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イラク攻撃・有事法制

イラク攻撃・有事法制

飯田 昭弁護士 飯田 昭

世界に広がる反戦のうねり

今回のイラク戦争反対のうねりは、世界的連帯を確実につくりつつあります。地球が1周りする24 時間中に、まず日本を皮切りにアジアを通過し、ヨーロッパ世界をまわり、最後に大西洋を渡って、アメリカ東海岸、西海岸へとウェーブが続きます。まるで、サッカースタジアムの1週ウェーブを見るようです。世界は情報網の発達により一つとなって動けることが可能になったのです。インターナショナルが実現したのです。

もちろんアメリカのイラク攻撃が道理のない侵略であるという重大事態が人々の心に不安を呼び起こし、アメリカの横暴に抗するという気持ちで一致したからです。

アメリカのイラク攻撃が道理のないものであることは、もはや誰の目にも明らかです。イラクに大量破壊兵器が見つからないので、今度は隣のシリアを攻める計画まで立てていたことが明らかとなって、もうこれは許せないというところまで来ています。

イラク攻撃反対デモ
イラク攻撃反対デモ

イラクの現状

米英軍のイラク攻撃は、フセイン政権が崩壊し、米英は勝利を宣言している状態です。しかし、米英のイラク攻撃が道理のない攻撃であったことが今後の国際関係に重大な問題を投げかけています。第一に、国連の決議なしに他国を攻撃したことは、国連憲章違反の違法な攻撃と認定せざるをえず、米英とその支持国、それ以外の国々との間には大きな亀裂が生まれていることです。勝てば官軍、即ち行為の正統性がない単なる暴力であれば、いつか支持を失います。第二に、武力行使がやむを得ず許される場合とは、他国の攻撃が急迫している場合の自衛権行使ですが、米はこれを一挙に拡大解釈し、将来攻撃されることがあるかもしれない場合その相手を今攻撃することまで含むと強弁し、イラク攻撃を自衛権の行使として正当化しました(先制的自衛権)。これは危険な理論です。ある国が他国を攻撃する場合、その論理によりいつでも他国を攻撃することが許されることになるからです。世界は常に戦争状態になるでしょう。

イラクの今後ですが、戦争による破壊と殺戮は罪のない多くの生命を奪い、傷つけ、生活の基盤を破壊し、人々の間に憎悪を植え付けました。大量破壊兵器は全く見つかっていません。民族対立が厳しい状況の中で、単純に民主主義を植え付けることは至難の業です。もともと民主主義を暴力で受け入れさせることは矛盾していますから、米の意向を受け入れる余地は少ないでしょう。これは福音主義(ある価値が正しければその公布はどのような手段を用いても許される主義)の最悪の形態です。

いかなる点からも、今度の米英によるイラク攻撃は解決の困難な課題しかもたらしていません。罪なき人への謝罪や補償なし復興などありえません。私たちは、米英に戦争責任を追及して行かなければならないでしょう。

緊迫する有事法制

政府与党は、有事法制3法案(武力攻撃事態法案、自衛隊法改正法案、安全保障会設置法改正案)をこの5月にも衆議院を通過させようとしています。しかし、これらの法案は、前の国会審議を通じ、国民を戦争に動員する法案であり、また、武力攻撃事態の定義を巡っては、武力攻撃の「おそれ」や「予測」についてどのような事態を指すのか政府答弁は明確にすることができず、欠陥法案であることが明らかにされた法案です。また、国民保護法制については2年をかけて作るという条文をもうけただけで、いわば先送りとなっています。しかし、国民保護とは名ばかりで実際には罰則まで含めた物資の保管義務が規定される予定になっているなど、これまた戦争動員法案であることは明らかです。

ではなぜ急に政府与党は衆議院を通過させようとしているのでしょうか。それは、一刻も早く米軍の海外侵攻に日本を協力させたいという米の要求を受け入れているからです。米軍の狙いはイラク支援と朝鮮半島侵攻でしょう。米は先にも記したとおり先制的自衛権という武力行使正当化理論をもっており、将来、朝鮮半島で軍事的活動を行おうとしていることは間違いありません。実際、イラクと並んで北朝鮮を悪の枢軸と位置づけています。米は朝鮮半島で軍事行動をとり戦争の緊張を高めておき、そこで日本に武力攻撃事態の「おそれ」が発生したとして有事法制を実際に発動させようとしています。そうなると地方自治体や民間業者に物資の確保義務が発生し、また陣地の構築などを行って市民の権利を大きく制約しようとしています。

私たちは、第2次世界大戦で多くの加害と被害とを経験しました。そして日本国憲法が戦争放棄を宣言しました。そのような平和を希求する国として「平和」が国民的シンボルとして国際社会に定着してきました。それを投げ捨て、危険な米軍の海外侵攻に協力するための法案を通しては、再び戦争に巻き込まれてしまいます。

困難な問題であればこそ、人類が知恵を出し合い、議論して解決すべきです。他国から侵攻して武力を用いて特定の政権を倒すようなやり方では到底民主主義など根付きません。武力を用いた以上また武力で攻撃されることがはてしなく続くでしょうから。

今有事法制問題は緊急事態です。どうか廃案までご協力ください。

イラク戦争反対デモ
イラク戦争反対デモ
「まきえや」2003年春号