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フランチャイズ本部の圧力に負けず、店を守る

[事件報告]

フランチャイズ本部の圧力に負けず、店を守る

荒川英幸弁護士 荒川 英幸

フランチャイズ契約の何が問題か

私たちの社会には、コンビニや飲食店を典型として、様々なフランチャイズ・システムが作られ、小さな町にまで浸透しています。フランチャイズ契約とは、本部が加盟者に対して、商標などを使用して統一イメージで事業を行うことを許し、ノウハウの提供や指導を行う反面、加盟者がロイヤルティと呼ばれる対価を支払う継続的な契約です。

加盟者側から見たフランチャイズ契約の問題点は、形式上は対等で独立した事業者間の契約という構成を取っているにもかかわらず、実際には次のような事実が存在することです。

  • 加盟者は、本部に対し、経済的にも体制的にも圧倒的に弱い立場にある。
  • 加盟者は、脱サラ組などの商売の素人が多い。しかし、契約すれば投資リスクや事業リスクを負うことになる。
  • 契約前に受けた売上や利益の予測、指導の内容の説明などが実際と違っていることがある。
  • 途中でやめたいと思っても、高額な違約金に縛られ、逃げることが出来ない。契約書には、本部に有利な条項が事細かに書き込まれており、がんじがらめにされている。

Aさんの場合

会社員を辞めて独立開業することを考えていたAさんは、あるフランチャイズ・システムを知り、担当者から説明を聞いた上で、加盟契約を結ぶことにしました。慎重なAさんは、契約書の条項の意味を確かめましたが、「契約が解除及び解約された場合には、同一場所での業務はできない」という趣旨の条項(以下、「本件条項」といいます)については、店舗の設計を本部がしているので、同一店舗での営業ができないということであり、店舗を変えれば同種の業務をしても差し支えないというのが担当者の説明でした。

ところが、開店してから、予想もしなかった深刻な問題(Aさんの責任ではありません)が発生した反面、本部からは満足な改善や指導はありませんでした。しかし、真面目なAさんは、本部の承認を得て、独自の努力をしながら経営を維持し、ロイヤルティを払い続けてきました。そして、せっかくここまで頑張ったのだから、契約期間が来ても、契約を更新して、店を続けていきたいと考えていました。

ところが、契約期間の満了が近づくと、本部は、それまでの態度を変化させ、Aさんの独自努力のやり方を認めないと言い出しました。そして、今後は本部の指示とおりにすること、新契約書を取交すことを更新の条件にしてきました。しかも、新契約書は、条項数がこれまでの3倍以上にもなっており、Aさんががんじがらめにされる内容が事細かに記載されていました。

このような本部の対応でしたので、Aさんは、やむなく更新を断念し、契約期間満了により本部との契約は終了しました。これは、本件条項でいう解除(加盟者の契約違反により本部から契約を切られること)でも解約(加盟者から期間の途中で辞めたいということ)でもありませんでしたが、慎重なAさんは、本部とのトラブルを避けるために、今までの店舗を閉鎖し、多額の資金を投入して、相当離れた場所に全く新たな店舗を持ちました。

ところが、本部は、契約前の説明とは異なり、本件条項の同一場所とは同一地域のことだから、新店舗は本件条項違反だと言って、Aさんに圧力をかけました。そして、Aさんがこれに応じないと見るや、裁判所に新店舗の閉鎖と営業停止などを求める仮処分を申立てました。

死活問題に立たされたAさん

もしも申立が認められれば、Aさんは新店舗を閉鎖して営業を停止しなければならず、投下した多額の資金が無駄になってしまうだけでなく、従業員も含めて路頭に迷う状態になります。他方、本部にとっては、敗訴しても、本部が依頼した弁護士の費用や実費の負担があるだけです。

このような切実な力関係にも、フランチャイズ契約の特徴が示されています。

加盟者の権利保護を重視した裁判所の正当な判断

地裁と高裁は、本部の申立を一切認めませんでした。特に高裁は、前述したような加盟者の弱い立場を配慮した詳細な判断を示しており、十分に納得できる内容でした。

高裁の判断の要点は、次のとおりです。

  • 本件条項(実務では競業避止義務と呼ばれています)は、加盟者の経済的自由を制限するものであるから、制限は合理的範囲に限られ、過度の制限は公序良俗に反し、無効になる。
  • 本件においては、本件条項で保護されるべき価値が本部にあるかという観点で具体的に検討すると、本件条項の存在意義についても相当に疑問である。
  • 本件条項は、期間において無制限の義務を負わせるものであり、効力について疑問がある。
  • 以上の点をおくとしても、本件では期間満了による終了だから、本件条項の解除や解約に当たらない。Aさんは、期間満了による終了の時には、競業避止義務がないと考えて契約を結んだものである。記載もないのにAさんに基本的な職業選択の自由を制限する義務を負わせることは、合意の範囲を逸脱する。
  • 本件の実態に照らせば、同一地域の商圏を本部が維持するために本件条項を定めたとは認められない。したがって、同一場所とは旧店舗だから、新店舗の営業は本件条項に違反しない。

なぜ、勝訴し、解決できたのか

以上のとおり、高裁の判断は、具体的事情も検討した説得的な内容であるとともに、幾段階もの争点において、本部の主張を全て封じていくものでした。この判断を踏まえて、事件は解決し、Aさんは、安心して新店舗での営業を続けることができるようになりました。

本部側の観点においては、契約終了の場合を定めて置かなかったことは、契約作成上のミスということになるのでしょう。そのようなミスがあった場合に、強い立場の本部の肩を持つのではなく、契約の原則論を貫いてAさんを保護したのが裁判所でした。

そのように裁判所を動かした原動力は、記録中に浮かび上がったAさんの真面目な営業姿勢と努力、最後まで争いを避けようとした誠実な人柄だったと思います。

「まきえや」2007年秋号