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アスベスト産業政策に対する国の責任が明確に~泉南アスベスト国賠訴訟最高裁判決

アスベスト産業政策に対する国の責任が明確に~泉南アスベスト国賠訴訟最高裁判決~

弁護士 谷 文彰2014年10月23日
弁護士 谷 文彰

1 アスベスト被害に関する初めての最高裁判決で国の責任が明確に

2014年10月9日、最高裁判所第一小法廷は、最高裁判所として初めて、アスベスト産業政策に関する国の責任を明確に認める判決を言い渡しました。大阪の泉南アスベスト国賠訴訟(一陣、二陣合わせて原告89名・被害者59名)の上告審において、国が規制を怠ってきたことは違法であるとして、原告らの損害を賠償するよう命じたのです。 この判決は、アスベスト被害について国の責任を問う訴訟の中で最初に下された最高裁判決であり、被害の大きさや結論を真逆にした2つの高裁判決の存在、今後のアスベスト訴訟に与える影響の大きさなどから全国的に大きな注目を集めていた判決です。その中で、アスベストについての国の政策が誤りであったと明確に認められたことは極めて大きな意義を持つものであり、当事務所も全力で取り組んでいる建設アスベスト訴訟にも多大な影響を与えることは間違いありません。

2 これまでの経緯と最高裁判決の意義

泉南アスベスト訴訟は2006年5月に一陣が大阪地方裁判所に提訴し、同地裁で2010年5月19日(原告勝訴、裁判所で初めてアスベスト被害に関する国の責任を認定)、大阪高裁で2011年8月25日(原告逆転敗訴、労働者の生命・健康よりも産業の発展を優先)、二陣訴訟に関して大阪地裁で2012年3月28日(原告勝訴、国民の生命・健康が最優先との原則を改めて確認)、大阪高裁で2013年12月25日(原告勝訴、国の政策の違法性を広く認め三度国の責任を断罪)と判決が積み重ねられ、その集大成として最高裁判所第1小法廷に係属していました。

最高裁判決は、1958年から1971年までの期間について、石綿紡織工場に局所排気装置の設置を罰則をもって義務付けなかったこと(規制権限の不行使)は違法であるとし、国の責任を認めました。「アスベスト産業政策に誤りはなかった」と強弁していた国の主張を真っ向から否定したことは、国の過去のアスベスト対策や被害者救済及び将来の被害防止対策のあり方の抜本的な見直しを迫る契機となるでしょう。何より、国民の生命・健康が第一であるということを最高裁判所が改めて明確に認めたことは、労働安全衛生の分野において国の果たすべき責任の重要性を再確認する意味があります。

判決の意義は、過去の対応の誤りが明らかになったことだけにあるのではありません。今後のアスベスト訴訟への影響はもちろん、原発再稼働など安全性を軽視し、産業や経済の発展を優先しようとする今の政権に対する強い警鐘にもなっています。「生命・健康が第一」、この基本原則を、いま改めて共通認識にすることが求められているのではないでしょうか。

3 判決を梃子にアスベスト被害の全面救済を~署名にもご協力下さい~

もちろん、最高裁判決にも不十分な点はあります。国が取ってきた不十分な石綿粉じんの濃度規制や、労働者に防じんマスクを使用させる義務を事業者に課さなかったことなどは違法でないとしており、こうした点は、今後の訴訟で大きな争点となってきます。当事務所でも、弁護団長を務める村山晃弁護士を筆頭に全力を挙げて取り組んでいる関西建設アスベスト京都訴訟は、2015年5月に結審(予定)、2015年中にも判決が下される見込みです。私たちは、泉南アスベスト訴訟最高裁判決に続いて建設アスベスト訴訟でも完全勝利を勝ち取り、アスベスト被害の全面救済を実現する決意です。そのために署名活動にも取り組んでおりますので、ぜひ、お一人でも多くの声を上げて頂き、「生命・健康が第一」の声を裁判所に、そして国に突きつけるために、ご協力を頂きますようお願い致します。

最後に、泉南アスベスト訴訟では、最高裁判決までに既に6割近い被害者がこの世を去っています。そうでない方も、日々高齢化や病気の進行に苦しんでおり、「命あるうちに解決を」の願いはもはや待ったなしとなっています。残された時間は本当に少ない。1日も早い国の真摯な謝罪と全面解決を、当事務所としても強く求める次第です。

最高裁判決を受けた院内集会の様子
最高裁判決を受けた院内集会の様子

関西建設アスベスト京都訴訟弁護団    
村山 晃、秋山 健司、大河原 壽貴、谷 文彰