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国税通則法等の改悪に反対しましょう

国税通則法等の改悪に反対しましょう

森川 明2011年3月18日
弁護士 森川 明

はじめに

現在の第177通常国会に、予算関連法案の1つとして、自営業者にとっては死活問題となる、国税通則法(国税に関する基本的な制度や手続きを定めた法律)等の改悪案が提出されています。

遅れている日本の納税者の権利保障

憲法は国民主権を宣言しています。これを受けて制定された現行国税通則法は、申告納税制度を基本としています。これは、税額は申告により決定されることを原則とするという自主申告権を納税者に認めるものです(国税通則法16条)。

しかし、納税者のさまざまな権利を明確に規定するという点では、日本はとても遅れています。納税者の権利を定めるのが納税者権利憲章です。OECD加盟国30カ国のうち、この納税者の権利憲章がないのは日本だけです。この結果、他国と比べていかに日本の納税者の権利の保障が遅れているか、図表1をみて頂ければ分かると思います。

[図表1]

世界の納税者権利保護の状況

このため、自営業者などの団体は古くからこの権利憲章の制定を求めて運動してきました。民主党もマニフェストでこれを掲げていました。ところが民主党は政権についた途端、納税者のこれまでの運動に応えるかたちをとりながら内実は税務官僚がかねてからねらっていた通り、納税者の義務を拡大、強化し、税務署の思い通りに徴税を厳しくできるよう改悪しようとしているのです。

強権的な税務調査を合法化

今回の改悪案の主な内容は図表2の通りです。

[図表2]

改悪案の主な内容

この表で「現行」とは、納税者の運動の前進があって、国税庁が昭和51年4月に定めた「税務運営方針」によって定められていました。

改悪案の内容

(1)事前通知なしで税務調査

税務調査は犯罪捜査などと異なり、納税者の理解と協力を得て行うものであるため、事前に通知することが必要でした。これが、税務署員が正確な事実把握や適正な調査の遂行に支障を来す恐れがあると判断するだけで通知は必要ないとしています。突然に臨場して有無を言わさず調査に入ることが可能となります。

(2)調査期間は5年

これまで、自営業者に対する税務調査は過去3年間が対象でした。これを5年間まで遡らせ、修正申告や更正処分で業者を脅すこととなります。

(3)全ての業者に記帳義務

現在は所得が300万円以下の白色申告者には記帳義務はありません。税務署は青色申告を誘導してきましたが、その普及割合はなお55%です。ところが、これを全ての業者に財務省令で定める内容の記帳義務を課そうというのです。朝から晩まで働き詰めの業者に詳細な記帳作業を課することは酷に過ぎます。

(4)質問・検査・提示・提出

税務調査に際して税務署員は、質問し、検査することとともに、資料を提示させ、提出をさせることが出来ることとなり、求められた業者がこれに応じないと罰を受けることとなります。それだけで犯罪となるのです。

(5)反面調査

これまでは、取引先や銀行などに対する反面調査を行うには、納税者本人調査では分からないという補充性が必要でしたが、この要件を外すというものです。本人の知らない間に取引先などに調査が行われ、信用が損なわれる恐れが強くなります。

(6)修正申告

これまで、修正するかどうかを決めるのは納税者本人の権利でした。しかし、税務署員は修正申告又は期限後申告を勧奨することを法定化しようというものです。公然と税務署員の現場での圧力が強まることは目に見えています。

このような国税通則法等の改悪案は廃案を要求しましょう!

2011年3月