京都第一

雇用破壊と闘う!弁護士ファイル

雇用破壊と闘う!弁護士ファイル

渡辺 輝人
弁護士:Watanabe Teruhito

新規採用教員に対する分限免職認めず! 高裁でさらに画期的な判決

「指導力不足」などと一方的に決めつけられて免職された採用1年目のTさんが免職処分の取り消しを求めた訴訟で、2009年6月4日、第1審に引き続いて大阪高等裁判所も、Tさんが勝利する判決を下しました。

もとより、京都市は否定的な出来事を並べ立ててTさんを非難することに終始していましたが、第 1 審判決では、丁寧な事実認定に基づき、免職処分は新規採用された教員の可能性をつぶす違法なものであったとして、その取消を認めました。

高裁判決では、さらに、若い先生方が些細なことや上司の都合で現場を追われることのないよう免職処分のあり方にまで言及し、「気に入らなければ切る」という教育現場の実態に警鐘を鳴らしました。

高等裁判所の判決に対して、不当にも京都市教育委員会は上告してきました。全国の学校で日々がんばっている先生方に対して、1審判決にも増して大きな励ましになったことを大切にして、上告審でも勝ち抜けるようご支援をお願いします。

藤井豊
弁護士:Fujii Yutaka

京都新聞子会社の「雇い止め」は無効!

2009年4月20日、京都地方裁判所は、京都新聞社の子会社である京都新聞COM社に対して、同社から契約更新を拒否(雇い止め)されたAさん、Bさんに、賃金を仮払いするよう命じる決定を出しました。

AさんBさんは、当初、京都新聞の別の子会社に在籍していましたが、2006年4月京都新聞の分社化政策によって設立されたCOM社に移籍しました。そして、その際京都新聞社が導入した契約更新の上限を3年とする就業規則を理由に、今回雇い止め通知を受けました。

しかし、Aさんの通算雇用期間は7年11ヶ月、Bさんも4年10ヶ月、この間、記事体広告の作成や京都新聞社主催のイベント・コンクール運営など正社員と全く同じ業務に従事し、形だけの契約更新手続を繰り返してきました。

決定は、このような諸事情を正面から受け止め、Aさん、Bさんには雇用継続に対する正当な期待があったものと言うべきである、と述べました。

今回の決定は、労働者を使い捨てる有期雇用の問題に対して、一石を投じるものです。

今後、本裁判が続きます。あらゆる手段を尽くして勝利し、お二人の職場復帰を勝ち取るために弁護団も全力を挙げます。

浅野則明
弁護士:Asano Noriaki

最近の労働事件2題

「百年に一度の不況」と言われる昨今、労働者の首切りが横行していますが、その中で2つの事件を紹介します。

ひとつは、派遣労働者が、派遣先からの労働者派遣契約を打ち切られたことを理由に、未だ契約期間中(残期間9か月)であるにもかかわらず、派遣元から一方的に中途解雇された事件です。有期雇用契約の場合には、やむことを得ない理由がなければ契約期間中に解雇することができません。仮処分を申請し、ほぼ契約期間中の賃金を支払わせる内容の勝利的和解で解決しました。

もうひとつは、定年退職後の再雇用につき、その規定があるにもかかわらず、人事考課が低いことを理由に再雇用を拒否された事件です。高年齢者雇用安定法が規定する雇用継続義務の趣旨に鑑みると、労働者が希望すれば、特段に問題のない限り再雇用されるべきであり、単に人事考課が低いという抽象的な理由だけで再雇用を拒否することは許されないものです。会社との交渉により、再雇用拒否を撤回させて解決しました。

糸瀬美保
弁護士:Itose Miho

法律による男女差別を許さない!

男性と女性の外貌醜状に対して、12級と7級の大きな差別を設けた労災保険法障害等級表の憲法違反を争う訴訟が佳境に入ろうとしています。この差別の背景にあるのは、男性社会が作り上げた「女は顔」という価値観です。そして、国は、この「社会通念」を理由に差別を正当化しています。しかし、外見に対する男性自身や社会の意識もずいぶん変わりました。なのに、この障害等級表の前身が1936年に制定されて半世紀、いまだ手つかずのまま……。しかし、今年は、「女性差別撤廃条約」が国連で採択されて30年目になります(日本の批准は1985年)。

確かに、条約や法律が出来ても女性への差別はなかなかなくなりません。もともと、「女の労働は家計を補助するもの」として、パートや派遣、契約社員といった非正規労働者の多くは女性でした。女性は昔からワーキングプアだったのですが、それが「派遣村」のように目に見えなかったのは、家庭の中に隠されていたからです。相変わらず手持ち事件の多くを離婚事件が占めていますが、若者の労働相談も増えてきました。自力では、不安定で「貧困」な生活から抜け出ることに大きな困難を抱えた女性、そして、同様の立場にある労働者や若者の力になりたいと願っています。

渡辺輝人
弁護士:Watanabe Teruhito

最近の労働事件雑感

最近の不景気に伴い、解雇・雇い止め、賃金請求など労働事件が増えています。

解雇や雇い止めの事案は、不景気を理由とした首切りや、組合差別、高齢者再雇用制度で雇用されている方の期間途中での「雇い止め」など、実に多様です。藤井弁護士が報告している京都新聞の子会社の事案など、成果も出ていますが、全体として解決までの時間が現場で求められるスピードよりも長く、歯がゆい思いをしています。裁判にかかる時間を短縮するためには、裁判官の大幅な増員が必要だと感じています。

賃金請求については、残業代や深夜勤務手当を計算するパソコンのファイル(エクセルのシート)を自作しました。事件を重ねる毎に精度が上がっており、それなりに信頼できるものになっていると思っています。このエクセルシートを使って事件を解決した例も出ています。今後も使いやすく改良して、未払賃金の請求を嵐のように行うのが目標です。行動を起こせば、 賃金未払も減っていくかも、と思いつつ……。

若い世代の人達が低賃金で長時間酷使されています。また、酷いパワハラにさらされる場合もあります。一方、立ち上がるためのハードルはあまりにも高いのが現実です。成果を出すことで後に続く人を勇気づけるとともに、出来るだけ早く、的確な権利救済が出来るように微力を尽くします。

吉本晴樹
弁護士:Yoshimoto Haruki

不当降格を晴らそうとした従業員に会社が反訴 ―労働者いじめに立ち向かう

舞鶴で起きた不当降格事件に地元の弁護士と共同で取り組んでいます。

原告は舞鶴市内の家具製造会社で働いている男性で、その真面目な仕事ぶりで 25 歳の時に係長に抜擢され、以降10年近く係長を務めてきました。しかし、この会社には、超勤割増手当を支払わない、従業員の有給休暇取得を認めない、就業規則を見せないなどの数多くの問題があったようです。労働基準法が定める最低限のルールすら無視されていることに疑問を感じた男性が、職場のなかまに労働組合をつくろうと呼びかけたところ、これを嫌がった会社は、男性を係長から平社員に降格させました。男性が、降格処分を取り消して係長に復職させるよう求める調停を申し立てたところ、会社側は、降格は男性のサボタージュが原因などと男性の身に覚えのない主張をしてきました。やむなく男性が訴訟を起こしたところ、逆に会社側は男性に損害賠償を請求する反訴を出して報復してきました。

一方的な降格処分で組合づくりの動きを潰し、降格の取消しの求めに対して反訴で報復する会社のやり方は「労働者いじめ」というほかありません。訴訟は、現在、地元の一般労働組合の全面的なバックアップで進めています。労働基準法で定められている当然の権利が守られる職場を実現するためにも、まずはこの訴訟で係長への復職を勝ち取らなければならないと決意を新たにしているところです。

「京都第一」2009年夏号