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原発を卒業する運動を

原発を卒業する運動を

渡辺 輝人弁護士 渡辺 輝人

炉心溶融、爆発は人災

2011年3月11日以降、東日本大震災に端を発して東京電力福島第一原子力発電所の爆発・広域被ばく事故が起き、現在も被害が拡大しています。

この事故では、地震自体により第一原発に電気を送る送電線が破壊され、津波により予備のディーゼル電源も喪失、外部電気の導入に使う予備電源盤も水没しました。直近の報道では想定内の地震で原子炉が壊れていた可能性も出ています。第一原発は8時間しか持たない予備の電池が切れれば大爆発しかねない深刻な状況で、東電幹部も震災直後から危機的状況を把握していました。電源喪失の際に外部から電源を供給する用意がなかったことも驚きです。

このような複合的な災害による原発の電源喪失は、学者が前々から指摘し、共産党の吉井英勝議員も繰り返し政府を追及してきたことです。東京電力自身も2007年に今後50年の間に第一原発に15m超の津波が襲来する可能性を予測していました。津波による電源喪失に至る事態は予測可能だったのです。

東京電力では電源喪失後もベント(ガス抜き)や炉心冷却のための海水注入の判断が遅れました。これが核燃料の水面上への露出、炉心溶融(メルトダウン)、水素爆発へとつながったと言われています。

第一原発の事故は、予測可能なのに対策を取らなかった点でも、電源喪失後の対応のまずさの点からも、完全な人災と言えそうです。

情報の隠蔽は許されない

今回の原発事故では東京電力、政府による情報の隠蔽が深刻です。東京電力は震災直後から危機的状況を把握していたのに国民に情報を提供しませんでした。最近は、第一原発の状況を伝える報道が減り、重大な事実を後出し、小出しにする姿勢が目立ちます。

また、政府は放射能の飛散状況を20分で計算する「SPEEDI」というシステムを持っていますが、事故直後の一番肝心な時期に情報が公開されず、今も十分に公開されてるとは言い難い状態です。

東京電力、政府が放射能汚染の状況を隠蔽して被害を被るのは国民です。今後予想される日々の健康被害の回避や、損害賠償、安全対策、ひいては電力政策の転換を考えても、詳細な情報公開が欠かせません。もちろん放射能漏れが収束するまでの過程も完全な公開が必要です。私たちは東京電力、政府の情報隠しを強く批判していく必要があります。

東電・財界の責任逃れと国民への負担押しつけの策動

原子力損害の賠償に関する法律3条1項は、原発事故等に関する責任を原子力事業者(今回の事故では東京電力)に集中させ、「異常に巨大な天災地変又は社会的動乱によって生じたものであるとき」以外は事業者の責任を免除しません。人災により被害を引き起こした東京電力が責任を逃れる余地はないはずです。

ところが、経団連の米倉弘昌会長は、原発事故直後に「千年に1度の津波に耐えているのは素晴らしいこと。原子力行政はもっと胸を張るべきだ」と述べてひんしゅくを買い、4月26日にも政府が補償を担うべき、と発言しました。東京電力に巨額の融資をしている金融機関も東京電力の責任を1兆5,000億円に限定すべきだ、との考えを表明しました。東京電力自身も、社長が記者会見で「賠償責任の免責があり得る」と表明し、被害者が賠償金の仮払いを求めた仮処分手続でも、今回の事故が「異常に巨大な天災地変」に当たり、東京電力の責任が「免責されると解する余地がある」との見解を示していました。

もし東京電力が負担を逃れた分は政府が補償せざるを得なくなり、国民の税金負担が重くなります。財界は消費税増税等の庶民増税による負担を主張するのが目に見えています。責任者に責任を取らせなければ、今後の政策見直しも困難になっていきます。

賠償の枠組み、責任追及については今後もせめぎ合いが続きます。国民への責任転嫁を許さず、東京電力、経営者、銀行等の債権者、株主にしっかりと取らせることが極めて重要です。

原発を卒業する運動を

第一原発が放射能をまき散らすことで、今現在も多くの国民に計り知れない健康上、財産上の損害を与え続け、日本の狭い国土に不毛の地を作り出した可能性すらあります。また、復旧作業にあたる労働者の方々も日々命の危険にさらされています。それでも1年後に放射能漏れが止まっている保証すらありません。

また、電力業界は必死に「原発は安い」と宣伝してきましたが、様々な補助金や廃棄物の処理費用を含めると、主要な発電方法では一番コストが高いことが明らかになっています。さらに、今回の原発事故によって発生する賠償金の総額は、東京電力が原発によって得てきた利益を大きく上回る可能性もあります。高レベル放射性廃棄物を数万年も管理することの安全面、費用面での難しさも改めて思い知らされました。

私たちの現状を振り返ると、京都市も、若狭湾に林立する原発からは数十kmしか離れていません。若狭湾にある原発で事故が起これば、京都に放射能が降り注ぐ可能性があることはもちろん、私たちの飲み水である琵琶湖の水が汚染されます。危険で、管理の見込みも立たず、かつ費用の高い原発をなるべく早く「卒業」するのが関西でも社会的な課題であることが明らかになったと言えそうです。そのために私たちが学ぶべき事は、エネルギー問題、環境問題、医学の問題、労働の問題等多岐にわたります。例えば、24時間どこでも冷えた缶飲料を買えるような生活スタイルの変更も迫られています。しかし、もはや、見て見ぬふりは許されません。原発を卒業するための運動にともに立ち上がりましょう。

「まきえや」2011年春号