まきえや

住民運動の大きな勝利!元市長に4億7000万円の支払いを命ずる判決

住民運動の大きな勝利!元市長に4億7000万円の支払いを命ずる判決

ポンポン山訴訟で住民勝訴の判決出る

京都地方裁判所(八木良一裁判長)は本年1月31日、京都市民3800人余りが提訴していたポンポン山訴訟で、元市長に金約4億7000万円を京都市へ賠償することを命じる判決を言渡した。

思い起こせば、高額での買収議案が可決された市議会の最終盤、今は亡き阿美弘永さんが「一時的に一部の人を騙すことができても、大勢の者を長期にわたり騙し続けることはできない」「お覚悟めされ」と締めくくられた、その怒りから出発し、その後澤井清氏が提起された「天網恢恢疎にして漏らさず」をスローガンとして、長期にわたり粘り強く取り組んできた、住民の運動の大きな勝利である。

判決内容

判決は、跡地の適正価格は高くても金21億円までと認定し、首長の裁量の範囲をその適正価格の2倍までとした上で、これを超える金額の支出が違法となり、元市長はこの額を市に支払え、とした。
判決の意義は次のとおりである。

  1. 議会の議決があっても首長の責任を免責することになるのではないと明言した点は、法を改悪して、議会の議決があれば住民訴訟を起こせないようにしようとする動きがある現在、これを牽制する大きな意味がある。
  2. 確定した決定があり、これによって首長は公金の支出を義務づけられるのであるから、違法とならないと被告側が主張していた点についても退けた。判決は、金額が高すぎたのであるから、首長としては決定に対し異議を申立てる義務を負っていたのであり、これをしなかったのは、裁量の範囲を逸脱し、権限の濫用で、違法行為となると判示した。この点は初めての判例である。
  3. 市の不動産取得に関する規則によれば、買収金額について不動産評価委員会に諮らなけらばならなかった。この点について市側は調停で決まる場合は例外に該ると主張したが、判決はこのようなやり方は内部手続にも明らかに違反すると断じた。各自治体で同じような内部規則がある筈である。
  4. 適正価格の2倍までを裁量の範囲の限界とした点は、一応良い方の判例といえるであろうか。しかし、ともかく金額が何十億円という高額であること(2万円のものを4万円で買うのとはわけが違う)、手続的に巧妙で悪質であることなどを考慮すれば、裁量の範囲はもっと厳しく判断されるべきであった(尤も、違法な支出とならなくとも、金21億を超える大金が少なくとも無駄な支出であったということが明白となり、この点は住民の運動にとっては重要な意味を持つ)。開発業者にたいする請求を棄却したのも、不十分である。
  5. 判決は、自治体が用地を買収するについては、(1)手続、とりわけ金額の決定過程に透明性を求め、(2)買収する目的(用地利用)については具体的で明確になっていることが必要とし(住民の跡地利用についての合意が成熟することも)、(3)なにより議会や市民に対し説明責任を十分に果たすことを求めている。

この点では、全国へ、無駄な公共工事や税金の無駄使いに対し厳しく警鐘を鳴らすものとなっている。

2001.1.31 勝訴判決後の報告集会

住民の運動の状況

京都市が本件ゴルフ場の建設を不許可とした時、住民はこれで大文字山に続き市内でゴルフ場の息の根を完全に止めたと喜び合った。その後あれよあれよという間に京都市の跡地買取が決まってしまった。たしかに住民はゴルフ場建設に反対する運動を展開している際は、京都市に対し用地を買収することを要求の一つとして掲げてはいた。しかし本件買収はあまりに不明朗なことが多く、これを先例として定着させてはならないという共通の思いがあった。

住民組織は「ゴルフ場建設に反対する会」から「買収疑惑を追及する会」へと続き、訴訟を進めるなかで、多数の住民が手分けして調査を続けた。この結果、開発業者が市に提出した事業計画概要書では取得価格は金21億円と記載されていること、開発業者の地権者との売買についての国土法に基づき市が発行した不勧告通知書では、最も高いもので一平方メートル当り金1515円であること(これだと全体で約金20億円)、市依頼の鑑定人は、あるゴルフ場開発会社の役員であり、この鑑定書で引用された取引事例はいずれも本件のごとき山林の取引事例の参考とすべきでないものであること、簡易裁判所の決定の案文は市側が作成し、添付図面は開発業者が提出するなど、いわば両者の合作であること、等々が次々と明らかになっていった。このようにして、疑惑が解明されるごとに、住民は怒りを新たにし、勝訴への自信を深めていった。

今後の課題

  • (1) 金の流れを解明する必要がある。開発業者の背後には自民党の有力議員の金脈企業がいた。市民の血税が最終的にここを通じ自民党議員に流れた可能性がある。
  • (2) 跡地は森林公園となった。住民は「疑惑を追及する会」と併行して「自然を守る会」をも結成し運動を拡大している。住民参加で、自然と触れ合う利用方法を具体化するのはこれからである。
  • (3) 双方控訴し高裁で仕切り直しとなった。違法となる支出の範囲を拡大し、開発業者の責任を追及するため、住民は決意を新たにしている。
「まきえや」2001年春号