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イギリスは変わるか~選挙制度改革調査旅行~

イギリスは変わるか~選挙制度改革調査旅行~

奥村 一彦弁護士 奥村 一彦

国民投票の結果は残念ですが

この原稿を書いている最中、5月5日、イギリス全土で行われた地方議会選挙と選挙制度改革に関する国民投票の開票が行われました。結果は現行の小選挙区制を維持することになりましたが、確実に変わっていく方向は出たと思います。

今年2月下旬にイギリスへ

わがイギリス調査団は、イギリスで、今200年ぶりの選挙改革が行われていると聞き、そのただ中で調査しようと立命館大学の小堀眞裕教授を中心にして自由法曹団員3名が加わり(京都第一法律事務所の渡辺輝人弁護士と私、千葉の馬屋原潔弁護士)、総勢4名という小規模でしたが、一週間精力的に国会議員、政治学者、改革運動を担う人々にインタビューを重ねました。

まず選挙制度について

イギリス下院の国会議員を選ぶ選挙は小選挙区制です。全国を650に区割りし(今回600に削減)各選挙区で一人の当選者を決める方式です。

イギリスは伝統的に保守党と労働党が勢力を二分し、このためある時期から小選挙区制を導入して、保守党か労働党の議員を選ぶ選挙を繰り返してきました。勝った方が政権を担当することになります。イギリスは下院を制した政党が制権を掌握し、裁判所からも、上院(名誉職)からもチェックを受けない下院王国と言っても過言ではありません。それだけに小選挙区制は重大な問題をはらんでいます。

現在では、政治の複雑化、少数者の権利を擁護する運動の展開、サッチャーの新自由主義路線にもブレアのイラク戦争荷担にも反対する、保守党も労働党も支持しない第三の勢力が台頭してきました。しかし、第三の政党は小選挙区制ではなかなか議席が取れません。何故なら、小選挙区制では、数の上では保守党や労働党と互角に肩を並べてもわずかの差によって落選するのです。

劇的な変化

しかし、昨年の下院議員選挙で、自由民主党は57議席を確保し、保守党(306議席)と労働党(258議席)がいずれも過半数の議席を取れなかったので、どちらの党も自由民主党と連立を組まなければ政権を取れないことになり、自由民主党と保守党が連立政権を組むことになりました。
  保守党は自由民主党と協定を結び、選挙制度を改革すると約束したので、今回の選挙制度改革の国民投票が行われたのです。

どこを新しくしようとしたのか

区割りは小選挙区制のままですが、候補者に順位をつけて、誰も過半数に達しなかった区で、最下位の候補者から順に、投票用紙に記載した順番に従い、票を他候補に回して行きます。

そうすると、最初の開票では、2位以下の候補者でも当選の可能性が十分出てくる制度です。

改革の理由は?

では何故イギリスで選挙制度の改革が行われるのか?それが今回の調査旅行の目的でした。

最も強かった意見は、保守党と労働党のどちらも過半数の票が取れないということは、どちらも国民の代表とは言えない政党になっているのに、議席だけは過半数を取ってしまう小選挙区制は民主主義の破壊ではないかという議論です。その背景にあるのは、サッチャー時代に強権的に福祉を切り捨てて弱者をいじめたこと、ブレア時代にブッシュとイラク戦争を始めたことへの強い批判があるようです。残念ながら今回は導入されませんでしたが、イギリスはゆるやかに変化する国です。必ずや小選挙区制を改善する日がくるでしょう。

我が国でも改革を!

 1994年、日本では、イギリスに見習え、これが世界の大勢だなどとして小選挙区制が導入されましたが、すでにその母国イギリスでは変えようとされていたのです。イギリスで改革が本格化すれば、日本でも小選挙区制が民主主義のためには役に立たないとの議論が巻き起こることでしょう。その時に私たちの調査が役に立てばと願っております。

調査団員と英国労働党議員。[左から馬屋原(弁)、私、ベンブラッドショウ議員、小堀立命館大学教授]撮影は渡辺輝人調査団員。
議員会館で。調査団員と英国労働党議員。
[左から馬屋原(弁)、私、ベンブラッドショウ議員、小堀立命館大学教授]
撮影は渡辺輝人調査団員。

「まきえや」2011年春号