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借家明け渡しを拒否したことで「力」ずくの嫌がらせ

借家明け渡しを拒否したことで「力」ずくの嫌がらせ

藤澤 眞美弁護士 藤澤 眞美

Yさんは、本件建物の借主であり、長年お母さんとともに暮らしています。お母さんは足が悪くて、車いすがないと外出できないうえ、最近は認知症がひどくなってきました。Yさんは介護に苦労しながらも静かな生活をおくってきました。

明け渡しを拒否したら

2005年9月ころ、Yさんは、家主の代理人と称する会社の従業員より、家主がワンルームマンションを建築するので借家を明け渡して欲しいという請求を受けました。けれども、Yさんとお母さんはわずかばかりのお母さんの年金で生活をしており、認知症で足の悪いお母さんのことを考えると本件建物から引っ越すことは到底考えられませんでした。そこで、Yさんが断ると、しばらくはそのままになっていました。

ところが、2006年1月30 日に突然、家主の代理人と称して、A会社の従業員S氏が来訪し、「立ち退きの話にきた」と話し合いを強要しようとしました。Yさんが「今日は医者が来るので取り込んでいるから帰って欲しい」と言っても、S氏は玄関のしきりの上に仁王立ちになって「話をせんなら毎日来て戸をたたく」などと脅迫的な言葉で脅しました。Yさんが「警察に言う」と言っても、S氏は「警察なんか怖くない」と居直りました。

この日から、A会社はしつこく「話し合い」を求め、「明け渡せ」攻撃が始まりました。 2月16 日、同年3月3日、同24 日と「話しあい」を重ねてきましたが、A会社はその都度、「とりあえずあけてほしい」「どんなことをしてでもあけてもらう」「住めんのやったら住んだらいいやん」「どんなことをしてでもやる」、「強硬手段でいかんなん」「出てもらうためには、いろんな手を使う」「つぎの手をうつ。くさびを打ちに。がんと」「うちはうちのやり方でしていく」「うちのやることは勝手や」「おれとこかて力でいくで」等々とまくしたてました。

「話し合い」の最後になった日には、A会社の社長は、「住み続けられるものなら住んでいたらよい、我々のやり方で住めんようにしたる!」などの捨て台詞を残して帰っていきました。

周りの家が壊されていく

同年4月9日(日)の午前中、A会社の作業員がやって来て、Yさんの隣の空き家になっていた建物をハンマーなどを使って壊し始めました。いわゆる「空き家をこぼつ」ような壊し方でなく要所、要所の建具のガラスや屋根の一部の瓦を割って通路にぶちまけたり、大屋根の一部だけに穴を開けたりしました。まさに、Yさんと母への嫌がらせ・脅迫、生活妨害・通行妨害が歴然とした「壊し」方でした。

当日夜、Yさんから家主に連絡をしましたが、「業者に任せてあるので」と取り合ってはもらえません。

同月10 日、昨日からの雨で隣の空き家が水浸しになっていました。本件住宅と隣の建物は薄い壁一つしか隔たりが無く、Yさんは雨水が心配になって自宅の2階の押入の物を全部出しました。

Yさんは家主に電話して「会って話をしたい」旨申し入れ、「車いすが通れない」と苦情を述べましたが、「全て業者に任せているので業者と話をしてくれ」と面談を断られました。

腐っていく隣家に不審者の侵入

5月上旬、Yさんは家のまわりでシロアリを見ました。このままほっとかれると家がシロアリの巣になってしまうと考えました。雨で隣の空き家が水浸し、だんだんYさんの家に水がしみこみかけてきました。さらに、前の空き家に人が入って、水道の蛇口を持っていきました。A会社が空き家を壊してからいろいろな人が入ってくるのでYさんは恐ろしくなりました。表の窓のカーテンも開けられなくなりました。嫌がらせも心配で表の戸も開けらず、いつも鍵をかけるようになりました。

ある日には、路地の入り口のところに子供の三輪車や植木鉢などがぶつけられていました。またある日には、また空き家に人が入っている気配がしました。見ると男の人が一人で入ってわけのわからないことを言っていました。Yさんは空き家にハエを見ました。それからもA会社の嫌がらせは続きました。

仮処分申立

Yさんは耐えられなくなって、弁護士に依頼し、嫌がらせ行為禁止の仮処分を申し立てました。さすがに裁判となって、A会社は通路の清掃と腐ってきている隣の屋根の補修には応じましたが、隣家の屋根は板を乗せただけで雨漏りは止まっていません。

このように、家主の代理人A会社は、脅迫的言辞によりYさん及びその家族を恐怖させ、困惑させました。さらに空き家の損壊により、Yさんらが通路を通行する権利、安全・安心に生活する権利を妨害し、四六時中さらなる嫌がらせを受けるのではないかという陥れ、本件建物の明け渡しを強要しようとしました。また、家主は、仮処分に至るまでA会社の不法行為を放置し、Yさんが抗議をしても誠実に対応せず、A会社の各不法行為を黙認してきました。

被告らの行為により、Yさん及びその家族の平穏な生活が著しく侵害されました。

あまりのひどさに、Yさんは本訴を提起して社会的悪を明らかにすることにしました。裁判は始まったばかりですが、最後までがんばり抜く決意です。

空き家屋

こわされた空き家屋の建具が散乱している

空き家屋

隣の家の壊し方は明らかに嫌がらせである

「まきえや」2006年秋号