弁護士コラム

京都新聞COM雇い止め事件 京都地裁で勝利判決

京都新聞COM雇い止め事件 京都地裁で勝利判決

事件の概要 ~事業再編から雇い止め~

Aさんは2001年6月、Bさんは2004年5月に、京都新聞社の子会社である京都新聞企画事業株式会社(以下「企画事業会社」という)に採用されました。Aさんは同社において、当初は官公庁の広報支援業務を行っており、入社2年目頃からは、京都新聞に掲載する「記事体広告」(記事の体裁をとった広告)の作成や京都新聞社が主催するイベントの運営業務等も行いました。Bさんも同社に入社後、同様に記事体広告の作成やイベント運営業務等を行いました。

2006年4月1日、京都新聞社は事業再編を行い、記事体広告の作成業務やイベント運営等の業務委託は企画事業会社から代わって、新設された100%子会社である京都新聞COM(以下「COM」とします)に業務委託され、Aさん、BさんもCOMとの間で雇用契約を締結するようになりました。ところが、COMにおいて2回契約更新をした直後の2008年6月、二人は2009年3月31日付で雇い止めする旨の通知を受けました。

二人は、雇い止めは無効であると考え、従業員としての地位の確認と2009年4月1日以降の賃金の支払いを求めて、2008年10月27日に賃金仮払等を求める仮処分を申請し、さらに2008年12月26日、京都地方裁判所に訴訟を提起しました。

判決までの経過

京都地裁では2009年4月20日に賃金仮払を命じる仮処分が出されました。会社側は異議申立をしましたが同年10月16日に却下。会社側はさらに大阪高裁に保全異議決定に対して抗告しましたが、2010年4月28日に抗告が棄却されていました。そのような中、訴訟(本訴)についても2010年5月18日の判決を迎えました。

法人の枠組みを超えて雇用の継続を認定した画期的な判決

まず、判決は、雇用期間の考え方について「企画事業会社と被告<COM>との関係であるが、原告らは平成18年4月に企画事業会社から被告に移籍しているが、業務内容に変更はなく、勤務場所も同じ京都新聞社の社屋内でフロアが変わっただけであること、被告勤務開始時の原告らの基本給は、企画事業会社での勤続年数に応じて違いがあり、有給休暇についても、企画事業会社での勤続年数に応じて日数が決められ、被告での賞与についても企画事業会社の在籍期間をも計算対象期間として支払われていたことなどからすると、雇用契約期間や契約更新回数を考えるに当たっては、企画事業会社での勤務と被告での勤務は継続しているものと考えるのが相当である」と画期的な判断を示しました。

その上で、判決は、会社側が主張していた契約社員の雇用年数を最長3年に限定する「3年ルール」については、説明が杜撰であった実態を認定し、「3年ルールについて説明していたことを理由として原告らにおいて契約期間満了後も雇用継続を期待することは合理的でなかったとする被告の主張は採用できない」と明確に退け、原告二人について「期間満了により直ちに雇用契約が終了するわけではなく、使用者が更新を拒絶するためには、社会通念上相当とされる客観的に合理的な理由が必要」とし、「本件雇い止めは無効であるから、原告らは、現在も被告において期間の定めのある契約社員としての地位にあるといえる。」と述べました。結論としてはCOMに対して雇用契約上の地位を確認した上で、賃金の支払いを命じました。

このように、法人の枠組みを超えて期待権の発生を認め、雇い止めを無効とした判例は前例がありません。現在、会社設立の要件が緩和されている下で、会社の法人格の違いを用いた様々な労働者に対する攻撃が行われています。そのような中で今日の判決が出た意義は大きく、画期的なものと言えます。また、この判決は、仮処分の2度の地裁、高裁の支持を経たものであり、多数の裁判官の判断に合致するものであることも重要です。法的に確立した判断といえましょう。

弁護団としても、本件の最終的な解決に向けて、今後も全力を尽くす所存です。
なお、京都地裁(京都地裁決定平成21年4月20日)の仮処分決定については『労働判例』981号p165、また、裁判所ホームページにも掲載されています。

(弁護団)弁護士 村山  晃
弁護士 岩橋 多恵
弁護士 渡辺 輝人
弁護士 藤井  豊

弁護団による記者会見

弁護団による記者会見

2010年5月
京都新聞COM雇い止め事件 裁判所ホームページに判決が掲載されました