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事件報告 京都会館と新景観政策を守れ!

事件報告 京都会館と新景観政策を守れ!

藤井 豊弁護士 藤井 豊

京都会館の解体差止めを求める裁判

 京都会館は、市民の文化芸術の振興を図るための拠点施設として、1960年4月にオープンし、長年、コンサート、集会、講演会や映画の上映会などに活用され、長年にわたり市民から親しまれてきましたが、京都市は、9月10日から京都会館第1ホール建て替えのための解体工事に着工しています。

 2012年8月13日、京都市民112名が京都地方裁判所に対し、京都会館の解体の差し止めを求める住民訴訟を提起しました。京都会館の解体には、以下に述べるような重大な問題点があります。

京都会館の文化財としての価値を棄損すること

 まず、第一には、京都会館が、京都のみならず、日本、さらには世界において重要な文化遺産としての価値を持っていることです。

 京都会館は、モダニズム建築における日本を代表する建築家・前川國男が設計監理を行った建築物です。日本建築学会賞、建築業協会賞、建築年鑑賞を受賞し、近年もDOCOMOMO Japan(ドコモモジャパン)によって「文化遺産としての近代建築」として評価され、「日本におけるDOCOMOMO 100選」に選定されるなど、その文化的価値が再認識され始めていました。

 京都市の建て替え方針に対しても、日本建築学会やDOCOMOMO Japanが保存を求める意見書を提出し、さらには、ユネスコの諮問機関であるイコモスの「20世紀遺産に関する国際学術委員会」が、京都会館を「遺されるべき文化遺産」と評価し、「遺産危機警告」を作成する旨、京都市に通告を行っています。

 歴史観光都市を謳う京都市がすべきことは、解体ではなく、京都会館の価値を観光政策に反映することです。

新景観政策からの逸脱

 京都市の新景観政策は、2007年9月に施行されました。それまでのマンション等の乱開発による景観、街並みの破壊に対する反省から、建物

の高度規制を強化するなどの政策転換をしました。京都会館を含む岡崎地域は15mの高度規制を行っています。高度規制の例外については、条例により特例許可の手続きを経なければ認められないことになっています。

 ところが、京都市は、京都会館の建て替えに当たり、岡崎地域に都市計画法の地区計画の手法を取り入れ、京都会館第1ホールのエリアの高度規制を15mから31mまで緩和しました。これは、新景観政策において高度規制を緩和する際の手続要件とされている特例許可の仕組みを排除する方法であり、京都市自らが、新景観政策の下で制定した条例をないがしろにするものでした。

 また、京都市の新たな第1ホールの設計は、四角箱が京都会館の大きな庇の上に乗っかったようなものであり、建物のもつボリュームが周囲に圧迫感を与え、現在の岡崎地域及び疏水の景観を大きく破壊するおそれがあります。

 京都市は、岡崎地域に続き、株式会社島津製作所の三条工場(西ノ京桑原町)及び京都学園大学が進出を計画する山ノ内浄水場跡地(右京区山ノ内五反田町)において、地区計画を用いた高さ規制を緩和等が進められています。このような恣意的な地区計画の利用は、新景観政策を骨抜きにしかねない重大な問題です。

 京都弁護士会も京都会館の建て替え問題を含め、新景観政策に反する動きに対し、繰り返し警告の意見書を発表しています。

まとめ

 京都市が設置した有識者会議である京都会館再整備検討委員会は、2006年ころには、建替えを否定し、改修を妥当とする方針を示していました。

 京都市が、この方針を変更して建て替えに突き進むのは、京都市政においてこの間目立っている特定企業との癒着の問題があります。梅小路公園の京都水族館はオリックス不動産に低額の賃料で貸し渡しているものですが、京都会館についてはロームに命名権を売却しています。このような、市民の共有財産の利用について、特定の企業と秘密裏に計画を進める京都市の態度は、民主主義を無視するものであり許されません。

 門川市政は、2010年、岡崎地域を京都の富裕層向け観光戦略、国際会議等の誘致戦略の拠点と位置付ける方針を出し、京都会館の建て替えもこうした流れの中にありますが、一部の富裕層のための京都ではなく、貧富の境なく、京都を愛する広範な人々とともに、京都のまちを守る京都市に変えていく取り組みが求められています。

 裁判の第1回期日は、10月17日に開催されます。京都市のまちづくり政策の問題を追及していきたいと思います。弁護団(飯田昭、寺本憲治ほかが参加しています)

「建替案」
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「現状」
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「まきえや」2012年秋号