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特別縁故者(とくべつえんこしゃ)の話

特別縁故者(とくべつえんこしゃ)の話

岩橋多恵弁護士 岩橋多恵

「とくべつえんこしゃ」、読者の皆さんは、聞き慣れない言葉かも知れません。しかし、意外と事件はあります。

私は、これまで、いくつかの「特別縁故者への分与」という手続きで、相続人でない人から依頼を受けた上で、遺産の一部(たとえば、遺産の4分の1=遺産が 1000万円だとして250万円)の分与を認めてもらった事件があります。

相続人がいないとき、故人の遺産は、申立により相続財産管理人という人が選任されて、遺産を整理(清算)します。

この場合、借金や負債などをプラスの財産で清算した後、遺産が残っていれば、それらは、国がもらうことになります(「国庫に帰属する」)。

しかし、相続人でなくても、相続人がいない場合で、一定の要件と手続きを行えば、遺産の一部ないし全部を取得できることがあります。それが、「特別縁故者への分与」という手続きです。

「特別縁故者」とは

要するに、相続人がいない場合(※)に、遺産の清算後、遺産が残っている場合に相続人ではないけれど、一定の手続きをとれば、家庭裁判所が、遺産の一部ないし全部を分け与えてくれるのですが、その場合に分与が認められる被相続人と特別の関係(縁故)にあった人のことを言います。

※相続人がいない場合には、相続人はいたが、全員相続放棄したような場合なども該当します。

どのような人が特別縁故者として認められるのでしょう。

法律では、

  • (1)被相続人と生計を同じくしていた者
  • (2)被相続人の療養看護に努めた者
  • (3)(1)ないし(2)に準じて「特別の縁故があった」人

となっています。この(1)~(3)に該当するか否かは、個別の事例ごとに家庭裁判所が判断しますが、一応、以下のような目安となります。

(1)は、いわゆる内縁の妻や夫、事実上の養親子が典型的です。(2)では、被相続人に対し、献身的に療養看護を尽くした者であれば、被相続人のいとこの子が認められたり、職場の元同僚、民生委員でも認められた事例があります。

以下、私が、担当し成果を上げた事例をご紹介します。

事例1

私が担当した事件で「特別縁故者」として認められた事例の一つは、叔母Aと甥Bの関係で、甥Bが被相続人だった事例です。

但し、Aは、単に、叔母だからということだけで、認められたわけではないのです。この方は、Bが若い頃、Bの母親から頼まれ、同居して世話をやいていた一時期があったこと、Bが死亡する何年か前からBに頼まれてBのための世話や看護のために再び同居し、入院してからも療養看護に尽くし、Aが葬儀も執り行った事例でした。

Aは、自分所有の敷地の上に建っていたB所有の建物の所有権と、その他のかなりの財産を分与してもらいました。

事例2

次に紹介する事件は(1)、(2)に該当しなくても(3)の要件で、認められた事例です(特別縁故者の申立をした人をCと表記します)。

Cさんの叔父の妻であったD(血のつながっていない叔母、叔父は死亡していた事例)の遺産も相続人がおらず、Dさんは遺言も書いていませんでした(もちろん、遺産を相続する相続人がいなくても遺言があれば、遺言が優先します)。

Cさんは、子どものいない叔父、叔母D夫妻に小さい頃からかわいがってもらい、その後も一定の行き来がありました(儀礼的な親族の付き合いの範囲を超える)。また、叔母さんが一人になって、引越や病院入院、手術の立ち会いなどもしており、緊急の場合の連絡先にもなっていましたが、特別に療養看護を長い間していたわけではありませんでした。但し、お葬式の参列者は、遠縁でもCさんとあと一人くらいだけでした。

実は、この人の場合、特別縁故者として認めてくれるか多少心配でしたが、家庭裁判所は特別縁故者と認めて、遺産の一部20%くらいの分与を認めたのです。

最後に

事例によっては、葬式を主催しただけでも認めている事例もあります。こうしてみると、最近の裁判所の考え方は、国庫に帰属させるよりも、内縁の妻、夫や事実上の養子のように被相続人と何らかの縁故関係にあった者に取得させる方が望ましいともうけられた制度の趣旨を制度の趣旨から、割に認める方向になっているのかも知れません。

従って、もし、そのような事例に遭遇したら、一度、申立をしてみても良いのかも知れません。その際は、是非、弁護士に相談することをお勧めします。

他方、相続人のいない人の場合、相続財産が国にとられるよりは、お世話になった人に遺したいと思うのであれば、やはり遺言をしておいた方がよいでしょう。「特別縁故者への分与」が認められるかは、一重に裁判官の判断にかかることや、お世話をしてくれた人が、申立をしてくれるかも不明だからです。このように遺言を作成したい場合も弁護士にご相談下さい。

「まきえや」2010年春号