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許さない!不当リストラ -京都エステート解雇事件-

[事件報告 4]

許さない!不当リストラ -京都エステート解雇事件-

藤澤 眞美弁護士 藤澤 眞美

一通の解雇通知書

「ご承知のとおり、当社は現在多額の累損と借入金を抱え経営困難な状況にあり、これ以上貴殿の雇用を継続することはできませんので、遺憾ながら貴殿を平成13年11月30日をもって解雇と致します。本書をもって通知致します。」

2001年11月15日、染色・仕上げ機械の設計技術者として「京都機械」に35年以上勤めてきた向井さんの下に、一通の解雇通知書が届きました。「おかしい。納得できない。」心の底から湧き上がるような怒りの気持ちが、向井さんを訴訟へと奮い立たせました。

莫大な経常黒字にもかかわらず

「京都機械」は、京都市南区吉祥院にある4万平方メートルの敷地を活用して、染色及び仕上げ加工機械のトップメーカーとして名が通ってきました。1995 年に本社は京都府天田郡美和町に移転しましたが、吉祥院の広大な本社跡地は、20年間大手スーパー「ジャスコ」に貸すことで安定収入を確保するというのが会社の方針でした。実際ジャスコからの賃料収入は年間9億円を超え、会社の決算も1998年度から2000年度までの3年間で5億円の経常黒字決算、 2002年度以降は何と毎年2億4,000万円の経常黒字決算が見込まれているのです。

ところが、会社側は長年の累積赤字と退職金の前倒しによる当期利益の赤字を理由として、なりふり構わぬ合理化を行なってきました。99年には、「賃金体系の変更」「能力給の導入」で、向井さんに対する「評価」は同年代と比較して5万円以上も切り下げられました。労働者の権利を守る立場で活動をしてきた向井さんを退職に追い込むための不当労働行為であることは明らかでした。

営業譲渡にかこつけた首切り・大幅労働条件切り下げ

ついに、2001年6月、会社は、かつてない大リストラを強行してきました。すなわち、(1)同年9月末までに、美和町の機械部門を閉鎖した上、新たに設立する「新京都機械」に営業譲渡する、(2)労働者全員の退職を求める、(3)美和町の工場を「新京都機械」に賃貸し、「京都機械」は「京都エステート」に社名変更した上で、賃貸部門のみとする、(4)退職者の内、労働条件が大幅に悪くなっても、希望する者については「新京都機械」への就職を斡旋するという、まさに営業譲渡の形式にかこつけた全労働者の首切り、大幅労働条件切り下げでした。実際、向井さん以外のすべての労働者は退職し、そのうち半数は、新たに設立された「新京都機械」へと大幅に労働条件を切り下げられて転職したのです。

その中で、向井さんは雇用保障のない「転職届」の提出を断固拒絶し、9月28日には、同一労働条件で「京都エステート(京都機械が社名変更したもの)」へ雇用継続する約束を会社に取りつけました。

そこで、向井さんが例年どおり、会社に対し年末一時金を要求したところ、突然冒頭の解雇通知書が届いたのです。

整理解雇の四要件を満たさない不当解雇

解雇は、使用者の一方的な意思表示によって労働契約を消滅させるもので、労働者にとっては唯一の生活源である賃金を失うことになり、まさに死活問題です。

そこで、民法1条第3項および判例の蓄積により、合理的な理由のない解雇は「解雇権の濫用」として無効とされています。とくに本事件のように会社の経営事情による整理解雇については、多くの裁判例の中で、ア、整理解雇の必要性、イ、整理解雇回避の努力、ウ、人選の合理性、エ、労働者側との協議という4つの要件をあげ、その一つでも欠けると解雇は無効であるとされています。向井さんの場合、会社が高度の経営危機に陥り、企業の維持・存続上、人員整理が必要であるとは到底言えず、アの要件を満たさないのは明らかですし、また他の要件も満たしているとはいえない状況でした。さらに、向井さんは労働者の権利を守る活動を続けて、不当に賃金を下げられ解雇を強要されたのですから、向井さんに対する解雇は不当労働行為ともいえます。

向井さんは、2002年1月15日、京都地方裁判所に訴えを起こしました。裁判はまだ始まったばかりですが、不当なリストラに苦しむ全国の労働者とともに粘り強く闘っていく決意です。

京都エステート 向井さんを守る会結成総会
京都エステート 向井さんを守る会結成総会
「まきえや」2002年春号