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生活保護と生存権保障

生活保護と生存権保障

寺本 憲治2012年7月2日

弁護士 寺本 憲治

人気お笑い芸人の母親が生活保護を受給していたことが世間で騒がれています。これを受けて小宮山厚生労働大臣は、親族からの返還強化や扶養困難なら証明義務を課す法改正を検討すると表明しました。

そもそも、憲法25条1項では「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」と明確に規定され生存権が保障されています。また、生活保護法では、保護時に親族の扶養を条件にしていません。保護の要件について定めた生活保護法4条1項の規定は、「保護は、生活に困窮する者が、その利用し得る資産、能力その他あらゆるものを、その最低限度の生活の維持のために活用することを要件として行われる」と定めています。これに対し、生活保護法4条2項は、「民法に定める扶養義務者の扶養は保護に優先して行われるものとする」と定め、あえて「要件として」という文言を使っていません。「扶養が保護に優先する」とは、保護受給者に対して実際に扶養援助(仕送り等)が行われた場合は収入とみなし、その援助の金額の分だけ保護費を減額するという意味であり、扶養義務者による扶養は保護の前提条件とはされていないのです。

なお、民法では夫婦間・直系親族と兄弟姉妹に扶養義務を課していますが、通説では強い義務(生活保持義務)を負うのは夫婦間と未成熟の子に対する親のみであり、成人した子の老親への義務は「自分の地位にふさわしい生活が成り立ち、なお余裕があれば援助する義務」(生活扶助義務)にとどまっています。伯父・伯母や甥・姪が扶養義務を負うのは、家裁の決定があった場合に限られます。

親族へ扶養照会をすることは、疎遠な親兄弟に「自分の生活がどのような状況かということを知られたくない」との思いから、保護申請をためらわせる要因になると指摘されています。冷え切った親族に仕送りを強いる制度設計では、かえって人間関係をこじれさせ、厄介者扱いにしかねません。家族がいても孤立し、困窮しても生活保護をためらう人がいます。そのことを忘れず、全ての人々の生存権(憲法25条1項)が保障されるよう求めなければなりません。