まきえや

事件報告 建て逃げによる景観・近隣家屋地盤破壊を許すな!船岡山マンション建設訴訟報告

事件報告 建て逃げによる景観・近隣家屋地盤破壊を許すな!船岡山マンション建設訴訟報告

事件の概要

この事件は、2004年12月、1,200年の歴史をもつ平安京が造営される際に起点とされた船岡山の南山麓で、その地域の家並から大きく逸脱する規模と高さをもつマンションを建設する計画が明らかになったことに端を発しました。船岡山とその周辺地には、そこを訪れる人々を古に誘う自然的景観があり、その自然的景観と調和するように、低層な日本風家屋(一戸建て規模の広さで高さ10メートル以下の建物)によるまちなみが長年に渡り形成されていました。このマンションはその自然的景観やまちなみ景観、ひいては、船岡山への眺望を遮り、歴史的文化的景観をも侵害したのです。それだけではなく、山麓の急斜面地において極めて杜撰な土木・建築工事を行ったため、隣接地盤とその上に建つ家屋に著しい変位をもたらしたのです。

控訴審までの経過

船岡山の景観が破壊されるとの危機感をもった市民が1,000人以上集まり、マンションの建築確認取消を求める行政不服審査手続の申立てを行いました。その後は行政事件訴訟の提起も行いましたが、行政事件訴訟の手続枠組等の限界から、マンションの建設にストップをかける、建築完了したマンションの一部解体を実現する、ということはできませんでした。マンションの建築が完了した翌年の2007年3月に、京都地裁に景観権の侵害、隣接地盤及びその上の家屋の侵害等を訴え、マンションの一部解体や損害賠償等を求めて、提訴しました。地裁判決は、船岡山地域に法的利益としての景観利益が存在することを認め損害賠償の可能性を認めましたが、景観利益問題に関する先例である国立マンション最高裁判決の判断基準をより縮小解釈し、行政法規違反を伴う景観侵害が存在したにもかかわらず景観利益侵害による損害賠償等を否定しました。また家屋地盤被害に関する原告側専門家証人の採用を否定した上で、その被害が証明されていないとした点でも不当な判断を示しました。

大阪高裁の判断

大阪高裁では、家屋地盤被害の審理を慎重に行い、当方申請の専門家証人の尋問も2期日に渡って実施しました。その結果、この論点においては控訴人の主張をほぼ全面的に認容し、約6,300万円の損害賠償の支払を命じるという画期的な判断を示しました。景観利益侵害の点においては、京都地裁よりも景観利益主体となりうる住民の範囲を広く認める等積極面も見られましたが、結論においてはその侵害とそれに続く損害賠償・一部除却請求を棄却しました。この間の景観権概念の生成・発展についての理解を欠いたという点、景観問題においては建物の高さ・規模の問題こそが正面に問われるべきであるのにその点を回避して判断したという点等については非常に残念でした。

今後の闘い

写真にもあるとおり、本件マンションがこの地域のまちなみから著しく逸脱し、景観権ないし景観利益を侵害していることは明白です。大阪高裁は、地域のまちなみを形成する建築ルールに違反した建築行為が社会的相当性を欠く景観利益侵害となり、違法となる余地を認めました。景観侵害を論じるのに、そのまちなみを形成する家々の高さ、規模を逸脱するかどうかは避けて通れない課題なのです。その点を明らかにし、景観権(景観利益)の侵害の認定を勝ち取るべく、最高裁で更に奮闘を続けます。宜しくご支援の程お願い致します。

マンション建築前の緑豊かな船岡山

マンション建築前の緑豊かな船岡山

周辺の家並みを大きく逸脱する船岡山マンション

周辺の家並みを大きく逸脱する船岡山マンション

緑豊かな船岡山への眺望を侵害する船岡山マンション

緑豊かな船岡山への眺望を侵害する船岡山マンション

「まきえや」2013年春号