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事件報告 カテーテルによる血管損傷事件

事件報告 カテーテルによる血管損傷事件

奥村 一彦弁護士 奥村 一彦

Aさんは、閉塞性の動脈硬化症の造影剤を用いる検査のため、カテーテルによる動脈造影検査途中、カテーテルに使用するガイドワイヤーが下腸間膜動脈分枝部分を突き破り、その結果S状結腸壊死等を発症してしまい、約1ヶ月後、多臓器不全により永眠されました。

遺族は、カテーテルの操作の過失が医者にあったとして、2010年10月裁判を提起し、2011年12月勝利的和解が成立しましたので報告します。

発端

Aさんは、歩行中に下肢疼痛、しびれの症状を感じたので、病院に行き、下肢エコー検査をしました。その結果、左右下肢動脈に狭窄が見られ、閉塞性動脈硬化症と診断されました。そして、その病院で、下肢アンギオ(下肢動脈造影)を実施し、今後の治療計画を立てることを目的に、2日間の入院予定で、検査を受けることになりました。施術方法は、局所麻酔下に、左肘動脈より造影用カテーテルを腹部大動脈まで挿入し、造影剤を注入して両下肢の動脈を造影するとの説明を受けました。

カテーテル
カテーテル

検査

検査は、左肘の動脈にシース(固定するもの)を挿入し、その後その中にピッグテイルカテーテルという管状のカテーテルを挿入します。そして、その管の中をガイドワイヤーという柔らかい金属の線を通して、カテーテルの先端をコントロールし、左上腕動脈→大動脈弓部→下行胸部大動脈→腹部大動脈と進めます。

Aさんは、そのようにして、骨盤部、大腿部、膝部、下腿部を造影し終わりました。今度は、カテーテルを抜かなければなりません。そのために、再度ガイドワイヤーを挿入してカテーテルを抜きましたが、その直後から、Aさんは腹部の痛みを訴え、その後下腹部に限局した強い疼痛と膨満感が発生しました。

医療過誤の発見

当初は、薬剤を投与しましたが、痛みは強化されるばかりで、そこで腸管虚血が疑われました。そして救急車にて京都第一赤十字病院に搬送され、救急救命センターで、緊急造影を行い、下腸間膜動脈分枝のS状結腸動脈が穿破されていることが判りました。損傷部分からの出血を止血しましたが、血管を塞栓してしまうために、腸管壊死となることが予想されました。今後は、血管の側副血行が発達して腸管壊死を免れる可能性にかけるしかありませんでしたが、側副血行は形成されず、腸管壊死となり、お亡くなりになりました。

提訴

裁判では、担当医は、カテーテルの抜去に際し、カテーテル先端部の位置をコントロールするガイドワイヤーにより血管損傷が起こらないように常に透視をしながらその位置を確認する義務があるのにそれを怠り、その位置を正確に確認せず、ガイドワイヤーの先端を、腹大動脈から分岐する下腸間膜動脈内に挿入させてしまい、下腸間膜動脈から分枝するS状結腸動脈の分枝部位を穿破して損傷させたものであると主張しました。

病院の反論

病院側は、きちんと透視によりコントロールしていた、ガイドワイヤーはカテーテルの先5センチ以上は出ていなかった、もともと血管が脆く、たまたま検査時に破裂した、などと主張しました。

勝利的和解へ

しかし、透視により監視していたという確実な証拠はないこと、血管は確かに脆い状態ではあったが、狭窄の程度は高くなくそれが原因で破裂を起こしたという証拠はないこと、何よりカテーテル抜去直後から腹痛を訴え、損傷部位もカテーテルで造影検査を行った位置から少し先であり、迷入しやすいことが知られていることから、損傷は検査時の操作が原因で発生したこと、搬送時には担当の医者は認めていたこと(裁判になって否定)などを根拠に、裁判所は過失を認め、提訴から1年で勝利的和解が成立しました。

医療において事故が起こることは時々あると聞いています。少しでも疑問を感じたら、弁護士のアドバイスを受けて下さい。

人体側面の解剖図と誤って迷入した箇所
「まきえや」2012年春号