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市民を守るはずの警察が…

[事件報告 5]

市民を守るはずの警察が…

藤澤 眞美弁護士 藤澤 眞美

市民を守るはずの警察が、そんなひどいことをするなんて!と思わず叫びたくなる事件が起こりました。警察官7、8人が、半身麻痺している障害者に対し、首を締める等の暴行を加えた上、犯罪者でもないのに手錠や保護バンドまでして身体を拘束したという事件です。

Aさんは、平成10年1月に交通事故に遭い、その後遺症として、右下肢の機能全廃、右上肢の肩、肘、手関節および全指機能の障害が残り、身体障害3級の認定を受けていました。そして、京都府公安委員会から、身体障害者として、駐車禁止等の除外指定車の認定も受けていました。

「去ね、こら。去ね」と恫喝

平成11年8月31日午後11時50分頃、Aさんは、河原町通に自分の自動車を路上駐車し、駐車禁止等除外指定車であることを示すプレートを運転席のフロントガラスのところに置いて車を離れていましたが、日付の変わった翌9月1日午前2時頃、Aさんが戻ってくると、Aさんの前辺りにパトカーが止まっており、警察官が立っていました。そこで、Aさんがその警察官に対し、「何、俺の車見てんねん」と言うと、その警察官が言い返してきたので、口論となりました。

すると、付近で取り締まりをしていた警察官が7、8人集まってきて、Aさんを取り巻くような状態になりました。その中の一人の若い警察官がAさんと怒鳴り合い、お互いの胸を突き合わせるような恰好になったところ、Aさんの背後にいた警察官が後ろからAさんの右手を押さえつけました。警察官はAさんに対し、「去ね、こら。さっさと去ね」と、とても警察官とは思えない口調で、何回も怒鳴りました。Aさんが警察官らに対し、「俺は身体障害者やし、ちゃんと駐車除外の札も出してるやろ。何見とんねん」と言い返したところ、警察官Aは、また「去ね、こら。去ね」と怒鳴り、後ろからAさんの手を押さえていた警察官らが歩道柵越しにAさんを引きずり倒し、Aさんは歩道上に仰向けに倒れ、起き上がれない状態となってしまいました。

手錠を掛けて、蹴ったり首を締めたり

Aさんの身体がうつ伏せになり、何人かの警察官がAさんの手足を押さえつけていたところ、突然警察官のひとりが「暴れるので、この人を保護します」と言い出し、数人の警察官が一斉にAさんに覆い被さり、後ろ手に手錠をかけてしまいました。そして、なおも、ひとりの警察官は原告の首付近を締めつけて、また別の警察官は頭や左脇腹を数回蹴りつけたのです。

Aさんの友達が、「障害者にそんなひどいこと、しないで」と叫びましたが、警察官らは直ちにやめようとしません。首を締められてAさんの意識がなくなるのに友達が気づき、「救急車をすぐ呼んで。早くして」と叫ぶと、初めて首を締めていた警察官は手を放し、手足を押さえていた警察官も手を放し、手錠も外されました。

骨折と、首には締められた跡まで

Aさんは、救急車で掛かりつけの病院に搬送され、診察を受け治療をしてもらいました。Aさんの受けた傷害は、胸部打撲、頸椎捻挫、右尺骨茎状突起骨折、左手関節捻挫で約3か月の通院加療を要するということでした。

市民に背を向ける不当判決

Aさんは、京都府を相手取り、慰謝料などの損害賠償を求めて提訴していましたが、その判決が、平成14年8月8日に言い渡されました。

判決では、一方で、「手錠や保護バンドの使用は著しく不名誉で屈辱的。使用には慎重でなくてはならない。」として、一部Aさんの言い分を認めましたが、一方、「警察官の一連の行為は泥酔者保護のための手続きであった」という京都府側の言い分を採用し、警察官にやられっぱなしであったAさんについて、「殴りかかるなどの過失があった」と決め付け、大幅な過失相殺をしました。

この意味で判決は不当ですが、警察官の横暴をあからさまにし、その責任を認めた点で意義があったともいえます。今後とも警察が真の意味で国民の守り手となるよう私たちがしっかり監視していかなくてはなりません。

平成十四年八月九日 朝日新聞朝刊
平成十四年八月九日 朝日新聞朝刊
「まきえや」2002年秋号