弁護士コラム

マンション分譲会社倒産による管理費「二重請求」問題
~管理会社を提訴~

マンション分譲会社倒産による管理費「二重請求」問題
~管理会社を提訴~

はじめに

2009年9月16日、草津市の新築分譲マンション(72戸)の管理組合が管理会社(大阪ガスセキュリテイサービス=OSS)に対し、約1300万円の損害賠償を求めて大津地方裁判所に提訴しました(下記新聞記事参照。飯田は管理組合の代理人です)。

この事件は、分譲マンションを購入する消費者であれば誰でも巻き込まれかねないものです。以前はマンションの分譲業者が倒産することは滅多になかったことですが、現在では日常茶飯事になっているからです。

マンション管理費の取り扱い

マンションの分譲の場合、入居前に修繕積立金一時金や数か月分(本件では2か月分)の管理費、修繕積立金、駐車場使用料の先払い(本件では1戸30万円台)は、一般に行われています。それらが管理組合(分譲段階では未成立)名義の口座に支払われればよいのですが、分譲業者名義の口座への支払いであれば、業者が倒産して管理組合に移管されない危険があります。この点についてマンション管理に関する法令でも、明確な規程は未整備となっています。

事件の経緯

本件マンションの入居者説明会(2008年10月初め)では分譲業者である環商事より、39戸については管理組合名義の口座ができてから送金するようにとの説明文書が渡されましたが、33戸については、環商事の口座に送金するように記載した文書が渡され、当該33戸購入者は環商事に送金しました。ところが、環商事はその後大津地裁に破産を申立て、11月17日には破産手続開始決定に至り、約1200万円が管理組合に入金されないという事態になったのです。

事件の経緯関連図

2009年5月11日京都新聞より

管理会社による「二重請求」の問題点

分譲マンションの場合、管理会社が分譲段階で予め指定されています。本件ではOSSが管理会社として説明会にも立ち会っています。実際に管理費等の徴収業務を代行するのは管理会社ですから、OSSは管理組合(設立前は各購入者)から委託を受けた者として、徴収された管理費等が適正に管理組合に入金されるようにする注意義務があります。ところが、OSSは上記事態を見過ごし、更に3度にわたって未入金を確認しておきながら放置をしたため、環商事の破産により入金が不可能となったのです。

ところが、OSSは自らの責任を認めようとせず、33戸に「二重請求」をするなど、不誠実な対応に終始しました。そこで、管理組合は、管理委託契約に基づく善管注意義務違反(債務不履行ないし不法行為責任)を追及して、本裁判に至ったものです。

分譲会社の倒産が日常茶飯事となった時代のもとで、管理会社の責任の明確化、更には購入者から徴収する管理費等は管理組合口座に入金させることを義務付ける法整備が求められています。

2009年9月