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事件報告 京都大学の不当な「賃下げ」を許すな!

事件報告 京都大学の不当な「賃下げ」を許すな!
~就業規則の一方的な不利益変更は無効~

岩橋 多恵弁護士 岩橋 多恵

京都大学教職員による提訴・訴訟の現段階

2013年6月11日、京都大学教職員96名(教員54名、職員42名)が原告となって「京大による一方的賃下げ無効・未払い賃金請求裁判」を提訴しました。原告らは、すべて京大職員組合の組合員(退職者2名も、元組合員)です。

先日、9月10日に第1回期日が開かれ、傍聴者は90名以上にものぼり、本件の裁判への関心の深さが伺われます(第2回期日は、11月19日午後2時です)。

本件提訴に至る経緯

政府は、公務員バッシングを追い風に、震災復興財源確保を名目に、公務員の人件費削減を行ってきました(国家公務員給与削減法成立)。

そして、これに呼応して、文科省は、独立法人化した京都大学にも、給与削減をするよう要請しました。

ところで、京大は、今から7年前、独立法人化され、教職員は、公務員の身分でなくなりました。その点で民間の労働者と同様の身分となり、民間労働者と同様の労働法の適用があることになったのです。従って、国は、一方的に大学教職員の人件費を削減せよなどと押しつけることはできないのです。

しかしながら、京大当局は、国(文科省)に対し、何ら異議を唱えることもなく2012年8月1日から最高4.35%の賃金減額を行うことを決め、就業規則の変更を行いました。労働者には賃金減額規程の施行直前(2012年7月27日)にホームページに変更した就業規則(特例規程)を掲載し、総長メールなるもので知らせただけで、事前に十分な説明すらしていません。また、京大職組とも形式的な団体交渉を3回程度行ったのみで、合意どころか、何らの説得的な説明もなく、賃金減額を強行してきたのです。

本件裁判の意義について

京大教職員にとってのこの裁判の意義は、賃金が家族の生活を支える最も根源的なものであること、このような重要な労働条件を労働者の同意のないところで、一方的に不利益に変更したことを許さないということです。

ところでこの裁判は、第1回裁判でも多くの傍聴者であふれたことからもわかるように、多くの地方公務員、民間労働者が重大な関心をもって、見守り、支援しています。

このように大きな関心と支援を得たのは、この裁判が国家公務員の給与減額の理由とされた震災復興財源名目があくまでも口実だったことも明らかにしながら、根拠のない賃下げに対し、異議を唱えたことにあると思います。

就業規則の一方的不利益変更は、無効である

「労働契約法」では、労働者が同意していない限り、就業規則の不利益変更には「合理性」が必要だと明確に定められています。これまでの判例の到達点では、労働者の失われる利益が、重大なものである場合は、就業規則不利益変更が有効と言えるためには、変更の必要性が、差し迫った高度なものであることや合理的な内容であることなど、その他の厳格な要件を付しています。

しかしながら、京大は、不利益変更の必要性について単に「大臣の要請があった」「社会的責任」などという抽象的な理由しか述べず、京大の財政上の差し迫った高度の必要性どころか、財政上の必要性があったことすら現時点においても明らかにできていません。それどころか、個々の労働者が書面で異議を申し出ずに賃金を受領したとして「黙示の同意があった」などととんでもない答弁をしてきました。既に、このこと自体、就業規則の不利益変更の必要性がなかったということを事実上認めたというべきでしょう。

皆さんの更なる理解と支援を

この裁判は、前述したとおり、社会的に大きな影響を与える問題だと思います。私たち弁護団は、今後とも総力を上げてこの裁判に取り組んでいきます。

皆さんの更なる理解と支援を期待します。

[弁護団]村山 晃、岩橋 多恵、渡辺 輝人、谷 文彰、寺本 憲治、高木 野衣

提訴後の記者会見
提訴後の記者会見
「まきえや」2013年秋号