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人らしく、先生らしく、仕事をし、生きていくために「こどもたちとふれあう時間を戻せ」

[事件報告 2]

人らしく、先生らしく、仕事をし、生きていくために「こどもたちとふれあう時間を戻せ」

9人の先生が超過勤務の解消を求め提訴
村山 晃弁護士 村山 晃

長時間残業の是正を求めて

1月20日に9名の京都市内の小・中学校の先生が、京都市に対し、「違法な超過勤務の解消を求める裁判」を起こしました。京都新聞はじめ、各紙は、「違法な超勤を放置」「残業野放し」と言う見出しで、裁判を起こしたことを、大きく報道しました。

原告となった9名の先生方は、1ヶ月の残業時間が、67時間から108時間あります。これは、健康に被害を与える危険性が高いと言われている「1ヶ月45 時間を超える残業」を上回るものです。また残業が月80時間超えれば、過労死する危険性が一気に強まるとされており、それに該当する先生もいます。

この裁判の目的は、学校の先生が青天井の長時間労働を余儀なくされている実態を広く明らかにすること、教育委員会が、これを是正しようとしないばかりか、さらに超勤を余儀なくさせる仕事を強要していること、しかも、全く残業手当を出さず、サービス残業を強要していること、このような長時間に及ぶ超過勤務は、明らかに「違法」であること、などを明らかにさせ、学校での先生の仕事の仕方について、抜本的な改善を求めることにあります。

超過勤務是正裁判の勝利をめざすつどい

長時間残業は、全国的な問題

学校の先生の「働きすぎ」問題は、長年問題になってきました。しかし、最近ますます深刻化していることが各種の調査から明らかになっているのです。例えば、2002年に、全日本教職員組合が行った全国規模の調査では、1ヶ月の時間外労働の平均が、校種別にみると次のようになっています。

高校86時間43分
中学99時間48分
小学83時間27分

これは、同じ全教が、1992年に行った調査や、他の産業の労働者と比べると、明らかに深刻なものとなっています。そして、「慢性疲労」を覚えている先生が、全体の41.4パーセント(他産業約27パーセント)もいるのです。このような調査結果は、例えば、国立の教育政策研究所が行った調査でも、次のような実態になっており、「全教が特別」「全教の調査がおかしい」ということでは決してないことがわかります。

つまり、国立教育研究所が2001年に全国の小学校を対象にして行った調査結果では、睡眠:6時間20分 1日の勤務時間:11時間(平日だけで1ヶ月の残業時間が約66時間になる)となっているのです。

過労死裁判でも働き過ぎが明白に

つい最近も、大阪の堺市の小学校の先生が過労死をした事件で、大阪高裁で逆転勝訴判決が出されました。判決は、1人の先生が多くの校務をこなさざるを得ない実態を認定し、「学校にいる間は、まったく休憩が取れない」「持ち帰り残業が大変多い」ことなどを認定しました。本当に、学校の先生の過労死裁判は多いのです。それは、1つには、青天井で無制限の長時間労働にあります。しかし、他方で、教育委員会が、絶対にそのことを認めないことから、争いになるのです。行政側は、あえて「時間管理」をせず、先生方が「勝手にしている」かのように描き出すのです。

これでは、働いている先生方は、大変です。変な話ですが、せめて身をすり減して働いていることくらい認めるべきです。

学校の現場には、過労死しかねないものすごい長時間労働があります。そのことを認めさせることは、この問題の解決の第一歩です。

先生も保障されている週40時間制

学校の先生も、1人の労働者として、「勤務時間」は、法や条例で、きちんと保障されています。それは、

1つは、週40時間です、という単純なことです。

もう1つ重要なことは、原則として残業はさせません。としていることです。

これは、先生は、こども達相手ですから、何が起こるか分かりません。臨時・緊急の場合には、対応を余儀なくされることもあるでしょう。その場合のために先生方には4パーセントの調整手当が支給されています。

今回裁判を起こした先生方も、そんな場合にまで残業をさせるなと言っているのではありません。今、問題になっているのは、臨時や緊急の場合ではなく、日常的に先生方が超勤状態にあることです。

これは、法律の欠陥ですが、残業をした時の手当の支給が、法律には明記されていないのです。また、これに違反して残業をさせた時の罰則等がないことです。法律では、一方では「残業させない」ということが、明記されたものの、その実効性が、当時、国会で、大きな問題とされたのです。これは、法の欠陥です。その欠陥の問題性が、大きく露呈しているのが最近の現象なのです。

普通の労働者としての待遇を

一般の労働者は、36協定を結ばない限り使用者は、残業をさせることができません。また36協定がある場合でも、労働者は、残業を拒絶できます。また、残業した場合には、25パーセント増しの手当を支給することが義務づけられています。

教育基本法等で、身分保障が定められているはずの先生が、逆に、こうした残業に対する労働者の権利を剥奪されているのが実態です。とすれば、それは、正しい法のあり方ではないことは明白です。

恒常的な長時間労働を余儀なくさせる現在のあり方は、明らかに現行の労働時間法制と、それを前提にした学校の先生方の特例を定めた法律(給特法と略称しています)に違反しています。違法状態なのです。

今、学校現場は、新たな教育課題に追われて、大変な状況にあります。文科省は、次々新たな課題を押しつけるのではなく、こども達が十分な教育を受けられるよう条件整備をしなければなりません。その最大のものが、教職員がゆとりをもって仕事ができる条件作りです。先生方は、何よりもこども達と十分接触できる豊かな時間の確保を求めて、この裁判に立ち上がりました。

今、日本中の教職員が悲鳴を上げています。今回の裁判には、全国の教職員の熱い期待がかかっています。皆さん方の大きなご理解とご支援をお願いする次第です。

「まきえや」2004年春号