京都第一

「未来につなごう平和憲法」記念講演のつどい

「未来につなごう平和憲法」記念講演のつどい

京都第一法律事務所創立45周年ロゴ 「強烈だったですね、背中をドーンと押されましたし、脳みそがかき混ぜられましたよ」、「勉強不足で時代から取り残されかけている私を反省しています」と元教員のお二人。京都第一法律事務所創立四五周年記念「講演のつどい」は予定時刻を一五分遅れて閉会。会場から出てくる人の表情が明るい。みんなだれかとしゃべっている。

気温一八度。風が少しきつい一一月二五日午後。開会二〇分前の京都教育文化センターは受付は混み合っているものの、会場内にはまだ四〇人程度。開会一〇分前になって、どこから湧いて来たのかと思うほど席が埋まり、開会時にはほぼ八割方が埋まっていた。「このテーマ、この組み合わせってめったにないから近くで聞かなくちゃ」と、宇治から来た岩本良子さんは最前列へ陣取る。「平和を本気で考える政党が落ち込んでいるでしょ、ちょっと不安になって。バランス感覚が働いていまがんばっているの」と明るい。

開会挨拶 午後一時半開会。開会挨拶のあと、いきなり大型スクリーンに砂漠に放置された戦車の残骸が映し出される。厚さ数センチと言われる装甲には劣化ウラン弾が数カ所貫通した跡がみられ、赤茶けた砲身は雲一つない青空に向けられている。期待が膨らむなか、フォトジャーナリスト・森住卓さんの講演が始まった。

湾岸戦争、イラク戦争の実態を知らしめる写真の数々。劣化ウラン弾が映し出されると静まり、白血病や腹水が溜まった子どものショットではあちこちからどよめきの声。子どもを通して劣化ウランから戦争の本質が暴かれ、見事に一枚の写真に切り取られている。会場内は衝撃的な写真の数々に身を乗り出し、目はスクリーンにクギ付け。岩本さんも細かい字でノートを埋めている。最後尾から会場を見渡すとメモを取っているのは女性と若者が多い。やはり参加者の年齢層は高いが、「この現実はショックですが、子どもの目や表情から大人への失望と同時に未来も見えてきますね」と立命館大学の女子学生が話してくれる。

金子勝慶應義塾大学教授 「いま徴兵制を必要としない世界戦争の最中である」と話を切りだした金子勝慶應義塾大学教授は高度なメディアコントロールが行われている実態をイラク戦争のプロセスを通して説明していく。静かな語り口の森住さんと好対照だ。舞台の前面に立ち、身振り手振りで笑いも交えながらの熱弁が続く。「アメリカは自由と民主主義の戦争を掲げる以上、国内で直接弾圧はできない。従って世論の戦争反対の声を抑えるためにメディアコントロールが発達する」、「正確な情報が伝わってこない中で、イラク戦争を正当化する安倍政権に対する六割前後の支持率は日本でメディアコントロールが異様に進んでいる証」、「多くの人には判断する情報が伝わってこない。これが戦時メディア化された状況の中に我々が置かれているということ」、「生活でさえ成り立たない状況をつくり出しながら対朝鮮・韓国・中国のナショナリズムで煽る。複雑なことを伝えることが不可能だが一つのことを猛烈な幅と量で瞬時に伝えることが可能なテレビの特性を利用するのが高度なメディアコントロールのあり方」と話し、「私たちがいかに戦争犯罪を犯し続けているのか、いかに不勉強であるか、みなさんが目を覚まして、いま何が起きているのか、学び掴み取ることから再出発しようではありませんか」と呼びかけた。

会場の様子 「もやもやが整理されました。納得がいくことばかり。現場主義の森住さんと情報戦争の最先端をいく金子さん、きょうは期待以上の収穫。急がないと時間がないね、こんなにテンポが早いのだからみんながあきらめる前に何とかしないと」と、岩本さんも急ぎ足で会場を去っていった。

「京都第一」2007年新春号