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事件報告 過労自死に追い込んだ会社が遺族に謝罪と補償~大手不動産会社の営業マンの過労自死事件~

事件報告 過労自死に追い込んだ会社が遺族に謝罪と補償~大手不動産会社の営業マンの過労自死事件~

村山 晃弁護士 村山 晃

青年の過労自死事件

大手不動産会社で営業マンとして働いていたAさんは、今から2年ほど前、パワハラを示唆する遺書を残し、自ら生命を絶ちました。厳しいノルマを課されて毎月100時間を越える長時間残業が続き、上司から厳しく叱責される中で、入社からわずか8ヵ月、まだ30歳をすぎたばかりの、早すぎる死でした。

営業マンの過労死・過労自死

働く人たちの中でも営業マンの増加は右肩上がりを続けています。そして、以前より指摘されているのは、営業マンに過労死や過労自死が多いという傾向です。

その原因は、難しい話ではありません。勤務時間が決まっていないこと(時間管理のないこと)、そんな中で過酷なノルマが決められているため、必然的に長時間残業になるのです。中間管理職が、さらに上から命じられるノルマを押しつけるため、営業成績が思わしくないとしてパワハラ問題が起こります。

今回のこの事件も、日本における営業マンの労働環境の過酷さを端的に表すものでした。

同時に指摘できるのは、若い人たちが、その犠牲になっているという傾向です。

異例の早さで出された労災認定

最近の取り扱いは、以前とは、だいぶ違っています。自死事件は、資料も少なく、本人が亡くなっているため、事実の認定に時間がかかります。そのため、以前は、相当な期間が必要でした。また、ご遺族も、なかなか弁護士の門をたたこうとされません。遅れた分、資料が散逸してしまうことも多かったのです。

今回は、ご遺族の行動は早く、毅然としたものでした。会社に原因究明を求める一方で、当事務所にもすぐに相談にお越し頂き、労災申請に向けた手続きが始まりました。結果的に、この初動の早さと想いの強さが、労災認定と会社からの賠償を勝ち取る要因になったと思います。

会社からパソコンデータ等の資料や叱責の内容についての報告書を提出させ、Aさんの労働時間と仕事の内容をできるだけリアルに再現し、ご遺族の証言もそろえて労災申請に踏み切りました。申請後も労基署と面談して申し入れを行った結果、申請から労災認定まで5ヵ月を切るという異例の早さで認定を得ることができました。

それだけAさんの労働実態の過酷さと、ご遺族の想いが、労基署にも伝わったのではないかと思っています。

会社は責任を認め謝罪

独身の青年労働者の労災補償は、必ずしも十分なものではありません。また、会社の責任が明らかにされたわけでもありません。そこで、会社の責任を明らかにさせ、きちんとした補償を求めて会社に申し入れをしました。

ここからが、また最近の大きな変化です。以前は、労災で認定が下りても、会社が自分のところの責任を争うところが多かったのですが、そうして裁判になった結果、ほとんどの裁判で遺族が勝訴をしてきました。そうすると、会社のイメージが下がるだけで終わってしまいます。

今回の件では、会社の反応が早かったことも大きな特徴でした。会社は、裁判になることを回避し、遺族の要求をのんで、全面的に責任を認め、謝罪をしました。そして適正な補償を行ってきたのです。労災認定から半年後に解決をしたのです。

残された課題

事件が解決してもAさんは戻ってはきません。二度とこのような悲惨な事件が起きないようにするための取組みは、まだまだ続きます。

会社が遺族に宛てた書面では、「このようなことが二度と繰り返すことがないよう適正な労務管理を尽くすことが会社の責任であると痛感しています」との文言があります。働く人が元気で健康に仕事をできる環境をつくること、それこそがAさんやご遺族への償いであり、会社の責任です。

こうして一つ一つの事件で会社の責任を追及してくことは、とても大切なことです。同時に、今、進められている過労死防止基本法制定の運動を強め、過労死・過労自死を生み出している日本社会の喉元に迫る取り組みも大変重要なことです。そうしたことを通して、過労死・過労自死のない社会を作るため、これからも力を尽くしたいと思います。

「過労死防止基本法」制定への取り組み

過労死防止基本法制定京都実行委員会・過労死弁護団 弁護士 寺本憲治

現在、労働基準法では1日8時間、週40時間以内の労働と定められていますが、これは十分に機能していません。過労死の認定基準とされている「時間外労働が1ヶ月100時間、又は2ヶ月以上平均して80時間」を越えて働いている人々は、全国に100万人いると言われています。働き過ぎによる過労死をなくすために、「過労死防止基本法」を制定し、国が総合的な対策を行っていく必要があります。

私たちの求める「過労死防止基本法」の内容は大きく分けて3つです。[1]過労死はあってはならないことを国が宣言すること、[2]過労死をなくすための国・自治体・事業主の責任を明確にすること、[3]国は過労死に関する調査・研究を行うと共に総合的な対策を行うこと、の3つです。

今、私たちは、この「過労死防止基本法」の制定に向けて、全国で100万人の署名を集めています。京都でも、毎月各地にて署名を集める街宣活動を行っています。皆様にも是非とも署名にご協力頂き、過労死防止に向けて力を貸して下さい。よろしくお願い致します。

「まきえや」2013年春号