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事件報告 定年後の再雇用労働者の身分を守れ!~JMIU日本電産事件

事件報告 定年後の再雇用労働者の身分を守れ!~JMIU日本電産事件~

渡辺 輝人弁護士 渡辺 輝人

Tさんの業務内容

事件の原告であるTさんは、「コンピューターシステムの監査」を専門とする技術者です。日本システム監査人協会に所属し、「システム監査人」の資格を持つ数少ないスペシャリストです。2005年に中途採用で被告である日本電産株式会社に入社しました。日本電産はそのころ、米国での株式上場にともない、自社及び関連会社のコンピューターシステムを米国の法制度に沿ったものにする必要に迫られていましたが、Tさんは日本電産において、この業務を中心的に担ってきました。業務は激務で、残業続きでしたが、Tさんは理想のコンピューターシステムを構築し、やがて後輩たちに引き継いでいく夢を持って業務に邁進していました。

Tさんは2010年9月をもって日本電産を定年退職となり、引き続き、同社の継続雇用制度に基づき65歳までの「プロフェッショナル社員」として再雇用され(契約は1年ごとの更新)、2011年にも契約を更新されました。

上司によるパワーハラスメントとその後の雇い止め

一方、Tさんは2010年7月に部署異動となり、2011年4月以降、新しい上司から、会議の席上で罵倒されたり、出来る訳のない業務を指示されたり、社内メール上で意味なくなじられるなどの激しいパワーハラスメントを受けるようになりました。同年10月末から体調が悪化し、11月末からは「うつ病」で精神神経科を受診するようになりました。

日本電産では、ボーナス査定のために、半年ごとに業績評価され、細かくランク付けされ、実際にボーナス額に反映します。継続雇用のプロフェッショナル社員はボーナスが定額なのですが、Tさんは2011年下半期(2011年10月~2012年3月)の成績が5段階のうちの上から4つめ(Cランク。「期待を下回った」)となり、それを唯一の理由に、2012年10月末で雇い止めされてしまいました。

賃金仮払い仮処分、本訴の提起

Tさんは上司からパワハラを受け始めたこともあり、職場の改善を求めて、JMIU(全日本金属情報機器労働組合)京滋地方本部に相談し、労働組合に加入して団体交渉をしていました。また、京都職対連の支援を受けて、上記うつ病について労災申請もしました。しかし、会社は団体交渉でも態度を変えず、パワハラについても認めず、雇い止めを強行しました。

Tさんは、やむなく、提訴することにしました。また、生活費の支払い等、差し迫った問題もあるため、賃金仮払い仮処分も申請しました。

60歳定年後の継続雇用制度については、会社の就業規則が1年ごとの更新だったとしても、制度が予定している65歳まで、雇用継続に対する期待権があることはすでに裁判例も出ています(当事務所で担当した化学一般エフプロダクト事件注)等)。日本電産の主張は、このような確立した解雇権濫用法理(とその類推適用法理)よりも、たった半年の勤務成績を上位に置こうとするものであり、到底認められません。また、日本電産には継続雇用社員の勤務評価について評価基準自体を作っておらず、また、準用したとされる60歳以下の社員の勤務評価にしても、何の客観性もなく、経営者による恣意的な順位付けがいくらでも出来る仕組みになっていました。このようなボーナス査定用の勤務評価を基準に職を奪われてはたまりません。すでに述べたように、Tさんは日本電産のシステム監査については第一人者であり、評価に恣意的な側面があることは明白です。

うつ病について労災認定

そして、2013年2月12日には、京都下労働基準監督署で、Tさんのうつ病発症について労災と認定されました。うつ病の発症により業務能率が低下する場合があることは確立した医学的知見です。そして、そのうつ病が、上司によるパワハラと、恒常的な長時間の残業によってもたらされたことが認定されたのです。これは、会社の安全配慮義務違反の結果としてうつ病を発症したことに他ならず、会社が金科玉条にしている「勤務成績が悪い」ことがあったとしてもそれは、会社の責任だったことが明らかになったのです。

訴訟、仮処分はまだ続いていきますが、Tさんが早期に職場に戻れるよう、弁護団も全力を挙げます(弁護団は森川明、谷文彰、筆者の3名)。

注)「まきえや」2010年秋号渡辺輝人の事件報告参照

「まきえや」2013年春号