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施行後半年を迎えた個人再生手続

施行後半年を迎えた個人再生手続

~生活再建に成功した皿利さんの例~
飯田 昭弁護士 飯田 昭

個人再生手続施行後半年

本年4月より、民事再生法の特則として個人再生手続が施行され、半年が経過しました。

個人再生手続とは、今まで、多重債務からの「脱出」の方法として、自己破産か、任意整理か、調停かしか方法がなかったところが、新しい生活再建メニューとして、その活用が期待されている手続です(内容の概略は2001年4月号を参照してください)。

今、リストラ、不況の中で、国民の150万から200万人が「破産寸前」の状態であると言われています。自己破産申立件数も2000年には14万件に達しました。

個人再生手続は、まだまだ使いにくい点、改善すべき点がありますが、それでも9月21日現在で京都地裁の申立件数は100件(給与所得者等再生83件、小規模個人再生17件)に達しました。

皿利さんの生活再建

ここでは、給与所得者等再生手続を利用し、住宅ローンの特則手続を併用した皿利家持さん(35歳仮名)のケースをご紹介しましょう。

皿利さんは、文字通りのサラリーマンで、3年前に念願のマイホームを3000万円で購入し、月々8万円のローンを支払っています。家族は妻と7歳、4歳、1歳の小さな子供3人。奥さんは3人目の子供が生まれる前は、パートをしていたのですが、今は子供に手がかかるため、働きに出ることができません。今から考えると、自宅の購入は、奥さんにパート収入があればいいのですが、3人目の子供が生まれるという事態は予想してなかったようです。しかも、不況で残業も無くなり、収入は月30万円を切ってしまいました。「ピンチ」の時手を出した無人貸出機のサラ金負債が、300万円までふくれあがってしまい、買物のカードローン、クレジットを含めると住宅ローン以外の負債が10社、500万円にもなっています。ここ1年は住宅ローンを含めると月18万返済をしていますが、「借りて返して」いるのですから、サラ金、クレジットの負債は膨らむ一方です。

しかし、子供も地域の小学校、保育園と馴染んでおり、せっかく購入したマイホームを手放すことだけは何とか避けたいとの強い希望です。

以前の相談

(弁護士)「自己破産となると、マイホームを手放さなければなりません」
(相談者)「そしたら、任意整理か調停をお願いします」
…皿利さんの家計の実態からすると、銀行ローンをこのまま支払うとすると、返済に廻せる余裕資金はいくらがんばっても月4万しかありません。
「そしたら、毎月4万で125回分割で、何とかならないでしょうか」
「無理です。任意整理でも調停でも、3年程度が原則で、最長5年を超える分割返済については、業者は同意してくれません」

個人再生手続の利用

(弁護士)「個人再生手続が利用できます。給料は安定していますから、給与所得者等再生手続が利用できますので、債権者の同意はいりません。【注1】

また、あわせて、住宅ローンの支払についても、特則手続を利用すれば、毎月の支払額を軽減することができます。ええと。あなたの場合、「可処分所得算出シート」に基づき計算すると可処分所得の2年分が120万円になりますので、これを3年間で返済すればいいことになります。毎月3万4300円を三年間で返済するということでどうでしょう。住宅ローンについても、70歳までかつ10年までであれば、繰り延べできますので、銀行に計算してもらわないと正確にはわかりませんが、毎月の返済額を6万5000円程度にすることが可能です」

「それは助かります。是非お願いします。」【注2】

ということで、第一号事件はスタートしました。

  • 3月 受任通知とともに、各債権者に利息制限法で引き直した表の送付を求める。
    住宅ローンの銀行には、別途「住宅ローン特則手続」の利用をすることを予め連絡し、繰り延べした場合の計算をしてもらう。
  • 4月 資料が揃ったので、給与所得者等再生手続を裁判所に申立。
    本人には、支払を3月以降ストップしたことにより、毎月可能な額を積立ててもらう。
  • 5月 裁判所の審尋。再生手続開始決定
    債権調査手続。
  • 7月 再生計画案の提出
  • 8月 再生計画案の認可
  • 9月 認可された再生計画に基づいた支払開始

このような経過で、皿利持家さんは、マイホームを維持したまま、生活の再建をすることができました。

【注1】

個人再生手続のうち、給与所得者(歩合給でもよいが年収にして二割程度以内の変動)については、給与所得者等再生手続が利用できます。この場合返済額は「可処分所得算出シート」【別表参照】により、自動的に決まります。これに対し、自営業者等の場合には、小規模個人再生手続の利用になり、この場合には債権者ないし債権額の半数以上の不同意があれば、認可されません。

【注2】

個人再生手続については、本人申立も可能ですが、弁護士が代理人についていない場合には、裁判所が個人再生委員(原則として弁護士)を選任します。この場合には本来の予納金(12,540円)とは別途に個人再生委員の予納金として、30万円を申立時に納めることが求められます。従って、弁護士に依頼することが望ましいと思います。弁護士費用は30万を基本に事案により増額されることがありますが、手続期間中(6カ月まで)の分割が可能です。

可処分所得額算出シート
「まきえや」2001年秋号