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両親が入院中に預貯金等がすべて引き出されている!

[事件報告]

両親が入院中に預貯金等がすべて引き出されている!
~損害賠償請求の裁判で取り戻す~

村井 豊明弁護士 村井 豊明

遺産がゼロに!

高齢の両親が相次いで入院し死亡したので、預貯金等を調べたらゼロになっているという事件を担当しました。

4人兄弟の母が2004年7月に、父が2005年6月に入院し、両親とも入院したまま、母が2006年10月に、父が2007年4月に死亡したというので、京都に在住する長女が遠方にある実家の近くの銀行や郵便局で父母の死亡時の残高証明をとったところ、預貯金や簡易保険の残高はすべてゼロになっていました。実家の近くに住んでいる長男に聞いたところ、分割すべき遺産はないという回答だったそうです。

取引明細と払戻請求書等の取り寄せ

2007年秋に長女から相談を受けた私は、まず、銀行や郵便局に対し弁護士法23条の2に基づく照会(弁護士会を通じた照会)を行って取引明細と払戻請求書等のコピーを取り寄せました。当時、銀行や郵便局は、相続人の一人が取引明細などを直接請求しても、相続人全員の同意を要求し、全員の同意がない場合、取引明細などを送ってこなかったのです。そこで、やむなく弁護士法23条の2に基づく照会を行ったのです(1件当たり4,000円の手数料がかかります)。

なお、その後、2009年1月22日に最高裁判決が出て、相続人が複数いる場合でも、相続人が一人で金融機関に対し預貯金の取引明細や払戻請求書のコピーを請求できるようになりました。

そして、取り寄せた取引明細などを見ると、郵便局の簡易保険については長男がすべての死亡保険金や入院保険金を受領していたのです。2つの銀行と郵便局の預貯金については、長男の妻が、順次、払い戻しを受け残高はゼロになっていたのです。

損害賠償請求訴訟を提起

両親は、入院中、自ら銀行や郵便局に行くことはできなかったので、長男夫婦がすべての手続きを行い預貯金や保険金を取得したので、妹3人が長男夫婦を被告にして合計で1,500万円の損害賠償を求める訴訟を京都地裁に提起しました。

裁判の審理の過程で、弁護士法23条の2に基づく照会でも送付されてこなかった文書について、裁判所に文書送付嘱託を申立ました。裁判所はこれを認めて、銀行や郵便局に送付したところ、ほぼすべての文書のコピーが送られてきました。

これらの書類を見ると、例えば、先に亡くなった母が被保険者となっている生命保険金の受取人は父になっていましたが、長男が父の委任状を偽造して代理人となり生命保険金約200万円を受領していたのです。また、母の入院保険金について、長男が無断で代表者選任届に父と3人の妹の署名捺印を行って(偽造して)、相続人の代表者として入院保険金約40万円を受領していたのです。その他にも委任状を偽造するなどして200万円の保険金を違法不当に受領していました。

預貯金については、長男の妻が払戻請求書を偽造して、順次、払い戻しを受けていたのですが、その金額は総額で約1,200万円にのぼります。

裁判では、違法不当に取得した預貯金や保険金だけでなく弁護士費用も請求しましたので、請求額は1,500万円となったのです。

両親が贈与した?

被告である長男夫婦の言い分は、取得した預貯金や保険金は、両親の医療費、葬式代等に使い、残った分は両親から贈与を受けていたと主張したのです。医療費については、領収証がある分については認めましたが、葬式代は喪主である長男が負担するものであり、長男が香典をもらっているのであるから、他の相続人に負担を求めることはできないと主張しました。

贈与については、両親の書いた文書は一切なく、いつ、どこで、どのように言って贈与を受けたのか、具体的ではないと主張しました。もちろん長男夫婦も具体的な立証はできませんでした。

相続分4分の3を取り戻す

裁判の審理が進む中で、裁判所の和解勧告があり、領収書のある医療費を除いた分の預貯金や保険金を両親の遺産とみなし、長男夫婦はその4分の3を原告(妹)3人に支払うというものでした。長男夫婦は裁判所の和解勧告に従って和解に応じ、原告(妹)3人に合計で約1,000万円を支払うことによって解決しました。

「まきえや」2011年春号