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新春座談会 吹き飛ばせ格差社会 輝け青年労働者

新春座談会 吹き飛ばせ格差社会 輝け青年労働者

京都総評青年部事務局長代行
石渡 牧子
Ishiwatari Makiko
ねっとわ~く京都編集部アルバイト
寺澤 さやか
Terasawa Sayaka
弁護士
大島 麻子
Oshima Asako
弁護士
大河原 壽貴
Okawara Toshitaka

大島大河原 あけましておめでとうございます。

寺澤石渡 おめでとうございます。

大河原大河原 壽貴 京都府職員労働組合でお仕事をされている石渡牧子さんと今春から出版社へ就職されるという寺澤さやかさんにお越し頂きました、今の青年の実態や現状をお聞きしたいと思います。
まず、現在の青年はいったいどんな状況になっているのでしょうか?

石渡 青年の実情ということでまず頭に浮かぶのが就職の問題ですね。就職率で見たら今年は結構良くなっているといわれていますが、それは新卒採用についてであって、今すでにアルバイトやフリーターをしている青年が正社員になろうと思ってもなかなかなれる状況ではありません。

寺澤 私は事情があって既卒の状態で就職活動をしたのですが、今の就職活動って一度新卒採用のルートから外れてしまうと、本当に厳しい状況なんです。私は出版社か新聞社に就職したかったので、その業界は年齢制限だけで、既卒ということは問われずに受験することができましたが、銀行やメーカーなどは新卒でないとエントリーシートを出すことすらできないところがほとんどです。

大島 そうですか。では、若者の間には閉塞感や無気力をもつ人たちが増えているのでしょうか?

石渡石渡 牧子 たくさんの青年がそうなっているとは言えないと思います。就職という面では大きなハードルはありますが、先日、円山公園で行われた青年一揆では雨の中、六〇〇人を超える青年が集まり大成功でした。労働組合の青年部や大学生にも参加してもらった実行委員会を中心に、仕事も立場も運動のやり方も違う青年たちがそれぞれの団体できちんと議論し、「自分たちはこういう想いで関わろう!」という意志がはっきり見えましたし、若者もすごく変わってきたと実感しました。

大河原 労働組合離れや組合員の減少をよく耳にしますが、そういった新しい組織が誕生していくのもすばらしいことですね。今の青年の政治や社会に対する状況はどうなんでしょうか?

寺澤 少し前までは若者は政治に関心がないと言われていたと思いますが、最近の若者はボランティアだとかNGOの活動などに積極的に参加したりっていう状況があります。その一つの契機としては、一九九五年の阪神大震災を挙げることができるでしょうか。あの震災をきっかけに、他人のために何かをするということが自然に受け入れられる土壌ができ、一九九五年が日本の「ボランティア元年」だと言われていますよね。私はベトナムのストリートチルドレンを支援するNGOに参加していますが、そこでも多くの若者が活動しています。

石渡 私はその一九九五年に大学に入学しました。震災もありましたし、また、薬害エイズ問題で川田龍平君が当時の厚生大臣に謝罪させたといった出来事があり、その運動も若者が中心になってやっていました。就職難やオウムの事件もあり、若者の社会への関わり方が変わってきた時期だと思います。最近で言うとやはり9・11のアメリカ同時多発テロ事件から、イラク戦争などがきっかけで平和運動に参加してくる若者も増えてきました。全体的なナショナリズムの動きはあっても、はたと気がついて運動を始めた若者もたくさんでてきています。

大島大島 麻子 石渡さんからアメリカの同時多発テロ事件やイラク戦争がきっかけで平和運動に参加してくる若者も増えてきたといったお話がありましたが、私が学生の頃はまだバブルが残っていて、学生運動は活発でない、若者は社会のことに関心を持たない、社会に何の不満もない、就職も良いし困らない、そういう時代でした。デモのような権利を訴える運動は非常に違和感を持たれ、一方では団塊の世代の民主的な運動が生き残り、そういう運動に対して保守政党側はすごい攻撃を加える。そんな時代に就職して転職して、そして弁護士になったおばさんの目から見ると今若者たちはすごく嬉しそうにピースウォークに参加している。「あ~時代はこんなに変わっているんだ~」という感じですね。今の若い人たちがどういった気持ちで平和運動とか憲法の問題に関心を持っているのか興味深いです。

寺澤寺澤 さやか そうですね。最近の若者は、今大島さんがおっしゃったように平和運動などに積極的に参加していることが注目されたり、逆に「ぷちナショナリズム症候群」などと言われ右傾化が危惧されることもありますよね。右か左かということはさておき、若者が政治的な事柄にコミットしたいという気運が高まっているような気はしますが、留保が必要な部分もあると思います。例えば、ワールドカップの時に「若者の間でサッカーナショナリズムが噴出している!」とかって議論になったこともありましたが、「あれはナショナリズムでも何でもなくて、ただ盛り上がりたいだけなんだ」って見方も強いですよね。少し乱暴な言い方をすると、雇用の問題などで不安が多い若者のパワーの矛先が、たまたま「平和」や「国家」というものへ向かっているという側面もあるのではないかと感じます。

大河原 イラク戦争でもそうだったのですが、前線で働いているのは民間警備会社という名前の戦争請負会社みたいなところでしょう。国際的な戦争を請け負う会社があり、良い就職先はそこしかないというような時代が来るのかと不安になりますね。

石渡 青年一揆に関わってくれた大学生が話してくれましたが、先輩が正規の職が無くて仕方なく自衛隊に入っちゃったって。アメリカでも志願制だけど実際は貧困層の仕事がない人たちが軍隊に入らざるをえない状況にあると言われています。日本で自衛隊に入ってる人でも同じような理由の人もいると思います。「自衛隊に入ったらこんな免許が取れる」とか言って高校生の勧誘とかもすごいようですが、アメリカと同じようなことが起こっていると思うとすごく怖いなと思います。

寺澤 弁護士の方にお聞きしたいのですが、憲法の話などはよくするのですか?

大島 憲法の話ですか? 日常の仕事では、もしかしたら憲法は一番使わない法律かもしれないですね。例えば生活保護の事件では、生活保護法が問題になるというように、直接的には憲法でなく、法律を問題にすることが多いからです。でも、北九州市のように、生活保護を認めないで、そのせいで飢え死にしていくような人がどんどんでてくると、そういう法律の運用は憲法の理念に反しているとして、憲法が登場します。そういう意味で憲法というのは、人権の守り手としての一種の理想の存在ですね。そういう憲法の理念を生かして、権利をもっと豊かにしていくような事件は弁護士としてはすごいやり甲斐があるし、弁護士冥利に尽きますね。みんな世の中がおかしいとは思っているんですよね、でもそれは憲法のせいだよーみたいに吹きこまれていますが、実際には憲法の理念が実現されていないから世の中おかしくなっているんです。

大河原 一部マスコミからは、憲法を変えようといった大合唱が起こっていますが、漠然とした不安感が市民の中にあって、それを変えれば良くなるっていうように誘導されているようにも見えます。

石渡 改憲という問題と格差という問題とがすごく結びついているなあと思っています。保育や教育、医療など今までだれでも同じように受けられてきたサービスもお金があるかないかですごく差がついてしまう方向になっていますよね。そういった格差が前提になってしまったときに「戦争」を肯定する意識もシステムもできやすくなってしまうのではないでしょうか。また、憲法というと九条が注目され、権力側にしたら一番変えたいところで、九条というとすぐに平和の問題になりがちですが、今の格差でも働き方の問題でも九条とすごく関連があると思います。「権力側はどういう方向に持っていこうとしているのか?」「それを阻止するにはどうしたらいいのか?」全体的に考え、憲法が大切で大事なんだということを考えていかなければと思います。

寺澤 今って、世の中が一つ大きく変わるときじゃないかと思うんです。世界を見渡せば、イラク政策に失敗したアメリカというスーパーパワーの覇権が弱まっているし、日本国内を見れば、長く続いてきた企業の日本的雇用が立ち行かなくなっている。これから、世界全体も個人の生活も、ドラスチックに変わっていくと思うんです。憲法の問題を考えても、普段自分の生活に憲法が直接関わっていると感じることは少ないですが、例えば憲法九条が変われば、我々の生活も確実に変化すると思います。でも、今はそのリアリティがなかなか持てないから、どうしても受け身になってしまう。でもこのまま体制に流されていると、すごく怖い世の中になだれ込んでいってしまうんじゃないかな。そういうことも踏まえて、世の中の動きを慎重に判断していきたいなと思います。

大島大河原 今、青年をはじめとして、労働者や市民のくらしは、リストラ、不安定雇用そして負担増でどんどん悪くなっています。そんな中だからこそ、くらしと権利を守る法律事務所として頑張っていかなければなりませんね。また、憲法九条を守る活動もこれまで以上に大きくしていきたいと思います。ありがとうございました。

「京都第一」2007年新春号