京都第一

新春対談 医師と弁護士の連携で府政をチェンジ

新春対談 医師と弁護士の連携で府政をチェンジ
~門 祐輔 京都府知事予定候補を迎えて~

京都府知事予定候補との座談会
京都民医連第二中央病院院長
門 祐輔
Mon Yusuke
弁護士
森川 明
Morikawa Akira
弁護士
糸瀬 美保
Itose Miho
森川糸瀬 明けましておめでとうございます。
 おめでとうございます。

現場の最前線に足を運ぶ

糸瀬 医療の最前線で奮闘してこられた門先生が京都府知事への立候補を決意されたのはなぜですか?
 世論調査ではいつも年金など社会保障分野に高い関心が示されます。私も、どうしようもない状況にある医療や介護の領域を何とかしないといけない、という思いをずっともっていたからです。
糸瀬 立候補表明後は、どのような活動をされているのでしょうか?
 できる限り現場に行き、現地を見て、住民の方々と話して要望をお聞きする活動を繰り返してきました。とくに地域で連携して医療に取り組む上で医療・介護分野の状況や医療関係者の問題意識が気になっていたので、多くの病院の方々とも懇談してきました。

私は、京都市内で仕事をして12年になりますが、その前の6年間は綾部におりましたので、そのあたりの医療事情はある程度わかっているつもりでしたが、実際に現場で聞くと、中丹や丹後といった北部や木津川など南部の医師不足、看護師、介護士不足は深刻です。私の病院も医師不足ですが、とりわけ中小病院が一番大変になっています。

糸瀬 北部は弁護士不足もあり、吉本晴樹弁護士が北部に行く決意のもと当事務所で経験を積んでいるところです。

門 祐輔(もんゆうすけ)氏 54歳。京都大学医学部卒業。リハビリ、神経内科の専門医。信和会京都民医連第二中央病院院長、日本リハビリテーション医学会専門医・指導責任者。京都民医連平和塾の塾長、京都反核医師の会世話人。二男一女。趣味はマラソン。

「ワンストップ」で連携する時代

森川 門先生は、京都大学在学中に水俣病問題に取り組まれましたね。当事務所では水俣病とともに、それ以前から森永ヒ素ミルク事件にも取り組んできました。村山晃弁護士は今でも「ひかり協会(森永ヒ素ミルク事件被害者の恒久救済を図るために設立された団体)」の活動を続けています。門先生の病院の倫理委員会には浅野則明弁護士もかかわっていますが、当事務所や弁護士への期待やご意見があればお聞かせください。
 例えば、当病院ではホームレスの問題に意識して取り組んでいますが、医療の立場からの支援は助かると言われていますし、非常に大事だと思います。こういった活動はボランティアが基本ですが、個人ではなかなか難しく、病院があるからできることです。法律問題も同じだと思いますので、こうした社会的な問題に対して専門的な立場から支援していくという活動をぜひいっしょにできればと思いますね。
糸瀬 そういった社会保障の分野では、藤井豊弁護士と吉本弁護士が障害者自立支援法「応益負担」違憲訴訟に取り組んでいますし、藤井弁護士は、生活保護老齢母子加算廃止違憲訴訟にも取り組んでいます。
 私が診ている患者さんも自立支援法の訴訟の原告の1人です。
森川 私も少し前は学生無年金訴訟でずっと国相手にやってきました。最近は「ワンストップ・サービス」という言葉があるように、医師や弁護士が単独ではなく、連携しながら貧困等の問題にあたっていくことが必要ですね。

雇用問題も自治体が変わってこそ

糸瀬 雇用環境の悪化が貧困につながり社会問題化しています。
森川明 弁護士 森川 当事務所では昭和50年代の初め頃に私や村山弁護士、村井豊明弁護士が、いくつかの過労死事件にかかわりました。それらを長期間たたかったことで、国際的にも「カローシ」という言葉が定着していきました。

裁判で勝って認定基準等を変え、職場の条件をよくしてはいけますが、一方でもっと大きなところで雇用そのものが破壊されている問題があります。これを変えていくことは、弁護士の立場では限界があります。やはり政治が変わって自治体が変わって、自治体の立場で改良していくことが求められていると思うんですよ。

 リーマンショックや円高などで、京都では金融支援策も2004年以降、すべて金融機関に丸投げです。それが困った状態を作りだしている。府が責任をもって金融政策をきちんとし、今ある雇用の場をそう簡単につぶさせないことが大事だと思います。
森川 京都府の問題では、大河原壽貴弁護士ほか4名の弁護士がジヤトコの派遣切り事件の弁護団を務めています。労働局は一応、この派遣切りはダメだと行政指導しましたが、ジヤトコは従わないんですね。

3月に工場を閉鎖する綾部のトステムでは、370人くらいの労働者が職を失う可能性が高く、労働組合が結成されました。当事務所も全面的に支援していきます。府も相当お金をかけて舞鶴にクレーンも作ったし、府営工業団地ですので地元行政も税制優遇措置をとっています。にもかかわらず、自分の会社の都合で中国の大連に拠点を移し、いま働いている労働者や家族の生活は考えない、地域の経済がどうなろうと責任は取らない、という問題が出てきています。

府として雇用問題や経済問題について、今までのやり方で地域の経済が守れるのか、という問題だと思うのです。

 大病院だけで地域を守れるのかという問題と同じで、大病院だけでなく中小の病院がそれぞれの役割をきちんと果たしてこそ地域は守られるのです。だから私は中小企業振興基本条例が非常に大事だと思います。大企業の果たす役割も明確にする。撤退するのであれば地域経済に必要な責任を果たさないといけない。そこをきちんと明記すれば「勝手なことは法律に基づいてもできません。必要な責任をとってください」とハッキリ言えます。これは法律家の方々の意見もいただきながら、ぜひ考えていきたい。地域振興条例だとか公契約条例の制定にも法律家の協力をお願いしたいと思っています。

京都民医連の平和塾

糸瀬美保 弁護士 糸瀬 当事務所では毎年、憲法集会を開催するなど憲法・平和を守る活動に取り組んでいます。先生は反核・平和問題にも熱心と聞いていますが……。
 京都民医連で「平和塾」という平和問題を中心的に担える若手を育てる活動を一昨年から行っています。講演やディスカッションなどのほか、韓国にも行ってナヌムの家とか西大門(ソデムン)刑務所などを訪ね、友好協定を結んでいる病院と交流もしています。

変わる実感を得られるまで

糸瀬 森川弁護士も98年、02年の府知事選で、弁護士と候補者の二足のわらじを履いてたたかいました。
森川 法廷では証拠の有無や論理的に筋が通っているかどうかで勝負が決まりますが、政治の世界ではなかなかそうはなりません。言っていることが正しかったとしても、それが府市民に理解されて投票行動にならないと勝利まで結びつかない。どう府市民のなかに浸透していくのか、十分検討していきたいところですね。
 あちこちで、なんとかしてほしい、なんとかしたいという思いや期待が非常に伝わってきます。変わることを実感していただくところまでが私の責任だと思っていますので、みなさんのご協力を得ながらぜひ勝利したいと思います。
森川糸瀬 当事務所もそのために力を尽くします。がんばってください。ありがとうございました。
「京都第一」2010年新春号