からかけ離れた上から目線の「おっさん劇場政治」に対し、何とかしなければ、ということで党を立ち上げたそうです。目的自体は極めて真面目なのですが、そこは関西のおばちゃん。シャレと突っ込みと関西弁というコテコテのパワー全開で、活動を繰り広げています。最近では、東京オリンピック誘致を強引にすすめた安倍首相に対する「しんちゃん、やるやる詐欺はあかんでぇプロジェクト」。しかも、これらの活動は、おばちゃん党員らの力で各国の言葉に翻訳され、ネットを使って全世界に発信されているそうです。すごい。

「カラス、スズメ、ハト」は弁護士も同じです。最近は女性弁護士の数も増えているのですが、それでも、登録者の割合でみると、まだ2割にも届きません。まして、弁護士会の「長」と名の付く役職には、ほとんど、あるいは全く女性弁護士がいないという状況です。そのうち、おばちゃん党から鋭い突っ込みが入るかもしれません。

などなど、谷口さんの話には、大いに笑いながら考えさせられたのですが、中でも目から鱗だったのは、「マダムを『おばちゃん』」と呼ぶのだ」というおばちゃん党の行動原則(?)です。

今回の稿では、冒頭から「おばちゃん」という単語を連発していますが、この単語に抵抗感をもつ方もおられるでしょう。「おばちゃん」というのは、大人の女性に対する一般的な呼称であるはずなのですが、「女は若くないとだめ」というような含みをもった蔑称として使われることも多く、実際、私もなんとなく負のイメージをもっていました。かといって、「おばちゃん」に代わる呼称も難しい。最近は、「大人女子」というような単語をよく見かけます。が、女子というと、反射的に生徒や学生、あるいはトイレを連想してしまう私には、今ひとつピンときません。現役小学生男子の母である私が、女子っていうのもなあ。

英国で暮らしていたときには、マダムとかレディとか、気持ちよく使える呼称がありました。日本語では「淑女」と訳されることもあるようですが、そんなに大ゲサな意味合いではないというのが生活していた実感です。要は、一人前として尊重される大人かどうかがポイントなのですが、ニュアンスも含めた的確な訳がないなあと思っていたのです。

おばちゃん党は、「おばちゃん」に込められた負のイメージは、幼さを珍重する「おっさん」文化のせいであるとばっさり断罪し、堂々と「おばちゃん」を使えばいいというのです。なんだかとっても愉快になりました。もちろん、その道のりは遠く重いでしょうが、シャレと突っ込みのおばちゃんパワーで乗り切っていけるはずです。

「ねっとわーく京都」2013年12月号