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組合つぶしをはね返した 洛陽学院事件120%勝利和解

組合つぶしをはね返した 洛陽学院事件120%勝利和解

秋山 健司弁護士 秋山 健司

はじめに

勝利和解後、京都地裁にて記者レクを行う畠山氏、村井弁護士、支援者野村さん
勝利和解後、京都地裁にて記者レクを行う畠山氏、村井弁護士、支援者野村さん

この「まきえや」で以前報告した洛陽学院事件が、今年1月27日に完全勝利解決いたしました。皆様からのご支援に、本当に感謝いたします。有難うございました。

この事件は、私立洛陽総合学院が労働組合活動にも取り組んでいた畠山智恵子元教諭の退職金を、本来個人責任に還元するべきでない軽微な事務処理上のミスを理由として不当に313万8774円も減額したという事件でした。このようなことが許されてしまっては、先生達が伸び伸びと教育活動を実践できない学校になってしまいます。生徒達にとっても真の教育を受ける機会を奪われてしまうことになってしまいます。

そこで、減額された退職金の全額支給を求めることを通じ、学校側の不当労働行為を糾弾し、自由な空気の中で真の教育活動を行えるような学校にするべく、本訴訟を2003年の10月から提起していました。

学院側は、様々な理由を持ち出してきて、「不当労働行為ではない」「退職金減額には正当な理由がある」、と繰り返し続けました。

しかし、そのような主張が通る道理はありませんでした。今般、120%勝利和解が成立したことによりそのことがはっきりとしたのです。

地裁第1審勝利判決以後高裁第2審口頭弁論に至るまで

昨年7月、京都地方裁判所は畠山さんの請求を全面的に認める判決を言い渡しました。しかし、学院側が控訴したために事件の舞台は大阪高裁に移りました。

地裁判決では、結論において完全勝訴していましたが、判決の理由にはいくつかの問題点がありました。たとえば、明らかに畠山さんをねらい打ちにした退職金減額に関する就業規則の不利益変更を有効とした点や、退職金減額処分言渡後半年近く経過してから述べられた後付の減額理由も正当な減額理由となりうることを認めた点などです。また、裁判では減額された退職金とその遅延利息しか請求できないため、「先生達が伸び伸びと教育活動を実践できる学校の実現」という点からは限界がありました。そこで学院側から控訴されたことを契機に、先生達が伸び伸びと教育活動を実践できる学校作りのために何が必要かについての議論を並行して時間をかけて行い、高裁での期日に臨みました。

高裁での期日第1回目の高裁口頭弁論期日において、畠山さんの意見陳述が行われました。畠山さんは、学院から受けた37年間に渡る様々な攻撃・差別を事実に基づき克明に陳述しました。37年間、一切役職に任じられなかったこと、修学旅行の引率を1度も経験させられなかったこと、一度も卒業学年である3年生の担任を任じられなかったこと・・・陳述中、悔しさ、情けなさがこみ上げてきた畠山さんは、熱い涙をこぼしていました。傍聴席からもかすかにすすり泣く声が聞こえたような気がしました。

更に畠山さんは、仮に本件の退職金減額処分が認められるようなことがあれば、仕事の不備や不注意を恐れるあまり、生徒と向き合ってこそ見えてくる生徒の心が、多くの書類に埋もれて見えなくなってしまい、真の教育実践が妨げられてしまうことを切々と訴えました。

この畠山さんの強い思いが高裁の裁判官を動かしました。裁判官は和解勧告を行う際、生徒達のためという観点からの円満な解決を図りたいと両当事者に向けて述べたのでした。

そこで畠山さんや支援する組合の仲間達は、学院を真の教育実践を行える場にするために必須と考えられる要求を積極的に提案しました。また要求実現のための署名活動にも従前に増して力を注ぎました。

120%勝利和解実現

そうした中で迎えた今年の1月27日、勝利和解が実現したのです。学院側が退職金・遅延損害金の全額の支払をするという内容に加えて、学院側が教職員の職務遂行上のミスについて個人責任のみを追及するのではなく学院全体で防止する努力をしなければならないことや、今後は学院内における組合活動に対して学院側が一定の配慮を示さなくてはならないという趣旨の条項も盛り込むことができたのです。洛陽学院という職場における民主主義の大きな前進を図ることができたのでした。

職場の変化

その後、職場においては、裁判係属中には、畠山さんを支援する組合員に対して対立姿勢を示してきた管理職の教員の表情が変化してきました。和んだ空気が戻り、管理職が組合員に向けて世間話をしてくる場面も生まれてきているとのことです。審理中には、傍聴席にいる畠山さんや組合の支援者に悪態をついていた某管理職も、最近は組合員のお子さんのことを気遣う発言をしてくれたとのことです。

また、実際にミスが発生したときにも、ミスの背景を具体的に検討し、学院を挙げて再発防止を図るための方策を検討する姿勢を学院側が示し始めているそうです。現場からその報告を聞いたとき、「学院の、そして学院の先生方の空気がよい方向に変わった。あの裁判、本当に頑張ってよかった。」と目頭が熱くなりました。

最後に

2003年秋の提訴から勝利するまで足かけ4年となりましたが、畠山さんと組合の仲間の皆さんのねばり強さとチームワーク、そして、それを陰に日なたに支えてくださった支援者の方々の熱意によって、ついに勝利することができました。本当に有難うございました。ここに報告させて頂きます。

「まきえや」2006年春号