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Sweet and Bitterの巻

Sweet and Bitterの巻

大島 麻子
弁護士 大島 麻子

弁護士にはなれたものの、取り立てて特技のない私。趣味も読書に映画鑑賞と、きわめてお手軽かつ孤独な楽しみです。同僚弁護士には、フラメンコとか日本舞踊とかロックバンドとか、自分も他人も楽しめる特技の持ち主がいるのに、我ながら面白みのない人間だなあと思います。しかも、子育て中とあっては、手軽な趣味でさえ楽しむ時間的余裕がありません。

というわけで、一昨年に休職したときは、思いっきり趣味に浸ってやる~と、一人静かに決意しました。何しろ異国の地なので、一緒に遊んでくれるような友達はいませんから、孤独な趣味がぴったりです。

渡英最初に観た映画は、「リトルダンサー」。原題は「Billy Elliot」といい、イギリスでは大人気の映画で、ミュージカルにもなっているほどです。日本語版ウィキペディアには、「2000年にBBCフィルムズにより劇場公開されたイギリスの映画である。1984年のイギリス北部の炭鉱町を舞台に一人の少年が、当時女性のためのものとされていたバレエに夢中になり性差を超えてプロのバレエ・ダンサーを目指す過程を描いた作品である。」と紹介されています。

あらすじは単純ですが、サッチャーに対抗する炭鉱労働者のストが続く町の様子とか、その炭鉱労働者である父と兄との日常とか、亡くなった母への思慕とか、主人公Billy少年を取り巻く状況の描き方がよいのです。なんといっても物語の山場は、バレエに反対していた父が少年の才能に気づく場面と、その後に取った行動でしょう。ねっとわーく読者の中には、労働組合の活動家もおられると思いますが、きっと、ぐぐっとくるはずです。父と息子、対照的な未来の描き方も心に残り、何度観てもいい映画です。

当時通っていた語学学校の先生によれば、イギリス映画の良さは、Sweet and bitterだということです。日本語で言えば、「酸いも甘いも」という意味でしょうか。イギリスに住んでいたせいか、それともトシを取ったせいか、最近は、どんでん返しの連続で息つく間もない映画よりも、小粒ながら味わいのあるイギリス映画に惹かれます。

もちろん、イギリス映画には、過酷な現実を容赦なく結末まで描ききるという、Bitter and bitterというべき硬派な社会的作品も少なくありません。観るには気力と体力が必要です。代表的なのは、アイルランド紛争を描いた「麦の穂を揺らす風」で、カンヌのパルムドールを受賞したケン・ローチ監督作品でしょう。もっとも、新作「天使の分け前」は、めずらしく幸せな幕切れでした。とはいえ、絶対不幸が訪れるはずと最後までビクビクしどおしで、やはり体力いりましたが。

最近観た硬派映画で印象に残るのは、これもBBCフィルムズの「縞模様のパジャマの少年」。二人の少年の友情を、ドイツナチスの強制収容所を舞台に描いた作品です。人ごとと思ってみていた戦争が、そうではないと痛感させられました。いい映画でしたが、結末があまりに衝撃的すぎて、再見する勇気はありません。

やはり、疲れた日常の合間に楽しく観るなら、Sweet and bitterです。帰国間近にテレビで観たコメディ「Made in Dagenham」は、まさにこれ。1968年、イギリス下町Dagenhamのフォード自動車工場で働く女性労働者の、男女同一賃金を求める労働闘争を描いた作品で、実話が基になっています。と書くと、きまじめな作品のようですが、「コメディ」に分類されているとおり、甘さと苦さのバランスが絶妙で、後味爽快です。

が、なぜか、この映画、日本では未公開なのです。最近チェックしてみたら、「ファクトリーウーマン」という邦題がつき、ネット配信はされているようですが、日本語版のDVDの発売はなし。この映画もBBCフィルムズ制作ですが、同じ公共放送局であっても、日本のNHKは、日本軍慰安婦問題をはじめとして社会的問題への視点が大甘ですからね。1960年代に、既に女性労働者が男性との同一賃金を勝ち取っていて、さらにそれを支援したのは女性大臣、というヨソの国の映画など、みたくもないし、みせたくもない、というのが映像業界の感覚なんでしょうか。

趣味の話を書くつもりが、無粋な人間にはやはり無理で、最後は辛口になってしまいました。先日、えいやとこの映画のDVDを海外から購入したので、口直しに、英語の勉強も兼ねてゆっくり観たいと思っています。

「ねっとわーく京都」2014年6月号