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事件報告 交通事故と低髄液圧症候群(脳脊髄液減少症)

事件報告 交通事故と低髄液圧症候群(脳脊髄液減少症)

秋山 健司弁護士 秋山 健司

事例の概要

交通事故による低髄液圧症候群(脳脊髄液減少症)の発症を主張したところ、一定程度の治療費、休業損害、後遺障害に関する損害の賠償が認められました。

交通事故による受傷と症状の悪化

被害者のAさんは、2001年、普通自動車で直進していたところ、その左側から進行してきた加害者車両に側面衝突されるという事故に遭いました。

当初Aさんは、頸椎捻挫、腰椎捻挫等の診断を受けました。ところが、いくら通院して治療を重ねても、体全体に痛みがあり、立っているか座っていると激しい頭痛がして、横になると改善するというつらい状態がいつまでも続きました。激しい頭痛や、頸部痛、腰部痛、めまい、耳鳴り、血圧の急上昇、不眠と過眠が交互に出現するといった症状が悪化したため、日常生活にも大きな影響を受けるようになりました。

Aさんは、激しい頭痛やめまい、耳鳴りといったつらい症状の原因を診断してくれる医師を探して、事故から約2年半以上経過した後にB医師と出会いました。B医師は、Aさんの症状の原因は、外傷性低髄液圧症候群によるものと診断してくれました。

B医師のもとでブラッドパッチ施術(自分の血を硬膜外に注射し、髄液の漏れを止める)を受けたところ、体全体の痛みは残るものの、激しい頭痛は嘘のように消えていったそうです。

低髄液圧症候群(脳脊髄液減少症)とは

低髄液圧症候群(脳脊髄液減少症)とは、交通事故による鞭打ち症やスポーツ外傷などにより髄液が漏れ、髄液圧が低下するために、Aさんのような頭痛やめまい、耳鳴り、倦怠など種々の症状が出てくるという病気です。これまで医学界の常識では「髄液はめったに漏れない」とされており、交通事故によりこの病気が発症したと主張しても認められず、それに関する治療費等の賠償が認められることは著しく困難とされていました。本件でも、加害者側の保険会社は、Aさんの外傷性低髄液圧症候群の診断を争い、治療費等の損害賠償を拒否しました。

しかしながら、学会発表などから、2000年頃よりこの病気のことが知られるようになり、2007年には、厚生労働省に脳脊髄液減少症の診断・治療に関する調査研究班が置かれまし た。

提訴

Aさんから相談を受けた私は、2008年、低髄液圧症候群の発症を主張して提訴しました。上記のとおり、厚生労働省での調査研究が始まったばかりで、低髄液圧症候群に関する医学的な診断基準が公に定まる前の時期における訴訟には、大きな困難もありましたが、B医師の協力も得ながら、とにかく事故前と事故後の身体状況に顕著な差が生じていること、ブラッドパッチ施術後には快方に向けた変化が現れたことを強調しました。また、厚労省研究班の研究成果に照らしても、Aさんの症状は低髄液圧症候群によるものであることを主張・立証しました。

高額の損害賠償が認定

裁判所は、厚労省研究班の診断基準(2011年12月に中間報告を発表)に照らしても、低髄液圧症候群そのものの発症が証明されたとはいえないとしました。しかし、B医師の診断がなされた当時の一般的な医学水準を前提とすれば、B医師がAさんについて低髄液圧症候群を疑い、施術を行うことは合理的であったと判断しました。そして治療費や休業損害、入通院慰謝料、後遺障害慰謝料についても、一定程度事故との因果関係が認められ、総額としては1,000万円以上の賠償を受けることができました。

被害者の立場に寄り添って最大限尽力します

交通事故に起因して低髄液減少症(脳脊髄液減少症)が発症するという主張については、長年、暴論として受け入れられず、裁判でも否定されることが続いていました。また被害 者は、適切な医療が受けられない、健康保険の適用もないという状態に置かれていました。

そのような中で、一定程度Aさんの訴えが認められたことに寄与できたことを大変嬉しく思っています。今後も交通事故の被害に対する正当な賠償の実現のために全力を尽くしたいと思います。

「まきえや」2013年秋号