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子どもの味方の巻

子どもの味方

大島 麻子
弁護士 大島 麻子

紆余曲折を経て弁護士になったとき、労働者体験を生かし、労働事件に強い弁護士になりたいと意気込んでいました。実際弁護士になってみると、労働事件よりも、離婚をはじめ、子どもが関係した事件を扱うことが圧倒的に多くなりました。では、母親体験が弁護士としての仕事に生きているのかというと、そう単純ではありません。

子どもができて、生活は180度変わりました。価値観も変わりました。子どもが自立するには、途方もなく時間がかかるのだなあと感じています。

例えば、「二足歩行」にしたって、すぐにできるわけじゃないし、階段の上り下りもチャレンジの連続です。最初は、ハイハイと同じように四つん這いで上り下り。直立できるようになっても、まずは、片足を一段進み、次にもう片方も同じ段まで進む方式になります。子どもにとって、段差はあまりに巨大なのです。右足と左足を交互に効率よく使う、というのは、かなりの習熟が必要なんだなと思います。映画「となりのトトロ」でも、たしか12歳のサツキは階段を駆け下りていくのに対し、4歳のメイは、「いったん両足」方式で階段を下りていたように記憶しています。物語のテーマは奇想天外ですが、細かい点でリアルだなあと感じたところです。

我が息子の子育てでも、階段には泣かされました。1~2歳の頃は、入り口にある階段の上り下りに熱中され、目的地に到達できないこともしばしば。家の中でも、2階に置いてある物をさっさと取ってきたくても、息子が「一緒に行く~。」となると、長い道のりを覚悟せねばなりません。当時「階段ハイハイ」中の息子は、「ピー、ピー、バック~。」とかけ声をかけつつ、階段を慎重に下ります。気分は自動車、バックの際にピーピーいうのを真似てご機嫌です。余裕があるときなら実にカワイイ。が、急いでいるときは、ハラハラ、ジリジリ、イライラ。自立とはチャレンジ、せかしちゃだめ、ってわかっちゃいるんですけどね。でもやっぱり、「早くして~。」と口走りたくなったものです。

もちろん、現在小学生の息子は、私以上の早さで階段の上り下りができます。が、今度は、「2段抜きで階段を上る」とか「両足飛びで階段を上る」とか、自立との関連が今ひとつ分からないチャレンジをしたりするので、ああ、やっぱり「早くしてっ!」と怒鳴りたくなるのです。

とはいえ、私自身も、子どもの頃、道の途中にある全ての建物の前の階段を上り下りしてからでないと前に進まない、という時期があったそうです。最近になって母から聞いたのですが、全く記憶にありませんでした。つくづく、子育てというのは、忘れてしまった子ども時代の恩を、次の世代に返す営みなのだと感じます。

さて、子育てを体験してみて、弁護士の仕事についても、いろいろ思うところがあります。個々のケースはもちろんですが、特に思うのは、裁判所は、「子育てに手がかかる」というリアルさを認識していないのでは、ということです。

例えば、離婚後、夫婦は他人に戻りますが、子どもとの親子関係は変わりません。ですから、仮に母親の方が子どもを引き取ったとしても、父親の方も、「養育費」として、子どもの生活費などを分担する義務があります。この養育費の金額を決める際、裁判所が好んで使う算定基準というのがあります。これは、簡単にいえば、双方の親の現実の収入を基礎に、子どもの年齢と人数に応じて、分担額を算出しようという考え方です。

裁判所は、どうもこれが公平だと思っているようです。でも、子に対する親の義務は、単に「食い扶持」を稼ぐだけでないはずです。「夫が稼いで、妻が子育てをする」ことが多い日本の社会。離婚後も、母親の方が子どもを引き取って育てることが多いのですが、別家計となってもまだ「夫婦役割分業」が続くがごとく、一方の親のみが育児を負担しているという不均衡さを考慮しないのは、いかがなものかと思います。

結局のところ、法律とか、社会政策とか、政治の中枢を担うエライ人たちって、大人の世界だけで生きていて、子どもの世界を知らないんじゃないかなと疑ってしまいます。もちろん、自分が自立するまでに、多くの大人に手をかけてもらったことも忘れているのでしょう。子どもの目線で、子どもの味方になってくれる人に登場してほしい、と切実に思います。

「ねっとわーく京都」2014年4月号