あなたのために全力で 暮らしと人権を守って48年 京都最大の法律事務所(弁護士19人、事務スタッフ25人) 法律でお悩みの方はお気軽にご相談ください。0120-454-489

離婚と年金分割制度

離婚と年金分割制度

糸瀬美保弁護士 糸瀬美保

離婚後の生活が不安……

現在、約2分に1組の夫婦が離婚しています(過去最高の2003年度は289,836組、2004年度は約27万組、2005年・2006年度は26万組台)。

離婚に際して、妻、特に小さな子どもをかかえて働くことができない主婦や高齢者などにとって、一番気がかりなのは離婚後の生活です。

高齢者の場合、国民年金の受給額は満額でも月額66,000円程度で、厚生年金に加入していても、女性の加入期間は短かったり、男性に比べて給与が低いため低額に止まることが一般的です。しかも、年金制度の改悪によって支給開始年齢は65歳まで段階的に繰り延べられており、繰り上げて受給しようとすれば大幅に減額されてしまいます。これでは、とても生活することはできません。扶養的財産分与等の名目で、夫が受給している年金の一部を妻に支払うことが認められる場合でも、支払いの履行を確保できない・年金受給者である夫の死亡により債務が消滅するという問題点がありました。

そこで、今年4月1日から施行された離婚時の厚生年金分割制度が注目されています。

離婚時の年金分割制度とは

離婚当事者は、婚姻期間中厚生年金保険料納付記録離婚時に限り、当事者間で分割することができる」というものです。

(1) 2007年4月1日以降に成立した離婚当事者が対象です。

施行日以前に離婚した当事者が、年金分割の合意をすることはできません。

(2) 婚姻期間中の厚生年金の保険料納付記録(標準報酬月額や標準報酬総額)を分割します。

分割の対象となるのは、厚生年金の報酬比例部分のみです。また、現在受給している年金額を分割するわけではありません。分割割合については、当事者双方の保険料納付記録の合計の2分の1の上限があります。

分割割合について当事者で合意した場合は、公正証書等を作成しなければなりません。また当事者で合意できない場合には、裁判手続きによることになりますので、詳しくは当事務所に相談してください。

(3) 分割後の新しい標準報酬額をもとに、年金支給額が決定されます。

分割割合を定めたからといって、直ちに年金が支給されるわけではありません。原則として、離婚時から2年以内に、社会保険庁に対し、必要書類を添付して、「分割改定の請求」をしなければなりません。

また年金を受給するには、自身に年金受給資格があることが必要です。年金を受給できるのは、受給開始年齢に達してからということになります。国民年金の未加入や未納によって、受給資格を満たさない場合には、分割を受けても年金を受け取ることはできません。

第3号被保険者期間についての厚生年金の分割制度

「離婚当事者の一方が婚姻中に第3号被保険者であった期間を有する場合の分割方法について定める」制度も、2008年4月1日から施行されます。

これは、同日以降の第3号被保険者(国民年金被保険者のうち、第2号被保険者(厚生年金・共済年金の加入者)に扶養されている配偶者たち)期間については、夫婦がともに保険料を負担したと擬制するもので、請求によって、自動的に保険料納付記録が2分の1に分割されます。但し対象は、第3号被保険者であった期間のうち施行日以降に限定されていますので、施行日前の結婚期間については、やはり2の離婚時年金分割の方法によることになります。

情報提供

社会保険事務所に請求すれば、夫婦双方の対象期間の標準報酬総額や按分割合の範囲など分割請求のために必要な情報提供をしてもらうことができます。将来自分が受給できる年金の見込額や仮に年金分割をした場合の年金額の見込額なども試算してもらえます。

例えば…(1)夫が20歳から60歳まで厚生年金に加入し、妻は婚姻期間中専業主婦、(2)夫の標準報酬月額を全期間36万円と仮定し、(3)分割割合を2分の1と定めた場合に

ケース1夫が60歳の時に離婚=婚姻期間は夫の全就業期間(40年間)
→夫婦の年金額は、それぞれ月額11.6万円(老齢基礎年金6.6万円+老齢厚生年金5.0万円)となります。
ケース2夫が40歳の時に離婚=婚姻期間は夫 の就業期間の2分の1(20年間)
→分割後の夫の平均標準報酬額27万円(―9万円)
妻の平均標準報酬額9万円(+9万円)
→夫の年金額は、月額14.2万円(老齢基礎年金6.6万円+老齢厚生年金7.6万円)
妻の年金額は、月額9.1万円(老齢基礎年金6.6万円+老齢厚生年金2.5万円)となります。

やはり、不安は残ります。

上記の例はあくまでもイメージですが、年金分割をしたとしても、対象期間(婚姻期間)が短い場合や相手方の標準報酬額がそれほど高くない場合には、受給できる年金額はそれほど多くはなりません。離婚当事者双方とも生活していくのに十分な年金を受け取ることができないというケースも考えられます。年金分割によっても、離婚後の生活の安心は得られないままです。また、年金分割は、国民年金の上乗せ部分にのみ認められるものですから、国民年金しか受給していない夫婦には関係がありません。

基礎となる年金の支給額が低いことや社会福祉の切り捨て、保険料率や国民年金の保険料の引き上げの負担増、増税などによって、老後の生活が保障されていないことを根本的に解決しなければ、問題は解決しないのです。

離婚時の厚生年金分割イメージ図

「まきえや」2007年春号