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京都市新採教員分限免職訴訟・完全勝利の意味するもの

京都市新採教員分限免職訴訟・完全勝利の意味するもの

渡辺 輝人弁護士 渡辺 輝人
2010年7月7日

1.事案の概要

本件は、京都市の新採教員として1年間の条件附で採用された京都市の教員が、条件附採用期間の末期近くである2005年2月24日に指導力不足等を理由に分限免職処分され、教壇を追われた事件です。同処分の取り消しを求める行政訴訟を提起後、2008年2月28日に京都地方裁判所で勝利し、さらに2009年6月4日に大阪高裁でも勝利しました。この度、京都市の上告受理申立が却下され、大阪高裁判決が確定したので、改めてご報告します。

(関連ページ)

新採の条件附採用期間中の教員の分限免職取消請求事件について判例検索をしても、原告勝訴事例はほとんど見当たりません。最高裁まで行って確定した勝訴例はおそらく初めてではないかと思われます。同時期に本件とも連携しながら勝訴に至った大阪市の教員の事例がありますが、これは教員になる前に一般公務員として勤務実績があり、最終的にはそもそも条件附採用の教員ではなかったとされています。

2.条件附採用教員の免職の基準について新しい基準を打ち立てたこと、その基準の水準の高さ

大阪高裁判決は、教育委員会による分限免職処分が裁量の範囲内にあると言えるためには、

  1. 職場での教員の指導・評価に当たる管理者等が、条件附採用期間の推移をみても当該教員が教員としての適格性を欠き、職務の円滑な遂行に支障を来すといわざるを得ず、それが、今後の、経験、研さんによっても改善される可能性が薄いと判断したこと
  2. その判断が客観的で合理的なものであること

が必要とし、また、2.の判断が客観的で合理的なものといえるためには、

  • ア 被控訴人が新採の教員であることから、職場における適切な指導・支援体制の存在と本人が改善に向けて努力をする機会を付与されたこと
  • イ ある程度の整合的・統一的な評価基準の存在が前提

としました。さらに、イの評価基準については、

  • A 個々の事象の評価に過度に拘るのではなく、一定の時間の経緯の中で評価すべき
  • B 教員の児童に対する指導方法については、裁量的な余地があることは否定できないから、主観的な評価の入る余地のある出来事を評価対象とすることはできるだけ避け、できる限り客観的で安定した方針の下で、今後の経験、研さんによっても、教員としての適性が備わることが困難であるかどうかを検討するのが相当

と指摘しました。結論として、分限免職を取り消した京都地裁判決(平成21年2月28日)を支持し、京都市の控訴を棄却しました。

3.判決の具体的内容についての評価

この大阪高裁の判決は、新採教員の分限免職処分について、教員という職業の特殊性に鑑み、一般職の公務員とは異なる基準を立てたものであり、教員の分限免職処分について、事実の認定方法と任用継続可否に関する評価の両方にしかるべき枠をはめたものと言えます。

個々の観点に関して言えば、問題事象をあげつらう態度が厳しく非難され、教員としての発展可能性を考慮すべきとした点は非常に高く評価できます。

また、分限免職処分が適法とされる前提として「職場における適切な指導・支援体制の存在と本人が改善に向けて努力をする機会を付与されたこと」が要件とされていることは、単に身分に関する判例を超えた意義を持ちます。現在、教育の現場は超過密労働が常態化しており、過密労働によって十分な教育実践すらままならない状況です。このような状況の下、ベテラン教員であっても自分のことに精一杯で、後輩への支援すらままならず、若手の教員は孤立無援の状況に置かれています。京都市に限ってみても教員の過労死事案や精神を患う事案が散見されます。この判決はこのような劣悪な労働条件の下で「指導力不足」の烙印を押すこと自体に警鐘をならしたもの、と評価できます。

また、判例は公務員の分限免職処分に関するものですが、判例が打ち立てた基準は教員一般に適用しうるものです。教員全体の身分保障に関する成果として意義のあるものと考えます。

2010年7月