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言葉巧みに商品先物取引に引きずり込まれ-裁判で勝利!

[事件報告]

言葉巧みに商品先物取引に引きずり込まれ-裁判で勝利!

奥村 一彦弁護士 奥村 一彦

Aさんは、建築施工会社の社長さん。ここ数年、建築不況で利益が低迷し、従業員の数も減らしてきた矢先、商品先物取引への勧誘の電話がかかりました。社会経験もあるAさんですから、ずいぶん警戒しました。ところが、先物取引会社の従業員は言葉巧みに取引に引きずり込んでいきました。

客殺しへの道

どうやって、契約させたのでしょう。それは、商品先物取引のリスクを覆い隠し、安全なアービトラージという(私もはじめて聞きましたが)取引だと言いくるめたのがはじまりです。日経新聞を用いて、「社長は先物取引をするんじゃないですから、アービトラージですよ、半年で800万円儲けさせて見せます、任せて下さい」と来る日も来る日も説得に来るのです。

振り返って考えると、根拠は日経新聞の記事だけで、会社から提供されたのは全部先物取引の書類ばかり。「社長は安全な取引をするのですから大丈夫です」とまるで先物取引はしないかのような説明をたたみかけて来ました。
  Aさんが言うには、説明する従業員が、自分と同じ九州出身で、木訥なもの言いであったし、信頼できそうな風貌風格であったというのです。

詐欺にあった人は皆いいます。目の前の人が詐欺を働いているような感じには見えなかった、まさかこの人が嘘は言うまい、と多くの人を信じ込ませる技術が正に詐欺の手段なのです。

客殺し(1)─両建ての罠

次に、取引の過程で、さらに深い地獄に落とされて行きます。
  取引が始まると、会社が発行する取引の記録とは別に手書きのファックスの報告が届くようになりました。毎日利益が出ているという報告書です。

しかし、それらは全部素人だましです。商品先物は、将来売る商品と将来買う商品を購入する(これらを売玉(ギョク)を建てる、買玉を建てるといいます)取引です。同じ商品について、将来売る商品(売建)と、同時に将来買う商品(買建)を購入することを「両建て」といいますが、値動きは片方に不利で、片方に有利に、必ずなります。そこで、有利になっている玉の方を多く仕切れば(決済すれば)、利益がでているように見えるのです。値が上がっている時は、買い玉が利益を出していますので、買玉を売玉より多く仕切ればいいのです。必ずプラスです。

ここから地獄がはじます。プラスの玉を多く仕切れば、マイナス玉が残ります。取引がマイナスであることを知られたくないので、取引員はマイナス玉を仕切りません。先物取引はいつか現物を購入する時期が来ますので、それまでに仕切らなければなりません。期限ギリギリになってはじめて仕切り、巨額のマイナスを精算することになるのです。先物取引は、証拠金を提供しなければなりませんが、その10倍以上の額の取引をしていますから、200万円の証拠金が全部取られたときは、2,000万円以上の損害となっています。足らなければ追加を求められます。これを拒否するとこれまでの投資が全部水の泡になりますよと脅しを掛けてきます。

客殺し(2)─自己玉

先物取引会社は、通常、客と反対取引をしています。客に買玉を建てさせると会社は売玉を建てます。なぜそうするかと言うと、取引終了時に商品先物取引の売りと買いの枚数が同じ場合、証拠金を商品取引所に預けなくてもよい制度になっています。しかも売玉と買玉の枚数を同数にあわせるために会社自身が取引終了後に参加する不正の温床となっているシステムがあるのです。

会社はプロ集団ですから自分が損をする取引を好んですることは絶対に考えられません。顧客が損をし、会社が得をする取引をするのは必然です。最高裁判所は、2009年12月18日、それまでは自己玉を問題視していなかったのを覆し、「信義則上、その取引を委託する前に、委託者(注、顧客のこと)に対し、その取引については本件取引手法を用いていること(注、先物会社が自己玉をしていること)及び本件取引手法は商品取引員と委託者の間に利益相反関係が生ずる可能性の高いものであることを十分に説明する義務を負うものというべきである」としました。

本件でも、相手方から膨大な資料を出させましたが、案の定、全部自己玉を建てていました。

客殺し(3)─手数料

先物取引では売買のたびに手数料を取っています。この手数料が馬鹿にならない額になるのです。本件でも、全損害金のうち約4割を占めていました。必要のない売買を繰り返すのです。

Aさんは、3,000万円をつぎこまされました。それでもまだ足りないと言って追加まで要求されていました。

Aさんは当初、大阪の弁護士に相談しましたが、負けるよと言われ諦めていました。時効の3年が経過する直前に相談に来ました。私は相談を聞いてなんとか助けてあげたいとすぐに訴状を提出し、裁判にしました。証拠を深く吟味してゆくうちに詐欺の構造が徐々に明らかになっていきました。結局、相手から全額に近い額を返還するとの和解を提案されて解決しました。先物取引に引っ掛からないことと共に、巻き込まれた場合でも最後まで諦めないことが大事です。私たちがお手伝いします。

「まきえや」2011年春号