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大江山中国人強制連行・強制労働事件 京都地裁判決 国と企業の責任を断罪 時効で請求を棄却

[事件報告 5]

大江山中国人強制連行・強制労働事件 京都地裁判決 国と企業の責任を断罪 時効で請求を棄却

村山 晃弁護士 村山 晃

日本の侵略戦争と同じ口実のアメリカのイラク戦争

アメリカは、「イラクの人たちを圧制から救う」という口実で、戦争を始めました。どこかで聞いたことのある言葉です。そうです、日本が、アジア諸国に侵略戦争を展開したとき、ヨーロッパの国々の圧制からアジアの人々を救うというのが、日本の戦争の口実でした。私は、かって戦後補償問題の調査でインドネシアを訪問しました。ここでは、日本軍がやってきた時、数百年続いたオランダの植民地支配から解放されるというので、多くの人々が一旦は、日本軍を歓迎したのです。しかし、その後、オランダの支配より厳しい日本の圧制が始まりました。多くの慰安婦の人たちが生まれ、多くの人たちが、日本の戦闘員として戦争に駆り立てられ、また遠くタイ・マレーシアに強制連行され、強制労働を強いられました。

ところで、日本の憲法は、このように「正義」を口実として侵略戦争が始まることから「国際紛争を解決する手段としての戦争」を「放棄」したのです。戦争は、それが展開される地で多くの物が破壊され、自然が破壊され、そして罪の無い人々が殺されます。イラクの、物や自然を破壊し、人々を殺戮する権利が、どうしてはるか離れたアメリカにあるというのでしょう。イラクの人々は、アメリカに何をしたというのでしょう。しかもアメリカは、そんな戦争を中東全域に、いや世界全域に広げようとしているのです。

請求され続けている日本の戦後補償

日本が半世紀前に引き起こした無法な戦争は、アジアの人たちに今なお消えることのない深刻な被害を及ぼしました。ところが戦後、日本は、こうした被害を与えた人たちへ、補償を全くしてこなかったのです。被害者が正当な被害回復を求めて、次々立ち上がりました。この京都でも、戦争中、はるか中国から、京都大江山の日本冶金という会社まで強制連行され、そこで強制労働させられた中国人の人たち6人が、国と企業に謝罪と補償を求めて、裁判に立ち上がったのです。それが1998年のことでした。

裁判では、国や企業は、「年数が経ちすぎているから時効になっている」として、請求棄却を求めました。また、国は、かっての明治憲法下では、国は責任を負わなくても良い制度になっていた(「国家無答責の法理」と言います)として責任逃れをしています。そして、残念なことに、これまでの裁判は、時効や無答責の法理が使われ、ほとんどが負けているのです。

「時効」というのは、残酷な制度です。しかし、裁判ができたのに、いたずらに日にちが過ぎた人たちの場合にはやむをえないのですが、裁判を起こすことができない人たちが、「時間が経った」というだけで、何の補償も受けられないというのは、どう考えてもおかしな話です。

中国と日本の国交回復がなされたのは、ようやく1972年になってからでした。それからようやく日本と交流が始まったのです。また、強制連行された人たちは中国の奥深い農村の方々で、そうした日本との関係改善などについてのニュースも満足に届かないところに暮らしていたのです。とても裁判など起こせない状態がずっと続いたのです。

京都の大江山判決の積極的意義と全面解決をめざす闘い

6人の中国人の強制連行・強制労働についての判決が、今年1月16日、京都地方裁判所で下されました。結果は、「時効」による請求棄却でした。

しかし、注目すべき点がいくつかあります。

一つは、非人道的な強制連行と過酷な強制労働の事実を、きっちりと認めたことです。強制連行は、国の政策として展開され、軍隊まで動員して強制的に拉致して日本につれてきたのです。そして、企業では、非人道的な待遇で、過酷な肉体労働を強要してきたのです。

二つは、こうした行為が、企業と国の不法行為であること、したがって、企業と国は、補償する責任のあることを認めたことです。特に、国に対して法的な責任を認めたことは、これまでの裁判ではなかった画期的な判断でした。

ところが、ここからが問題です。

裁判所は、中国の人たちが権利回復の手立てを取ろうと思えば、もっと早くに「できた」と認定したのです。だから時効が完成しているというのです。ここが、最大の問題です。

私たちは、早速大阪高等裁判所に控訴しました。

控訴裁判所では、次の点が大きな争点となります。

「時効の完成」は、なんとしても打破したいと思っています。昨年春に、同種事件で、福岡地方裁判所が、「時効は完成していない」という判断を下し、原告の賠償請求を認める判決を出しています。この流れをなんとしても定着させたいのです。そして、それは十分可能だと思っています。

もう一つは、京都地裁が認めた「国の責任の存在」(国家無答責の法理の否定)について、国が全面的に争ってくると思われます。これを逆転させないようにして、国の責任を認める流れを作っていく必要があります。

そして、何よりも大切なことは、企業と国の違法行為そのものは、裁判所で認められてのですから、これ以上、争いをさせず、謝罪と賠償を一日も早く実施させることです。

ふたたび、アメリカの戦争に全面的に協力することで、日本が加害者になろうとしている今日(すでに加害者となっているとも言えます)、半世紀前の戦争犯罪について、きちんとけじめをつけさせることが、平和を守る上でも大切なことだと痛感するのです。絶対に加害者とならないために、なることを阻止するために。

判決後記者会見
「まきえや」2003年春号