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敷金は戻ってきます

敷金は戻ってきます

糸瀬 美保弁護士 糸瀬 美保

春は、就職、入学、転勤など引っ越しのシーズンです。通常、賃貸マンション、アパートなどを新しく借りた際には、家主さんに敷金(保証金)を支払っています。退去の際、この敷金が戻ってこなかったり、逆に修繕費用を要求された経験をした方がいるかもしれません。

しかし、敷金は、基本的に戻ってくるものです。最近、敷金が戻らず困っている借主にとって、心強い画期的な判決が本年3月16日京都地裁で出されました。

敷金とは

家賃を滞納するなど、借主側の不始末に備え、あらかじめ家主が預かっておく金銭です。賃貸住宅の場合は、保証金というのもたいていは同じ意味です。

リフォーム費用は、借り主負担か?

退去後、借主の原状回復義務をたてに、部屋をまっさらの状態にするリフォーム費用を敷金から差し引く家主がいます。

しかし、原状回復とは、借りた建物から借主の持ち物や取り付けたエアコンなどを取り除いて、家主に返還することをいいます。借主は建物を使用するために家賃を払っているわけですから、普通に生活していてできたキズや汚れ(これを通常損耗といいます)や建物が古くなっていくにつれて出てくるいたみ(これを経年変化といいます)については、家賃でカバーされているのです。これを次の人が入りやすいように修繕する費用は、家主の負担ですから、敷金からこの費用を差し引くというのは、家賃の二重取り、ぼったくりです。

通常損耗や経年変化について、少し具体的にご説明します。

日照などによる畳やフローリングの変色・色落ちは、自然的な経年変化です。家具の設置による床やカーペットのへこみも、部屋に家具を設置することが通常の使用である以上、通常損耗です。壁の画鋲の穴やクリーニングで取り除ける程度の煙草のヤニ、冷蔵庫裏の電気ヤケなども通常損耗といえます。退去の際の清掃について、借主は、拭き掃除、掃き掃除、換気扇やレンジ回りの油汚れの除去といった普通の「清掃」をすれば、十分原状回復義務を果たしたといえます。業者による高額なハウスクリーニング費用を負担する必要はないのです。

特約にご用心

このように、借主は、通常損耗や経年変化についての修繕、修理責任を負わないのが原則ですが、「故意、過失を問わず~の修繕費用は借主の負担とする」「借主は、自然損耗分を含めて、原状回復義務を負う」といった特約が契約書の中に書き込まれていたり、契約書と一緒に誓約書や確認書へのサインを要求されることがあります。

しかし、こうした特約は、その内容に合理性があり、かつ契約の時にきちんと説明を受けて借主が納得していなければ、効力がないとするのが多くの判例の傾向です。

ただ、借りる側としては、こうした特約があっても、なかなか文句をいえないのが現実です。

そこで、そんな借主に強い味方となる消費者契約法10条を適用して、自然損耗分の修繕費用を借主負担とする特約の無効を認めたのが、冒頭で紹介した京都地裁の判決です。

敷金を全額返してもらうには?

まず、契約時に契約書など全ての書類をよく読み、納得できない特約については削除を要求しましょう。入居時や退去時には、チェックリストを作成し、写真やビデオテープに記録し、後のトラブルを防止しましょう。

入居時に物件の確認をしてほしいということを家主さんに求めることは、なかなか勇気のいることかもしれません。しかし、国土交通省が出したガイドラインでも、トラブル防止のためには入退去時の物件の確認を徹底することが求められています(「原状回復義務をめぐるトラブルとガイドライン」)。これを紹介して、後々のトラブル防止のためであることを理解してもらいましょう。

ただ、契約時には、ついつい不利な契約書に判を押してしまっていたり、仮に未然に防止策をとっていても敷金を返してもらえないということがあるかもしれません。しかし、そこであきらめる必要はありません。内容証明郵便や少額訴訟によって、敷金の返還を請求することができます。いざとなれば訴訟も辞さない覚悟で、敷金ぼったくりの業者や家主に立ち向かいましょう。

京都新聞の記事
2004年3月17日付 京都新聞
「まきえや」2004年春号