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民事法律扶助を利用しましょう

民事法律扶助を利用しましょう

浅野 則明弁護士 浅野 則明

民事法律扶助法ができました

2000年4月に「民事法律扶助法」という法律が成立し、この10月から施行されることになりました。この民事法律扶助法というものは、どんな法律で、国民の皆さんがどのように利用することができるのかについて、分かりやすく説明したいと思います。

法律扶助が必要な理由

日本国憲法32条は「何人も、裁判所において裁判を受ける権利を奪われない」と国民の裁判を受ける権利を高らかに謳い、これを保障しています。しかし、現実にはどうでしょうか。裁判を受けること自体は、誰でも自分でできます。でも、いざ裁判をするとなると、自分だけの力でやる自信のある人はどれだけいるでしょうか。今まで裁判なんて関係なかった、裁判所に行ったこともなかったという人が独力で自信をもって裁判をすることができるでしょうか。

相手方には弁護士が就いていることも十分予想されます。民事裁判は、当事者間の紛争をその主張と証拠に基づいて、裁判官が判断する制度です。その上、法律専門用語がたくさん出てきて、素人には分からないこともよくあります(本当は、素人でも分かりやすい裁判でないといけないのですが)。だから、裁判に勝つためには、専門家の弁護士の力を借りようということになります。

裁判を弁護士に依頼するとなると、弁護士費用が必要となりますね。では、弁護士費用さえも工面できない人はどうすればよいのでしょうか。経済的な資力が乏しいために弁護士に依頼することができず、その結果、本来守られるべき権利が守られないということになっては、憲法が保障した裁判を受ける権利も絵に描いた餅に等しくなってしまいます。だから、経済的な資力に乏しい人でも、民事紛争等において自分の権利を実現することができるようにするための援助制度が必要とされてきたのです。

これまでも法律扶助はあった

経済的資力に乏しく法的手続ができない人のために弁護士費用などを立て替える法律扶助事業は、実は昭和27年に日本弁護士連合会(日弁連)が中心となって設立した財団法人法律扶助協会が行ってきました。これは、経済的な理由で弁護士費用が捻出できない人が法律扶助協会(各支部)に扶助の申し込みを行うと、法律扶助協会は、

(1)資力要件(申込者とその配偶者の手取り月収(賞与を含む)の合計が、

  • 単身者20万円以下、
  • 2人家族27万6000円以下、
  • 3人家族29万9000円以下、
  • 4人家族32万8000円以下、
  • 以下1人増につき3万円を加算、

(2)勝訴の見込みについて、審査委員会で審査を行い、その結果、前記の要件を満たす場合には、弁護士費用や訴訟費用等を立て替えてくれます。

弁護士費用自体が弁護士会の報酬規定よりもかなり安価になっており、しかもその償還も原則として毎月1万円程度の返済を行うことでよいので、利用する人にとってはかなり助かる制度です。

民事法律扶助だけではなく、刑事被疑者弁護援助や少年保護事件付添人扶助などの制度もあります。前者は、国選弁護がつかない起訴前の段階におけるもので、弁護人による援助が必要と思われる事案について扶助され、この場合は費用の償還が免除されています。後者は、少年事件の場合は付添人(刑事事件の弁護人に相当する)がつくケースがまだまだ低いことから、積極的に扶助されています。

民事法律扶助法の意義と内容

これまで弁護士、弁護士会および日弁連が中心となって財団法人法律扶助協会として運営されてきた法律扶助に対しても、国からある程度補助金が交付されてきました。しかし、近年司法改革の議論がなされる中で、国民に対するリーガルサービスの充実が求められ、特に民事法律扶助制度の重要性が指摘されるようになり、その抜本的な充実強化が要望されるようになりました。このような声を受けて民事法律扶助法は制定されるに至り、今年10月1日から施行される運びとなりました。

因みに、平成10年度の法律扶助協会への国庫補助金は約4億円でしたが、平成12年の民事法律扶助法の施行に伴い、その事業遂行に必要な事務関係経費として21億8000万円の予算措置がなされています。

民事法律扶助法の制定施行により、これまでの民事法律扶助に法的な根拠が与えられ、民事法律扶助事業が国の責務であることが明確になりました。そして、国、地方公共団体、日弁連および各地の弁護士会ならびに個々の弁護士が民事法律扶助を積極的に発展させていくべきことも明らかにされました。実際の法律扶助事業の運営は財団法人法律扶助協会が行うことになります。

今回の民事法律扶助による援助は、(1)裁判援助、(2)書類作成援助、(3)相談援助が大きな内容となっています。(1)は従前からあるものですが、(2)は司法書士業務も援助対象となりました。(3)も新しく設けられたもので、これに応じて「相談登録弁護士制度」が新設されました。これは、予め登録されている弁護士(京都第一法律事務所は全弁護士が登録しています)の事務所で無料法律相談を受けられる制度です。ただ、収入の少ない人を対象としているため、前記のような収入基準があります。

相談の結果、調停や訴訟等の手続が必要な場合は、法律扶助(裁判援助)の申込みを行い、審査がパスすれば、弁護士費用等の立替を受けることができることになります。従って、民事事件(自己破産や債務整理も含みます)の場合には、無料法律相談→裁判等扶助(弁護士費用等立替)という制度を利用することが可能になりました。

今後の課題としては

今回の民事法律扶助法は、援助対象が民事事件に限定されています。そのため、(1)刑事事件、(2)少年保護事件、(3)行政不服審査手続などが対象から外れています。もちろん、(1)や(2)は、従前から法律扶助協会が援助してきましたから、引き続き利用することは可能です。また、利用可能者が低所得者層に限定されており、中間所得層に及んでいません。さらに、援助は個人に限られ、中小零細企業などの法人には適用されません。

このような課題があるとしても、民事法律扶助事業に法的な根拠を得られた意義は大きいものです。

財政的な裏付けも飛躍的に拡大され、欧米のようなリーガル・エイドが実現されることも夢ではありません。そのためには、国民の皆さんが大いに法律扶助制度を利用し、私たち弁護士も法律扶助事業の拡大に寄与していくことが求められていると思います。

「まきえや」2000年秋号