あなたのために全力で 暮らしと人権を守って48年 京都最大の法律事務所(弁護士19人、事務スタッフ25人) 法律でお悩みの方はお気軽にご相談ください。0120-454-489

事件報告 原因不明の骨折、適切な措置を怠った施設の責任を認める

事件報告 原因不明の骨折、適切な措置を怠った施設の責任を認める

藤澤 眞美弁護士 藤澤 眞美

 本件は、社団法人長安会が開設運営している特別養護老人ホーム桃花苑で起きた骨折事故です。

 Kさんは、日常生活全般(食事、排泄、おむつ交換、体位交換、入浴、衣類の交換、施設内の移動等、日常生活に必要なすべての動作を担当職員が介助していた。)で介護を要する重度の認知症で、桃花苑に長期入所中でした。

 平成21年4月22日、Kさんの夫が、Kさんを介助しても立てなくなっていることに気付き、翌日、桃花苑の管理医師に診察をお願いしましたが、同医師は適切な診察等を怠りました。

 Kさんの容体は思わしくなく、Kさんの夫はたまりかねて、同月28日にも、管理医師にKさんが立てないことを伝えました。管理医師は「認知症が進行するとそのようなことがある」と骨折の可能性を視野に入れていませんでした。そして、認知症との関係で精神科の病院の受診をKさんの夫に勧めました。

 Kさんの大腿骨骨折が判明したのは同年5月1日で、その精神科の医師がレントゲン写真を撮ってくれたからです。Kさんは、1週間以上にわたって、相手方の施設内において放置されたことになります。

 本件骨折の部位である大腿骨頚部は、年齢的な要因あるいは骨粗鬆症などの病気によって骨の弱くなった高齢者、特に女性が、転倒等強い外力が加わることによって骨折しやすい部位の一つであり、Kさんは骨粗鬆症でした。したがって、担当職員がKさんに対して必要な介助を行う際には、Kさんに対し強い力がかかることのないように注意すべき義務があったのにこれを怠り、漫然と介助してKさんの右大腿骨頸部付近に強い外力をかけ骨折させた疑いがあります。

 京都地方裁判所は、本年9月19日、Kさんの骨折の原因が特定できない以上、傷害そのものの責任を相手方に負わせることはできないが、推定される骨折の日以降、相手方が診察等適切な措置を怠ったことにより、Kさんが苦痛を受け続けたとして慰謝料の支払いを命ずる判決を出しました。「施設内の事故ではなく、桃花苑から精神科の病院でレントゲンを撮るまでの間に骨折をした」という相手方の主張は斥けられました。

 外部からはわかりにくい施設内の事故について、施設の責任を認めた判決です。

「まきえや」2012年秋号