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若者たちが日本国憲法を手にして生きるとき 10・22憲法を守る狂言と講演の集い

若者たちが日本国憲法を手にして生きるとき 10・22憲法を守る狂言と講演の集い

10月下旬。まだ強い北風は吹かず、穏やかな夜でした。約120人に参加頂き、京都第一法律事務所「憲法を守る狂言と講演の集い」を開催しました。

私たちは毎年秋に、憲法を考える集いを開いています。本に書いてある知識ではなく「私たちの日常の中で現実の前で、憲法を知り考えてほしい」そのように願っています。

さて当夜。今年の文化企画は、茂山一門による狂言「長光(ながみつ)」。

長光(ながみつ)遠国から京の都での訴訟にやってきた田舎者(でんじゃもの)は、寺町で土産を買おうと店を回ります。すると「スッパ」(盗み・詐欺などをする者)が近づいてきて、田舎者の刀(備前長光)を盗ろうとします。両者がもめているところに目代(もくだい)が仲裁に入って双方から話を聞きどちらが本当の持ち主か見極めようとしますが、田舎者が目代の問いに答える様をスッパが盗み聞きし、オウム返しに目代に伝えるため、真の持ち主が目代にもわかりません。そこで田舎者は一計を案じ、小声で刀の長さを目代に伝えます。聞きそびれたスッパは刀の長さを答えられぬまま、刀を盗って逃げてしまいます。「やるまいぞ、やるまいぞ」と田舎者と目代が追いかけていき…。コミカルなかけあいに笑いの声。狂言を目当てにきてくれた人も、結構いらっしゃったのかもしれません。

「笑い」のあと壇に立ったのは、浅尾大輔さん(作家・雑誌「ロスジェネ」編集長)。今回のメインテーマ「若者たちが日本国憲法を手にして生きるとき」は、その名の通り、ひどい労働環境にあえぐ若者たちと、これに手をさしのべる労働運動、浅尾さん自身の迫真の体験に迫るものです。

講演する浅尾大輔さん語りのはじまりはとつとつと。決して流暢ではなくて、初めは少しステージが広すぎるように感じてしまいました。でも、誠実な人柄がにじみ出る語り口。非正規で働く労働者、雇い止め・派遣切りで路頭に放り出された人たちの状況を綴ります。「労組(労働組合)」など知らなかった「ハケン」の若者たちが、仲間と連絡を取り、ユニオンを作り、会社側と団交をもったこと。浅尾さん自身が青年ユニオンに加わり、運動を支えてきたこと。そして、ある団体交渉の様子が上映されました。何とか泣くのをこらえて自分の気持ちを話す若い女性が、労働者側当事者でしょう。それをかばい鋭く言葉を投げかけるユニオンの人たち。ほんの数分の映像でしたが、これはまるで戦場だ。この若者たちは、そこに出なければ自分を守ることすらできない。一体いつからこんなことになったのでしょうか。

「少し前の話ですが…」浅尾さんが続けます。「約10人の非正規の若者が、会社側と交渉することになった。僕はその支援をしました」その声は確信に裏打ちされて熱を帯び、もうステージが広すぎるなどと感じる余地はありません。

「僕は言った。『会社への申入書に代表として、この中の誰か1人の名前を書かなければいけない。誰にしますか?』彼らは労働争議など知らない、ごく普通の青年たちだそうです。当然しんとなります。この言い方は失敗したかな、と思いました。でも彼らは、名前を書く1人に負担をかけることはできないからと、全員の名前を小さな署名欄に書き込んでくれたんです!」

講演を聞きながら、自ずと拳を握りしめていました。これは、彼らが権利を手にして立ち上がる瞬間なのです。

憲法を学び、権利を行使し、仲間をつくり、たたかうこと。知っていると思っていたけれども、もう一度教えられました。本物の言葉を聞かされて、改めて。当夜その場にいた全員が、きっとそう思ってくれたことでしょう。

外に出ると涼しい風が気持ちよく、参加した人たちは少し上を向いて家路につくようでした。

「京都第一」2010年新春号