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明渡し目的の嫌がらせ事件 ~家主に賠償命令~

[事件報告]

明渡し目的の嫌がらせ事件 ~家主に賠償命令~

藤澤眞美弁護士 藤澤眞美

どんな事件だったか

Yさんは、本件建物の借主であり、足が不自由で認知症もひどくなってきたお母さんを介護しながら暮らしていました。2006年1月末に、家主の代理人と称するA社のS氏がやってきて、「立ち退きの話に来た。」と話し合いを強要しようとしました。「取りあえず今日は帰ってください。」と言っても、「話をせんなら毎日来て戸をたたく。」「警察なんか怖くない。」と脅します。

そうして半ば強制的に明渡しのための「話し合い」が数回行われましたが、要介護度4のお母さんを抱えたYさんは、やすやすと立ち退きの話に応じるわけにはいきません。話し合いは決裂し、A社の社長は「どんなことをしてでも(家を)あけてもらう」「おれのとこかて力でいくで」「我々のやり方で住めんようにしたる。」と捨て台詞を残して帰って行きました。

それから、Yさんに対してとんでもない嫌がらせがおきました。同年4月9日に、S氏が数名の作業員を連れてやってきて、Yさんの借家の隣家や斜め前の家(いずれも空き家)をハンマーなどを使って壊し始めたのです。それは「解体」というようなまともなものではなく、建具をひきはがしたり、屋根にところどころ穴をあけたり、屋根から通路に瓦をばらばらと落としたり、脅迫・生活妨害が歴然とした壊し方でした。

ところが、Yさんが住んでいる家屋やYさん自身に直接手を出しているわけではなく、家主の了解のもとで家主の建物を壊しているのですから、警察に言ってもまともに相手にしてくれません。

壁一つ隔てた隣の家が穴だらけになって、雨が降ると水浸しになった隣家の湿気のためYさんの家の押入が使い物にならなくなりました。空き家に不審者が入ってくることもあり、Yさんは不安でたまりません。

嫌がらせ行為禁止の仮処分

2006年6月、Yさんは弁護士に依頼して、嫌がらせ行為禁止の仮処分を申し立てました。さすがに裁判となって、A社は通路の清掃と隣家の屋根の補修には応じましたが、その補修もはなはだ不十分で、二人暮らしのYさんは、いつまたA社が嫌がらせをしてくるか恐怖で眠れない日が続きました。

損害賠償請求訴訟

同年9月、Yさんは、家主とA社に対して、嫌がらせによる精神的損害の賠償を求めて提訴しました。

被告らは、Yさんが過剰な反応をしているだけで、自分たちがやったのは「正当な解体作業」であると主張しました。

しかし、Yさんが事件前後のA社とのやりとりをていねいに録音していたことに加え、証人尋問の段階になると、S氏が保護シートも足場も設置せず隣家を壊していたこと、瓦を通路側に落としたことなどが次々と明らかになり、「解体」作業には実態として嫌がらせ目的があったことが明確になっていきました。

2007年10月18日、裁判所は「隣家家屋の取り壊しは、社会的相当性を欠く方法及び目的によって行われたものであり、不法行為を構成するに足る違法性を帯びる。」という判決を下し、Yさんの主張を概ね認めました。

最終的な解決

勝訴判決が確定し、A社とやっと冷静に交渉ができるようになりました。結局、A社は代替物件を見つけ出し、その家屋の買取費用や引越費用その他に見合う金員をYさんに支払うことで和解することができたのです。

2008年になって、Yさんは新しい家屋への引越も終わりました。お母さんは引越当初少し不安定になったものの、今は落ち着いてYさんと静かな暮らしをしています。

2年がかりの裁判でしたが、借主側、女性世帯という弱い立場でもたたかい抜くことができました。京都借地借家人組合連合会をはじめ、たくさんの方々にご協力いただきありがとうございました。

京都新聞の記事

「まきえや」2008年春号