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国民を戦争に動員する有事法制に反対しましょう

国民を戦争に動員する有事法制に反対しましょう

奥村 一彦弁護士 奥村 一彦

今国会に、(1)国民保護という名の国民戦争動員法制と(2)米軍支援法制が提出され、審議が行われています。これまでの国民の自由や人権、生存権を保障してきた日本国憲法とは相容れない国造りが行われようとしています。

国民保護(戦争動員)法制とは

国民戦争動員法制は、武力攻撃事態において、対策本部長(首相)から警報が出され、それに基づき知事が市町村長に住民避難の実施を命ずるというものですが、そのために本部長以下末端の1人ひとりの国民までが全部政府の統制下に置かれます。政府の「基本指針」、都道府県知事の「計画」から市町村長の「業務計画」を通じ、学区、自治会にいたるまで命令系統が整備され、平時から「避難訓練」を行うとなっています。また、避難を妨害する人物と車両はあらかじめ排除できます。さらに、物資の保管、提出などの物資統制を敷き、従わない場合は6月以下の懲役刑でもって従わせます。

これらにより国民は常時、政府や自治体の監視下に置かれ、住民基本台帳法によるコンピューターで管理され、個人のプライバシーや思想信条の自由までが侵害される社会がまず構築されます。そのうえで、「武力攻撃事態」においては、自衛隊と米軍の戦争活動のために家屋敷が召し上げられ、医療関係者、建築・通信労働者が戦争関連業務に従事するよう命ぜられ、水や米、ガソリンが強制的に巻き上げられ、邪魔だといってその地域一帯から立ち退きをくらう・・まあこんな社会になろうとしているのです。このような社会になったら戦争を始めようとする政府を批判する行動は街頭で取れるのでしょうか。いいえと言わざるを得ません。いったいこのような社会が自由な社会と言えるでしょうか。たとえ戦争などなくても自由や人権が「公共」の名の下にとめどなく制限を受けることになり、いざ声を上げなければと思った時にはもう遅い、こんな社会になっては大変です。この国の未来をもっとよく考えようではありませんか。

さらに、この法案には「緊急事態対処」というまったく新しい条項が付け加わっています。これは武力攻撃事態に至らない事態で、武力攻撃事態と同様に避難、物資の統制や罰則規定が適用されることになっていますが、主体や行動態様は限定されていませんし、「明白な危険の切迫」の要件も果たして機能するでしょうか。治安当局が一方的に危険を宣言して国民の移動を強制するような恣意的運用を防ぐ手段はどこにもありません。

米軍支援法制とは

米軍支援法制とは文字通り「武力攻撃事態におけるアメリカ合衆国の軍隊の行動に伴い我が国が実施する措置に関する法律案」です。その目的(第1条)は、「武力攻撃事態において、日米安保条約に従って我が国に対する外部からの武力攻撃を排除するために必要なアメリカ合衆国の軍隊の行動が円滑かつ効果的に実施されるための措置その他の当該行動に伴って我が国が実施する措置等を定めることにより、我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全の確保に資する」とされており、極めて明解です。すなわち、米軍からの協力要請があった場合は自治体はこれに応じるよう務める義務が課され、総理大臣らは米軍に物品の提供をし、自衛隊は米軍に「役務」の提供を行うというものです。物品・役務の提供とは「補給」(弾薬も補給可能)、「輸送」(武器弾薬の輸送を含む)、「修理若しくは整備」、「医療」、「通信」、「航空若しくは港湾に関する業務」「基地に関する業務」「宿泊」「保管」「施設の利用 又は訓練に関する業務」及びこれらに付帯する業務(第10条)であり、もう全く無限定と言っていいでしょう。

さらに米軍が必要な時には内閣総理大臣は土地建物を収用し、米軍に提供する(第15条)ことができます。また、立木の移動、処分、建物の形状変更などもできます。

もう何でもかんでもできると言って過言ではないでしょう。先祖代々の土地がブルドーザーで地均し(ぢならし)され、大事にしていた梅桃桜などの木は伐採されて池は埋め立てられ、ローンで建てた家がたちまち兵隊さんの宿舎に形状変更され・・ああもう身も心もアメリカに捧げ尽くそうという政府官僚や自民党・民主党の議員のみなさんは、いったい何を考えているのでしょうか。

憲法9条違反は明白

実はまだまだあるのです。臨検法制(武力攻撃事態における外国軍用品等の海上輸送の規制に関する法律案)、道路・港湾・空港・電波等統制法案(武力攻撃事態等における特定公共施設等の利用に関する法案)、交戦法制(捕虜等の取り扱いに関する法案、国際人道法の重大な違反行為の処罰に関する法案、ジュネーブ条約追加議定書2件)です。

紙幅もないので詳しくお知らせできませんが、要するに交戦を前提とした法律案や条約です。これらが憲法第9条の国の交戦権を認めないとする立場と相容れないことは明白です。

私たちは、国民が平時から統制を受け、また、国際紛争が発生して米軍や自衛隊から直ちに家の立ち退きを求められたりしないよう、国際外交において国際社会から尊敬されるような力を付けて対処する平和国家を目指すべきです。アメリカについて行ってばかりでは危険を招くことはイラクの情勢からでも明らかです。今回の有事諸法制の成立には反対の声を上げていきましょう。

御所南地域で定期的に行っている昼デモ
御所南地域で定期的に行っている昼デモ
「まきえや」2004年春号