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「健康増進義務」のうさんくささ

「健康増進義務」のうさんくささ

藤澤眞美弁護士 藤澤眞美

男性でウエストが85センチ以上、女性で90センチ以上というのが診断基準の一つで、予備軍まで含めると、国内に2,000万人以上いるとされるメタボリック症候群。糖尿病などの生活習慣病の前兆と言われています。

このもととなったのが、2003年に施行された健康増進法で、公共施設や交通機関での禁煙・分煙を進ませたのもこの法律。第2条では、「国民は、健康な生活習慣の重要性に対する関心と理解を深め、生涯にわたって、自らの健康状態を自覚するとともに、健康の増進に努めなくてはならない。」と規定しています。

「努めなくてはならない」にひっかかります。健康の増進に努めていない私は義務違反になるんだろうか?ちゃんとした運動してないし、お菓子大好きだし。

健康保険証を取り上げられたり、生活保護を打ち切られたり、そうでなくても医療費が高くて病院に行けない人は、病気になっても自分で責任取れよということでしょうか。

2005年に施行された食育基本法にも「国民は…生涯にわたり健全な食生活の実現に努めるとともに、食育の推進に寄与するよう努めるものとする。」とあります(第13条)。

健全な食生活も食育の推進もよいことです。誰も反論できない。メタボだって、厚労省の基準の信憑性はさておいても、激しく太れば健康に良くないことはわかります。

しかし、これって「国民の義務」なんでしょうか。保健指導、健康診断も義務化されることになっていて、それでも「健康の増進」が出来ない人が「自己責任」として排除されていかないか心配です。喫煙者がずいぶんと肩身が狭くなってしまったように。

憲法25条1項は、国民が「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」と規定しています。健康は個人的でとてもナイーブな問題で、国民の義務ではなく、みんなが政府に要求できる権利として扱われるべきです。心に対する監視が「愛国心」で、身体に対する監視が「健康増進義務」で、生活は楽にならないのに監視ばかりが強まっていると思うのです。

「まきえや」2007年秋号