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ベテラン教員の過労自殺 ~公務災害認定を求めて~

[事件報告]

ベテラン教員の過労自殺 ~公務災害認定を求めて~

大島麻子弁護士 大島麻子

公務外災害認定処分取消訴訟提訴

2007年6月28日、中学校教員だった角隆行さんが公務に起因してうつ病に罹患し、自殺したにもかかわらず、公務災害ではないとの認定が出されたことを不服として、隆行さんの妻奈弥子さんが公務外災害認定処分取消請求訴訟を京都地裁へ提訴しました。

隆行さんは、民間会社での勤務等を経て、1978年4月、京都市に教員として採用され、中学校の数学の教員として働いていました。隆行さんは、生徒に対する細やかな配慮を見せ、生徒指導において力を発揮するなど、ベテランの教員として信頼を集めていました。また、課外活動ではバスケットボールの指導をして全国大会に導いた実績もあります。健康状態も良好で、職場での定期健診でも全く異常は見られませんでした。

ところが、1998年10月29日、隆行さんは「抑うつ状態」であるとの診断を受けて休職・療養することとなりました。しかし、症状は改善せず、同年12 月12日午前6時、隆行さんは自殺するに至っています。死亡当時、まだ46歳でした。

隆行さんの勤務状況

弁護団では、労働組合の協力を得ながら、当時の同僚教員や、受け持ちクラスの生徒への聞き取りを行い、また、京都市に対して証拠保全を申し立てて当時の資料を入手するなどして、事実関係の調査を行いました。その結果、以下のようなことが分かりました。

まず、隆行さんが学級運営上の悩みを抱えていたことがあげられます。隆行さんは、これまでの生徒指導の実績を期待され、1998年4月より問題行動の多かった女生徒を受け持つことになりました。ところが、この女生徒が、隆行さんの指導に従わないばかりか、クラスの他の女生徒にも悪影響を与えるなど、さらに問題行動を起こすようになります。また、受け持ちクラスの中から、不登校の生徒や、体育祭の練習時に怪我をおわされる生徒が出るなど、その対応にも苦慮することとなりました。

また、当時の勤務中学校にはバスケットボール部がなかったのですが、隆行さんは同好会を作り、指導にあたってきました。しかし、正規の部ではないため、練習場の確保など、いろいろな苦労がありました。

そのため、隆行さんは、恒常的に長時間労働を強いられることとなりました。タイムカードがないため、正確な勤務時間は分かりませんが、出勤時間や帰宅時間から考えると、毎日3時間程度の残業を行っていたほか、持ち帰り残業も多く行っていました。また、休日にもバスケット同好会の指導や、正規の部活動の引率のために出勤していたのに対し、有休に関しては5日分しか取っていませんでした。

こうした過重な公務の負担と、日常的な長時間労働に加え、休日も休養時間がとれないという過酷な勤務実態のせいで、隆行さんはストレスを蓄積させてうつ病を発症し、ついには自殺に至ったのです。

公務外認定

しかしながら、2002年8月1日に奈弥子さんが行った公務災害認定請求に対しては、公務外との認定が出されてしまいました。奈弥子さんは、この公務外との認定を不服として、2006年2月14日、地方公務員災害補償基金京都府支部審査会に対して審査請求しましたが、同年10月4日上記審査請求は棄却されました。そこで、同年11月1日付けで地方公務員災害補償審査会に再審査の請求をするとともに、冒頭のように京都地裁へ提訴し、司法の場での判断を求めることとなったのです。

正当な判断を

奈弥子さんは、提訴時の記者会見において、「夫は一生懸命仕事をしてきたのに、このままではあまりにかわいそうだ。」と訴えました。また、現在は社会人となっている娘さんは、当時の生徒や同僚の先生の話を聞き、「父がどんな働き方をしていたのか、はじめてわかった。」と感慨深げに話していました。こうした遺族の方のお気持を聞き、弁護団としては、あらためて隆行さんがどんな働き方をしていたのか明らかにし、その死が公務によるものであるとの正当な判断を得なければならないと強く思うものです。

毎日新聞の記事
2007年6月29日 毎日新聞朝刊

「まきえや」2007年秋号