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年金保険の二重課税 ~最高裁判決と還付手続の開始

年金保険の二重課税 ~最高裁判決と還付手続の開始~

谷 文彰2010年12月10日
弁護士 谷 文彰

1 画期的な最高裁判決

「相続税の課税対象となった部分については,所得税の課税対象とならない」-
 最高裁判所は、2010年7月6日、遺族が年金形式で受け取る生命保険金について、このように判示し、所得税を課した税務署長の処分を取り消しました。

これまでは実務上、年金受給権には相続税が課され、年金取得については支給額全額に所得税が課されてきたのですが、このように相続税と所得税を課すことは二重課税であり許されないとしたのです。

2 なぜ二重課税となるのか?

所得税法は、「相続、遺贈又は個人からの贈与により取得する」所得については、所得税を課さないとしており、その趣旨は、同一の経済的価値に対して、相続税(又は贈与税)と所得税とを二重に課税することを禁じたものです。つまり、所得税法は、相続税の課税対象となっている部分についてさらに所得税を課すことを、二重課税として禁止しているのです。

そして、遺族が年金形式で受け取る生命保険金の場合、年金保険の受給者が受け取る年金の額は、元本とその運用益との合計によって算出され、相続税法は、これらのうち元本に相当する部分は相続税の課税対象になるとしています。このように、年金形式で受け取る生命保険金のうち元本部分については既に相続税の課税対象となっていますので、同じ部分にさらに所得税を課すことは、まさに所得税法が禁じた二重課税になるのです。

3 還付対象者は6万人以上

この二重課税問題で、財務省と国税庁は、納められた所得税の還付を10月下旬から行うことを発表しました。特筆すべきは、法律上還付の対象となる5年より以前に納められた所得税についても、法改正を行うなどして還付の対象とすると表明したことです。

還付されるのは、受け取る保険金のうち元本に課されていた所得税で、1年目に受け取った保険金は全額が元本とみなされて所得税が還付されます。2年目以降は、元本と運用益のうち元本分だけが還付されます。

対象となる保険としては、判決で認められた年金払い方式の生命保険に加えて、個人年金保険や年金タイプの学資保険、年金払い積立傷害保険、年金共済などが挙げられます。これらの保険のうち、相続税に加え、源泉徴収等によって所得税を支払ったものが還付の対象となり、2005年分から2009年分に限っても、還付対象者は6万~9万人、総額は60億~90億円程度になる見通しです。

還付までの具体的な流れ等については、下記Q&A及び「必要なお手続き判定表」をぜひご参照下さい。

還付手続きに関するQ&A

Q1:所得税の還付等の手続はいつから始まりますか?
A:今回の取扱の変更によって、所得税が還付される場合や、所得税は還付されないものの住民税や国民健康保険税などが減額となる場合などがあり、それらの手続は平成22年(2010年)10月20日から始まっています。
Q2:還付の対象等となるのはどのような人ですか?
A:具体例を挙げると、以下のようになります(ただし、保険契約等に係る保険料を負担している方は除かれます)。
  1. 死亡保険金を年金形式で受給している方
  2. 学資保険の契約者の死亡に伴い、養育年金を受給している方
  3. 個人年金保険契約に基づく年金を受給している方
Q3:対象となる保険契約はどのようなところで取り扱われていますか?
A:生命保険会社、旧簡易保険、損害保険会社、JA共済、全労済等で取り扱われています。
Q4:実際に還付される所得税の金額を知りたいのですが?
A:一概にお答えすることはできません。
実際に所得税の還付等を受けることができるかどうか、また、その還付の金額については、支払を受けた年金の額や所得税の非課税部分の額、年金の支払を受けた年分の申告内容などにより異なります。
Q5:対象者には保険会社から通知が来ると聞いたのですが?
A:はい。平成22年10月20日以降、生命保険会社等の保険年金取扱各社(Q3に挙げた会社)から、還付手続に必要な情報が個別に通知されることになっています。この通知を受けて、各々必要な手続を採ることになります(具体的にどのような手続が必要かという点について、詳しくは別紙のフローチャートを参考にしてください)。
 ただし、この通知は全員に送付されるわけではありません。通知が届かない方で、還付の対象に含まれるのではないかと思われる方は、ご自身で年金保険会社等に問い合わせをしていただく必要があります。
Q6:手続に期間の制限はありますか?
A:あります。例えば、平成17年分について、早い方は平成22年12月末が期限となりますのでご注意下さい。
Q7:手続について、弁護士に教えてもらうことはできますか?
A:もちろんできます。当事務所でお手伝いさせて頂きますので、お気軽にご相談下さい。
(国税庁ホームページ)

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2010年12月